第4話そーなん?

『GNPP』第4話。「そーなん?」


神を否定する物語の蝶達その先にある未来とは?


プログラムされていた真実が今動き出す。


ゴッ殿とファンサたんの微妙な友情に変化が生まれる……



ーゴッ殿の場合ー


自宅にて、床に就く俺。回りには、いつもメンテナンスをしてて綺麗な鎧達が居る。寂しさに震える俺を囲んでくれる様な気すらした。中々寝付け無い……ベッドから起き上がり母親の書いた小説を読み返す。


 なんなん?どうして母さんが、純水の自由の前代表だったの?それに、俺の名前の由来を、あんな形で教えられるなんて……


 鎧達が冷たく光る。月光が少しウザったいくらいに光を反射して俺の顔を照らしている。


 俺は珍しく泣いてたって思う。


「古傷が痛みだしたな」



ーファンサたんの場合ー


 ベッドの上で大きなペットボトルのぬいぐるみを抱きながら考える僕。部屋の本棚には沢山の書物と空っぽのペットボトル、今日は疲れてるみたい。僕の手には飲みかけのペットボトル。 


 ゴッ殿に上手く伝わったのかな?前代表の意思で今まで、手を出して無かったけど、もう時間稼ぎも難しくなってきたなー。


飲みかけのペットボトルを飲み干して、眠りに入る僕。猫避けのベランダのペットボトルが月光に照らされて、キラキラ宝石みたいに輝きを増してる。


僕の眼は闘志に燃えていた。


「僕がゴッ殿を守るんだ」


††


ー月曜日の朝ー


 ジリリリリーと騒音を立てる目覚ましを叩いてみる。むくっと起きてみる。取り敢えず顔洗ってみる。化粧してみる。階段を下ってリビングに降りてみる。


「あー、寝むいわー」


 眠気が醒めない俺。朝飯食べながらテレビ見る。隣で新聞読んでるのは死んだ両親の代わりに面倒見てくれてる爺ちゃんと、婆ちゃんと、妹のズキュン。我が家は金は余ってるから新聞も無駄に全社の買ってる。ズキュンは中学生ながら新聞を毎日読む賢い妹。うん流石俺の妹。


「お姉ちゃんも新聞よまないとー」


「テレビ観てっからいいじゃん?」


 新聞面白いのかねー?俺は俺、妹は妹。頭悪い俺には関係無いじゃん?


「もー新聞も面白いよー」


 むう思考を読まれた気がしたぞ?まあ気のせいか、偶然かなー。


「テレビで十分だって、新聞読むの面倒臭いじゃん?」


 まあ新聞読んで敵討ちの算段が取れる訳じゃ無いしな。アイツに会って色々情報補完しないとだし。アイツの顔が脳裏に浮かんで、何か凄く懐かしい感情になってる。


「ふーん、お姉ちゃんさ?最近好きな人でも出来たのー?」


 え?へ?ん?んー?


「わ、わ、わ、なんなん?お前はどーなん?」


「うーん今度紹介するから、私にも紹介してねー!お姉ちゃんにも、やっと彼氏かー!頑張ったねー!」


 ちょ?なんなん?ちが!


「違うってアイツはそんなんじゃ無いってーの!」


「ふーんww」


 我妹ながら鋭い過ぎるだろ?もー!


 俺が顔を真っ赤にしてると、妹は興味が逸れたのか?何か知らんけど、キッチンの方にコーヒーを取りに行った。何かいつもの光景だけどさ?爺ちゃんと婆ちゃんが、何ていうかな?なんなん?じーっと見てくるし、顔向けると新聞で顔隠すし、今日に限って声掛けてこない。んーなんなん?


「爺ちゃん、婆ちゃん、新聞逆さま!もう何とか言えよ?」


 よそよそしく家の玄関に向かう爺ちゃんと婆ちゃん。なんなん?


「お姉ちゃんゆっくりし過ぎじゃないの?遅刻しちゃうよー?」


「あーやべえ!」


 ダッシュするまでも無く早歩きで、間に合いそうだな。

 玄関を出ると、入り口に使用人が群がって何かしてる。でも様子見る暇は残念ながら無いんだなー。



ー学校ー


 なんだか、久々に登校する気分だな。校舎に入ると俺の下駄箱に、何か入ってる?


「ラブレターなのか?古風過ぎるだろ?」


「あ、おはようゴッ殿ちゃん」


あれ久々過ぎる登場なのは、ぺ天使ちゃん。隣には子悪魔ちゃんだ。下駄箱にいつものメンツってか、アイツが居ないなー。


「あれ?今日はファンサたんと一緒じゃ無いの?喧嘩でもしたのかww」


 見透かされた気がした。ズキンと来る一言。


「ううん。そーじゃないけどね」


 ファンサたんの姿をつい探してしまうが見当たらない。この手紙は何故か見られたら不味い気がしたので、さっさと鞄に隠して後で見る事に決めた。


 朝のホームルームでファンサたんが風邪で暫く休むとの事を聴いた。アイツの事だからきっと仮病だろうなー。なんか手紙気になり過ぎるけど、早く昼休みにならないかな。



ー昼休みー


 慌てて屋上に向い手紙を確認する俺。差出人はファンサたんだ。何か蝶々の封蝋までしてあるし、紙の質も高そうな感じで、只事ではなさそうな気がする。これってさ?なんだろうな?機密文章的なヤツなのか?それにしては下駄箱ってのも変だしな。ふむ取り敢えず開封してみるか。


ー信愛なるゴッ殿へー


僕は一時休むよ?引き籠る訳じゃ無いんだ。心配してくれよ?友達だろ?


