第5話うそやん?

『GNPP』第5話。「うそやん?」



ーファンサたんの家ー


 学校終わって、歩いて2分の所にファンサたんの家ってか別荘があった。家は地味ーな一戸建ての木造平屋ってかお土産品店の裏側住まいである。


こんな場所に別荘ってのも変だなって思った。海産物メインのお土産屋には猫が屯してる。まあ、魚の匂いに釣られているんだろう。


「猫可愛いなー良いなー。」


「僕も猫好きだよ。でも猫からは好かれて無いんだよ。」


 こんなやり取りをして、裏口の扉から、上がり込む。中に入ると一面ペットボトル……良く見るとペットボトルの形をした人形?やペットボトルで創ってある考える人モチーフのペットボトルアートやペットボトルのキャップがぎっしり詰まった大きなプラスチック容器等が飾ってある。


「なんなん?ペットボトル屋敷なん?」


「うん!そんな感じ!」


 まあペットボトルの薀蓄が始まりそうだったから、目的の物は何処にあるか聞いてみるか?


「俺の母さんの使ってた鎧ってどれよ?」


「鎧は地下にあるよ。」


 ファンサたんがペットボトルアートの考える人の脇にあるスイッチを押すと、隠し階段が出て来た。階段を下りると祭壇の様な感じで銀色の鎧が祭られていた。祭壇の脇にはずらりとペットボトル。天井の欄間には、色々な色とりどりの蝶々が彫られている。目的の鎧を注意深く観察する。先ず目に入ったのは2振りの刀。刀の銘にはアメノムラクモとアメノハハギリと書いてある。アメノムラクモを手に取ってみる。


「お、軽いな。これって材質がなんなん?有り得ない位軽いし。」


「んー?多分ね!水!」


 まあアホな子の意見は無視して、アメノハハギリを手に取ってみる。


「おも!なんなん!?持てない!」


「多分お湯で出来てるから重たいんだよ!」


 うんアホな子の意見は無視して、アメノハハギリを元に戻す。次に鎧本体を確認する。銀色のフルアーマだ。繋ぎ目が歪にあるな。ジョイント部分は勿論可動の為に空いてるのは当然だが、例えば胸当ての部分とかデザインでは無い継ぎ目がある。


「この継ぎ目なんなん?」


「んー多分気体になったんだよ!水が蒸発してさ。」


 まあコイツに聞いても無駄っぽいから、鎧をまじまじと細かく鑑定する。右ナックル部分手甲に何やら文字が書いてある。


「逆……?なんなん?後一文字見えにくいな。」


「あれ?今手首の部分光ったような?」


 ファンサたんが言う通り確かに一瞬チカっとした。


あー成程な。そういう事か。まあコイツには悪いが説明する義務は無いだろう。そしてこれは俺用の鎧だと確信した。


「これ持って帰って良いのか?」


「肯定ペン銀を倒した後じゃダメ?手付で刀1本でダメかな?」


んー困ったな。刀は俺の性に合わないってか別に要らないし。どーすっかな?


「刀は2本とも要らないから鎧だけ貰いたいんよねー。」


「うーんじゃあ鎧のヘルメット部分だけ置いてってくれればそれでも良いよ。」


ヘルメットは後払いって事ね。ふむまあ良いか。


「おkこれメットだけ残して着て帰るわ。」


「えー。折角だからお茶しようよー。僕ねゴッ殿と一緒にお茶飲みたい!」


まあ、お茶だけなら良いか。取り敢えず着替えよう。


「じゃあ着替えるから、その、あの。」


「良いじゃん?女の子同士だし。ゴッ殿何照れてるの?」


うーん。コイツの事。ちっと昔の感情が蘇ったのになー。デリカシー無いなー。


「いいから少しの間後ろ向いてて!」


「えー、うーん。解った!僕後ろ向いてる!」


「覗くなよ?」


「うん。」


 取り敢えず鎧をパーツ事に分解してみる。意外と軽い。それから俺が今着てる鎧を外して制服を脱ごうと胸のリボンに手を掛けて、ファンサたんが覗いて無いか確認の為に後ろを振り向く。


「おい!後ろの姿見はなんだ!さっきは無かったろ?」


 振り向くと大きな鏡があったんよ。もうね、覗く気満々じゃん?


「ん?僕後ろ向いてるってしか言って無いから、セーフ!友達だろ?」


鏡割ったろか?ってか頭割ったろか?


「もーなんなん?ってか見られたく無いんよ!」


「好きな人の御着替えシーン見たいって願望!友達だろ?」


!!


え?うん、そりゃコイツの事は満更でも無いってか、うーん。まあ?女同士だし恥ずかしいってのも変かな?


「御勝手にどうぞ!」


「ゴッ殿?顔赤いし、ニヤけてるよ?」


「ニヤけてないもん!」


「アレ?口調が女の子っぽくなった!ゴッ殿変!」


顔が自分でも解る位赤くなってると思う。もーなんなん?ダンマリ決め込む!


