第33話 華の貴公子、見参!?。その1

「元気にしてるかな……」


「さぁ、元気なんじゃない?」

「噂によると、人間の女と同棲してるらしいぞ」


「そうなの?俺が聞いたのは、人間に飽きて赤毛の魔女と毎晩よろしくやってるって聞いたけど」

「あの、強欲な魔女と!?そりゃ……面白そうな話だな」


俺達は旧友の話で盛り上がり、懐かしんでいた。

そして、今はそのクロノが住んでいた城内のメインホールで出逢いの場という名のダンスパーティーに参加している。

一通り踊った後、好みの女がいないと思った俺達は、テラスに出て旧友の近況をネタに談笑していた。



「クロノが王子じゃなかったら、今でも皆で楽しくやっていたのに」


「そうだな」

「遊びに行ってみるのはどうだ?」

「いいね~」


「そうと決まったら、さっさとこの場から脱出するか」

「賛成」


こうして俺達は旧友に会いに行く為、異世界への扉を開けた。

まずは、人間の女がいる世界へ。

クロノが居なくなった俺達の世界は、面白味がなくなっていたから、異世界へ行くのは全く躊躇しなかった。

むしろ、これから起こるであろう出来事に期待していた。



「ここが人間のいる世界か~」


「そうみたいだな。俺達と同じ種族もいるみたいだ」


初めて来た異世界だが、何故か落ち着く雰囲気がする。

ここから見える小さな家々、森に野原、俺達の世界とは違うのに不思議だ。



「……ここにクロノの気配はなさそうだ」


「もしかして、赤毛の魔女の所?同棲してるっていう噂は本当だったのかな」

「アイツ……フラれて自棄になったか」


「でもクロノが人間の女にフラれたからって、魔女にいくって変じゃない?」

「確かに、いくら失恋のショックが大きすぎても飛躍しすぎだな」


ただ旧友を冷やかしに来て帰るつもりだった。

しかしそんな状況ではないと感じた俺達は、来た道を急いで戻った。



「その扉からなら行ける筈だ」


再び、城内の地下にある複数の扉の前に来た俺達。

人間界、妖精界、天上界、地底界……あとはクロノから知らされていない異界への扉がある、その中に赤毛の魔女がいる童話の世界への扉があった。


「とりあえず、行ってみようよ」

「あぁ、そうだな」


このまま会わずに帰れないし、もしクロノに何かが起こっていたら、俺達で解決しないと。


「……大丈夫だよね?」


「何が?」

「赤毛の魔女に会うのが怖くない?」


まぁ、良い噂を聞かない魔女だし……出来れば会いたくはないかな。

皆の内心はそんなところだろうが、決めたからには実行あるのみだろ。

クロノの行方を探すのが先決だしな。



「会ってもいないのに、そんな心配するな」


「……さすが、リーダー」

「どういう意味だよ」


まさか俺には恐れが無いと?

いくらなんでも、俺はそんな鈍感じゃないぞ。


「どんな女性でも、リーダーの手にかかれば……って事だ」

「まぁな、否定はできない」


自慢ではないが、クロノより俺の方がモテていた。

ただ、王子という肩書きが出てしまうと、それには勝てなかったが……。


「それじゃ、リーダーに任せれば安心だね」

「だな」


……おい、お前達も頑張るんじゃないのか?

仕方が無いか、言ってしまったからには俺が赤毛の魔女の担当になってやるか。

でも、俺にも好みというものがあるんだがな……。



それから……なんだかんだと騒いでいるうちに、お菓子の家に着いた。

ここに赤毛の魔女が住んでいるらしい。


「ね、リーダー……中から声がしない?」


「クロノの声がするな」

「他にも誰かいるみたいだ」


クロノの他に、女の声がするな。

艶かしい声、ぞわっと鳥肌が立つような嫌な声……あとは聞いたことがある声もした。


「入るタイミングが分からないね」

「悩んでも仕方がない。ここは、当たって砕けろでしょ」


……いや、助ける前に砕けちゃダメだろ。

っと、止める前にドアを開けてしまったようだ。

ここは覚悟を決めて、いざ勝負!……だな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る