第32話 魔女と王子の同居生活。その4
「その手紙の便箋に香りが付いているだろう?それは、伯父が特別に作らせたものなんだよ。だから、俺は手紙を開封した時に分かったよ」
「そ、そうでした。これは伯父が好む特別な香りなんです。だから、すぐに差出人が判明したんです」
ホワイトさんは忘れていたみたいで、タマの発言に同調して語気を強めていた。
「……特別な香りか」
「あぁ、だから兄達も気が付いたんだろうな……伯父の仕業だと」
タマはロープで縛られているのに、ドヤ顔で魔女に話し掛けている。
もうこれで勝ったと言わんばかりの勢いだった。
「まぁ、確かに香りはするが……これは特別ではありませんよ」
「何故、そう断言できるんだ?伯父だけのものだと言ったのに」
タマは、自信たっぷりに発言する魔女に疑問を抱いた。
特別に調合した香りなら、他には無い香りの筈。
それなのに、特別ではないと断言してきた赤毛の魔女。
どうやったら魔女を負かすことが出来るんだろう……。
何も策がない私は、黙って行方を見守るしか出来なかった。
「これは人間界で売っている香りだからです。某有名ブランドの香水といえば、わかりやすいかと」
「人間界の香水?」
「えぇ、女性がつけているものですが確かです」
タマの伯父さんは、女性用の香水を愛用しているんだ……意外。
あ、それか……差出人が女性だと思わせる為とか?
どちらにしても、特別に作らせた香水という訳では無いならば、赤毛の魔女に依頼したのはタマの伯父さんと断定出来ない。
もう絶望的状況だよね。
ホワイトさんが自信満々で示した証拠だったのに……。
「どうしましょう……」
「諦めて帰っていただけますか?私は王子との同居……いえ、私達の同棲生活を邪魔されたくありませんから」
「おい、同棲って何だよ。勝手に暴走するなって。はぁ、俺は美男薄命って事か……」
ホワイトさんは困ってしまい、タマは諦めモードになってしまった。
赤毛の魔女は私達を邪魔者扱いし、早く家から出るように言ってきた。
でも、このままタマを置いて帰りたくない。
私はこの際何でも良いから、タマを助けて欲しいと目を閉じ祈った。
その時ドアがバンッと開き、三匹の猫がのそのそと家の中に入ってきた。
そして、開口一番……。
「おやおや、また凄いプレイだな」
「まぁ、元気そうだから良いんじゃない?」
「ここが赤毛の魔女の家か」
などと、それぞれ好きな事を話していた。
一体、この猫達は誰だろう?
敵なのか味方なのか、どちらにしてもこの状況を一変させる存在であってほしいと願うしかなかった。
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