第3話なんなん?

『GNPP』第3話。「なんなん?」


これは、友達なのか微妙な2人の物語……


ーーーー


 鎧売り場の前で抱き付かれて、困惑する俺。てかさ?人前で恥ずかしいっての。あんまり目立つから、場所を変えてみる。


 俺は家の敷地内のショッピングモールというか、家がショッピングモールだから、我が家同然のショッピングモールの中。その中でも特に気に入ってる喫茶店に移動した。


ー喫茶店内ー


 マスターが俺とファンサたんの顔を見るなり、店の奥へ通してくれた。気のせいだろうか、マスターはファンサたんを少しだけ睨んだっぽい。


「トマトジュース2つ」

「あいよ、トマトジュース2つね」


 ファンサたんはマジマジと店内を観察してる。そういえばコイツは昔から観察する癖があるな。まあ、この店内の装飾の数々の値打ちまでは解らんだろう。特に俺専用のこの奥の部屋にある無数の刀類はどれも桁違いで、俺もウットリする。特にあの、10メートルの大太刀は、いつ見ても俺の心を和ませる。 いかんいかん、コイツの話を聞くのが目的だった。わざわざ敵地に押しかけて来たのだから、騎士道精神宜しく対応せねば。テレビでは国会中継が流れてるが、消すまではしないで音量を下げる。


「話って、なんなん?」

「えーと、純水の自由の事なんだけど……」


 うーん。興味あるが、事と次第によりけりだけど、此処が戦場になるかもな。まあ少し聞いてみるか。


「で?続けて良いよ」

「God.No.Psyche.Program。って知ってる?」


 ん?話が良く解んないな。純水の自由の話では?


「いや知らない」

「そっかじゃあいいや、純水の自由についてどの位知ってる?」


「両親の敵だ」

「うーん、なんて言うかな、行き成りソコを突かれると、説明しにくいな」 俺が問答に困っているファンサたんを観察してると、さっき頼んだトマトジュース2つを持ってマスターが来た。やたらガタンと大きい音を立てて、ファンサたんの分のグラスを叩き付ける様に置いた。ん?と訝ったが、まあ、コイツが純水の自由なら敵対勢力なのだろう。マスターは家の使用人の中でも古株だから思う処があるのだろう。まあ、コイツが純水の自由の代表ならそーなるな。


「ごゆっくり」

「あ、ありがとう」

「どーもお邪魔してます」


 ギリっとファンサたんを今度は確実に睨みつけて、マスターは下がった。


「頂きます」

「頂きます」


 トマトジュースを飲みながら話を進める。


「で、ソコのところ説明しにくいってなんなん?」「順を追って説明してみるね」


 ファンサたんの説明が始まる。


「先ず、純水の自由の目的は世界中の神と言う存在を真っ向から肯定と否定する組織なんだ」


 矛盾してるけど?どゆこと?


「ちょい待ち、矛盾してる」


「まあ世界なんて矛盾だらけだからね。矛盾してると言えば目的は矛盾してる」

「ますます解んないけど?」


「例えばあの大太刀も矛盾してるね」

「え?」


 意外な事を言われた。あの大太刀がなんなん?


「刀は斬る道具だけど、アレを扱える人間が居るのか疑問だし、何を斬るのにあんなに無駄な長さが必要なのかな?」

「……アレは飾りだから」


「まあ、そう言えば矛盾は無くなるけどさ?刀である必要性は無いって事だよ」 なんなん?何か引っ掛かる言い癖だな。ふむ。


「で、それが、神様云々の話とどう繋がるのさ?」

「飾りなら、神である必要は無いってのは、どうかな?」


 ファンサたんは部屋の周りを見渡しながら、こう付け加える。


「ここは刀が無数にあるけど、どれも機能してないね」

「なにが言いたいん?」


「神様ってのは、居る様で、居ない。居るとすれば、信じる者の心の中」

「それがなんなん?」


「元々矛盾してるモノを肯定して否定するとどうなるか解る?」


!?


「意味が不明瞭だけどさ?意味とか何にも無くなるんじゃね?」


 ファンサたんは満面の笑みを浮かべた。笑っているが、好意的な感じでは無く威圧的だ。


「その通りだよ」「へ、じゃあ純水の自由ってのは無神論的な立場なのか?」


「違うけど、似てるかもね。神を肯定して否定するってのは、全てを平にするって事だよ」

「無神論は神を否定する立場だからな、確かに肯定はしないな」


 ぼんやりとだが、話が進んだ気がする。しかし、純水の自由の目的は解ったが、手段がまだ不明だ。巨大宗教連合だと思っていたが、此処の傘下に収まれば、収まった所の神は、最早、神では無くなる。それに、俺は両親の意思をついで無神論の立場に居るし、まあ、俺はハーフだが、大方の日本人と同じで、神など信じていない。というか、よくよく考えると、純水の自由は無意味かも知れない。少なからず、この国では意味を成していない。「神ってのは権力者が創り上げた虚構そのものだよ」