家族の敵打ちがしたいのかい?僕も手伝うよ?友達だろ?


どうだい?共通の敵を倒そうよ?友達だろ?


今度は僕の家に遊びに来てよ?友達だろ?


あ、僕家一杯あるから、どーしよ?学校の屋上に気が向いたら来てね?友達だろ?


ーー


「は?」


††


「あれ?ゴッ殿速いね、夕方位になるって思ってたよ?」


 声を後ろってか斜め上から掛けられた。コイツはいつも斜め上過ぎる。まるで今来ましたよと言わんばかりに、座ってる俺の斜め後ろ……入口から声を掛けてきた。


「あれ?じゃねーよ?風邪で休むって聞いてたぞ?なんなん?」


「保健室登校してた!」


 あーね。コイツのペースに嵌るのは、なんかムカつく。どうせ昼休みに此処に来る事も計算済みなんだろ?なんなん?


「手紙じゃ意味解んないぞ?なんなん?」


「あー、うん。まあ共通の敵を倒そうって事」


「敵ってのさ?お前の身内だろ大丈夫なのか?」


 ファンサたんが難しい顔してる。当然と言えばそうなのだが?何か違和感がある。


「うん。だから僕は手が出せないんだ」


「は?」


「お前さ?俺を兵隊か何かに使う気か?」


 正直ショックだな。コイツこんなヤツだったのか?


「まあ平たく言えば……僕はバックアップに回るって事だけど?」


 正直者過ぎるな。それに乗るほど、俺は御人好しじゃねーっての。


「ごめん。降りるわ。お前とはもう友達じゃ無いわ」


「ごめんね……」


 泣いてるのか?まあ関係無いけど。


「泣くなって、友達は他にも居るじゃんか?俺を巻き込む必要無いって」


「ごめんね、ゴッ殿じゃなきゃ嫌なんだ。他の人じゃダメなんだ」


 ファンサたんは右手を差し出してきた。握手の素振りだけど、俺の答えは。


「友達じゃ無いって、ごめん」


「僕の事また振るの?僕がどれだけ忘れずに想い続けてたのか……苦しいよ」


 ん?泣いて無い?のか?


 確認って訳じゃ無いけど、顔を覗き込むと。


!?


「こっち見ないで」


 泣いている。もう、絵に描いた様にぼろぼろと子供の様に、泣いている。



 取り敢えず、ファンサたんが落ち着くまで、待つ。


 俺何も悪く無いよなー、コイツが悪い。うん間違いない。しかし泣き止まないなー。


 「ゴッ殿、無理言ってごめんね、でもアイツは僕が倒すのは心苦しい部分もあるんだ」


 「アイツってのが例の清涼飲料水会社の社長ね。それでお前とはどういった関係なんだ?」


 うーん泣いてる子をあやすのは苦手だ。


 「僕の爺にあたるんだよ。裏では肯定ペン銀って名乗ってる」


 「変な名前だなー人間離れしてるネーミングセンスだなww」


 てかさ?泣いてる子あやしてるのに、泣いてる子は真剣な口ぶりで寂しそうに語ってるけど、俺吹きそうなんだけどww


 「あー肯定ペン銀は人間じゃ無いよ?ペンギンだよ」


 なんかお伽噺っぽい事言ってる。反応に困るんよなー。コイツ幼稚な部分いつ治るんだろな?


 「うーん良く解んないけどさ?その糞ジジイを倒せば良いんだな?」


 「うん、僕達も困り果ててるんだよ。蝶々としては、ううん。psycheとしてはとっくに終わってるのにデカい顔される」


 ん?コイツの話に出てくる。プシュケーとやらは、良く解んないんだよなー。なんなん?


 「前からってか?聞いてる気もするんだけどさ?プシュケーってなんなん?」


 「歴史の紡ぎ手達。つまり、今で言う。純水の自由の幹部勢の事だよ。まあここ最近では蝶々って言う場合が増えてきた」


 ふむ、つまり。巨大宗教連合が歴史を動かしてるって事かな?良く解らんが……まあここに難癖つけてもしゃーないか。


 「まあ、いいや。良く解らんから、その話題は置いておくよ」



ファンサたんは泣き止んでた。俺もなんだか釈然としない空気のまま、許してしまっていた。ジジイ一人を倒す手伝いかー面倒くさいなー。ってか?俺が手伝う理由ってあるんかな?


 「ところでさ?ゴッ殿さー僕の家に遊びに来ない?」


 「んーいきなりなんなん?」


 「いやさ?僕の家に先代……ゴッ殿のお母さんが使ってた筈の鎧があるんだよ」


 え?なにそれ?めっちゃ欲しいんだけど!なんなん!?


 「うーん。今日都合良いか?見たいなー」


 「じゃあ」


 ファンサたんは右手を差し出してきた。


 「なんなん!?物で釣るなやー!」


 俺とファンサたんは息を合わせた。もう、昔とは意味合いは違うかもしれないけど、精一杯力強く。無我夢中で振り回した。お互いに頬が赤い。


 『僕達友達!握手で友達!』


†††


てか?仲直り早くね?ご都合主義なん?そーなん?こんなん?続けるん?


ー続くー

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る