「……」


「胸大きいねゴッ殿!脚も綺麗で長い!」


「……」


「手もすらっとしてる。拳はちょっとゴッついけど。」


「……」


もー集中して鎧着れない。セクハラじゃん?急いで着込むか。


 今下着姿で、鎧用のアンダーウェアをカバンから取り出している。フルアーマだから、それ用に全身黒のアンダーだ。サーフィンのアレに似てるって感じで、ツナギになってる。少しお腹にある古傷をさすってみた。


少々痛いってか、母の事を考えると痛みだしたんだよなー。まあ、後ろから鏡でファンサたんが見てるが、お腹の傷は角度的に見えないだろ。


アンダーウェアを着込んでからは、ファンサたんは何にも言わなくなった。取り敢えず急いでパーツパーツで装着してみる。


「これで良し。」


俺にサイズピッタリだ。なんか母さんは、まるで今の俺の身体を想定して創ったかのように、ピッタリだ。


「あーサイズもピッタリそうだねー。似合うねー。流石はゴッ殿!」


「どや?」


「恰好良いよ!さて、お茶にする?お菓子もあるよ!」


まあ覗かれたけど、鎧も手に入ったし、お茶飲んでから帰ろう。


「じゃあ頂こうかな。」



んでね?ファンサたんの部屋に入ったんよ?


「え?」


いやさ?ここってペットボトル多いのは予想付いてる訳よ?


「これって?」


なんかね?写真一杯飾ってあってさ?むかーしのミッション系の保育園の時の写真なんだよな。写ってるのが……


「ああ、恥ずかしいなー。全部ゴッ殿と僕の一緒の写真!僕達友達!」


やべえ。涙出て来た……


「ごめん……ちょっと感動してさ……」


「大丈夫?」


だいじょばない。すげえ嬉しい。俺も昔はコイツの事好きだったけど、コイツも想っててくれたんだって思えて。ううん俺以上に想っててくれたみたいだ。


 卒園式の時に握手してる写真もある。俺が告白のつもりで精一杯手を振り回した写真。綺麗な額縁に大きくプリントされて収まってる。


ここまで大事に想ってくれるのはコイツだけだな。


「もーなんなん!嬉しす!ファンサたん大好き!」


「わわ、苦しいってゴッ殿!」


 気が付いたら、ファンサたんの肋骨折りそうな勢いでギューっと抱き付いてた。


「痛いよ。でも嬉しいな。ゴッ殿……ずっと友達だよ。」


「うん。凄く心が一杯なんよ。ずっと一緒だよファンサたん。」



ー1時間後ー


 お茶とかお菓子とか、どうでも良くって昔のファンサたんと俺のアルバムに目を通すのに夢中になってる。一緒にご飯食べたり、昼寝したり、積木遊びや遊具で遊んでる微笑ましい写真が一杯出て来て、ページを捲る度に、ハッとさせられる。


「俺達って仲良しだなー。」


「今も仲良しだよ。友達だろ?」


 最後のページに目を通す。と見知らぬ白髪の爺さんが写ってるのを見つけた。


んー何か怖そうなジジイだな。もしや?肯定ペン銀って言うのはコイツか?アルバムに写ってるって事は身内だろうからさ。


「これがファンサたんのじいちゃん?肯定ペン銀ってコレの事?」


「うん。そだよ。あーでも人間だった頃の写真だね。」


ん?人間“だった”頃の?だったってなんなん?


「え?まさか人間からペン銀になったとか?まさかね?」


「そだよ?」


へ?


「うそやん?信じられないぞ?流石にお伽噺過ぎ!」


「見に行ってみる?一緒に水族館に行こうよ。友達だろ?」


「じゃあ今日は遅いから今度ね?」


「うん!約束!僕達友達!握手で友達!」


 こうして、なんか解らんが次の日曜日に水族館デートの約束をした。肯定ペン銀とやらを拝み倒しに行こうじゃん?


†††


ー水族館前の日曜日ー


 あれから何日か経って今俺は約束の水族館『水キララ』の前に居る。ここは昔っからある水族館だけど、入るのは初めてになる。ファンサたんはまだ来てない様だ。お気に入りの母の形見の鎧を当然着込んでいるが、今日は暑い。


「向こうから誘っておいて、なんなん?」


 ジュースを暇だから飲む。もう何本目か数えて無い。


「あーごめんごめん。お待たせ!」


「おせーよ。早くペン銀見に行こう。」


ったく。どれだけ待たせるんよ?まあペン銀見て帰るだけなんだけどさ?人間がペン銀になる訳ないっしょ?


「うん。見にってか会いに行こうか。倒すべき敵に。」


†††


こうして俺達は敵地に乗り込んだ。最深部の氷の大地『ペン銀の魔』で恐るべきモノを目撃する事になった。


「おい!うそやん?」


ー続ける!ってか久々の更新だって、今度さ水族館に取材に行くから暫し待ってね!友達だろ?ー

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