「虚構は悪い事ばかりじゃないだろ?」


「そうだね。それでこそゴッ殿だよ」

「ん?そう言えばさ?俺の名前、さっき言ってたゴッドノーなんちゃらに響き似てるな」


「ゴッ殿の名前の由来だよ。だからこそ、誘いに来た」

「サラリと凄い事言うな。何故お前が俺の名前の由来を知ってるんだよ?」


「え、だって先代の代表が考えたからね。僕は先代の残した資料を見た時はビックリしたよ」

「待て待て、親からも聞いて無いし、ってか親死んでるし、そもそも先代って誰だよ!」


「んー、名前何だったっけ?」

「はぐらかすな!」


 ファンサたんは一生懸命考えてる。思い出せないっぽい様だ。「ペンネームなら覚えているけどさ?」

「じゃあそれで良いから、教えろ!」


「友達」

「は?」


 あれ?意味解んないぞ。それに何かどーでもいい。幾つか質問してみるか。


「ペンネームって先代は何か書いてるのか?」

「色々書いてるし、僕も書くよ」


「お前のペンネームは?まさかな?」

「友達」


 もうね、これは馬鹿決定。時間の無駄っぽいから次に話を進める。本題に入ろう。


「俺の両親を殺したのは、純水の自由なのか?」

「うーん、ところで、ゴッ殿のお母さんの名前教えてくれない?」


 は?関係あるのか?何故に母さんだけなのか?まあいいか。


「サイン」

「ああ、思い出した。先代の名前はサイナライザーだよ」「え?ってか!はああ!?」

「ゴッ殿のお母さんが先代の代表だったんだよ」


 えーと、俺の母さんが純水の自由の先代で、でも無神論者になって、俺が10歳の頃に家が爆発して死んで、それからコイツが今の純水の自由の代表……


「もー!なんなん!意味が解らん!」

「先代の遺言で、娘であるゴッ殿を巻き込まないでとあったかから、小競り合いは一時休止になったんだよ」


「小競り合い?」

「先代は身内の中にも敵が多くって、引退したんだよ。引退直後だったかな?純水の自由の情報を秘匿しようとした組織内の鷹派の連中が襲撃した。んで、後釜に座る筈の者が失脚して僕に白羽の矢が立って、今の代表って感じなんだ」


 これを聞いたら戻れなくなるな……「で、その鷹派の連中ってのは?今何処にいる?」

「見れば解るよ」


 ファンサたんがテレビを指さした。国会中継がまだ続いてる。おいおい嘘だろ?まさかソーリー大臣じゃないだろうな?


「チャンネル変えるね」

「あ、ああ」


 いやさ?流石にビビるだろう?


「あ、ここかな?」


 ファンサたんが、チャンネルを回して、ワイドショーの画面だ。画面には某国のdai棟梁が写ってる。おいおい!冗談キツイって!


「おい?まさか?な?」


 ファンサたんが食い入る様に画面を見つめてる。dai棟梁じゃ無いなら誰でも良いって……ってCMが始まってるし。


「あーこれだよ」

「へ?」


ーCMー


「喉乾いた!水!」

「はいこれ上げる幸運の天然水!」「神様ありがとう!」

「神様じゃないよ?友達だろ?」


ーー


 えーと、幸運の天然水のCMだよな?これがなんなん?


「この水を創ってる会社の社長が襲撃の主犯だよ。失脚した後、組織のスポンサーに成って昔以上に影響力がある」

「証拠はあるのか?」


「君の家にある筈だけどさ?」

「何が?」


 ファンサたんは意外な事を言う。


「純水の自由の先代が残した、短編小説」

「タイトルは?」


「水を配る友達」

「探してみる。で話ってそれだけか?」


 もうこの辺で切り上げようかな?グラスも空になったし。


「純水の自由に入って貰えないかな?そうすれば敵討ちの協力が出来るよ」

「断るって言ったら?」


 ファンサたんは逡巡して、肩をすくめた。「そうきたか。まあそうだよね。僕の話は半信半疑で良いよ。じゃあ僕は帰るね」

「ちょっと待って!まだ話は」


 俺の静止も振り切って、ファンサたんは帰っていった。何だろう、後ろ髪を引かれる甘い感情がこみ上げてくる。アイツは俺の初恋の相手で、敵討ちを手伝ってくれるかも?だけど、でも敵の組織の現代表……


「何が何だかだけど?裏は取る必要ありそうだな」



 何か長い時間だったな。まあ長かったけどさ?


 敷地内だが、5分歩くだけなんだけど家に戻り。母親の遺品を漁ってみる。すると、ファンサたんが言っていた短編小説は確かにあった。だが、読んでみると意味不明な上に、どうもファンサたんの発言と繋げるには今一つしっくり来ない。ああ、俺がこの小説読んだ感想は……「なんなん?」


 ってか解らない事だらけだ。今度あった時にまた詳しい事を聞かねば……


「アイツ。俺の事どう思ってるのかな?」


ーこれさ?なんなん?続けるん?ー


ー続くー

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