第2話どーなん?

『GNPP』第2話。「どーなん?」


 これは友達に飢えている僕達の青春群像劇……


ー図書室ー


夕焼けに染まる図書室。本棚も本も夕焼け色になり、佇む友達も夕焼けに染まる。僕の心もあの頃の様に、もやもやしてる。ただ一つ言えるのは、この子は眩しすぎる。


「僕が現代の純水の自由の代表って言ったらゴッ殿どうする?」


 大分待たせてしまった。僕はゴッ殿の顔色を伺う。怒ってるのか呆気に取られてるのか?ボケってしてる様な、面倒臭そうな表情を浮かべてる。沈黙が訪れるかな?とも思ったが……


「あっそう、んで何?」


 予想外の問いかけだった。暫し頭を回転させる。どう切り返すかな?


「僕は純水の自由当代筆頭なのに驚かないの?」


「はいはい、だったら何?」


 うーん、困ったな。どうしよう?直球で!


「実はさ、ゴッ殿に純水の自由に入って貰いたくって、お誘いみたいな」


 ゴッ殿は険しい表情を、怒りを露わにしてる。ヤバい。


「お前は友達って思っていたよ……お覚悟願おう」


「待って僕の話を聞いて!聞けば解り合えるから!」


「そこになおれ!」


ゴッ殿の容赦ない一撃が飛んで来る。


やるしか無いのか?


ーーーー



 僕はゴッ殿の説得に失敗した。しかしタイミングが良く先生が来て殴られずには済んだ。結局話せず仕舞いだな。


 全ての始まりはあの日、今から10年前位に僕とゴッ殿は友達だった。いや僕はそれ以上を望んでいたかもしれない。僕はゴッ殿が好きだった。


††


ー10年前ミッション保育園ー


 2階のマリア像の前で僕とゴッ殿はカクレンボしてた。僕は全然ゴッ殿が見つからないので、立ち入り禁止の2階に探しに来ていた。この保育園はやたら高そうな絵画や彫刻が置いてて、玄関口からして敷居が高いって思わせるが、2階の此処は玄関の数段上の、近寄り難いオーラが出てる。僕は滅多に入らないというか、立ち入り禁止なので、本当は入れないんだけどさ?「うわあ」って感嘆と声を漏らす。


 この絵画や彫刻達は、売れば幾ら位の価値が有るのかな?って子供ながらに考えていて、見とれていた。心奪われる様だった。赤い色の階段を一歩ずつ確実に上がる。景色というか、展示物が次第に豪華になっていくのが解る。そして、階段の最後の一歩を登り詰めて見上げた黄金に見えるマリア像だ。黄金に見えるのは夕日がステンドグラス越しに白いマリア像に後光を差してるかの様な優雅な光で、眩しすぎる光景。思わず声を漏らした。


「凄いこんな場所があるなんて」


「だろ?この時間の此処は眺め良いだろ?」


 気付いた時にはゴッ殿が傍に佇んでいた。もうカクレンボとかどうでもいいや。そんな事よりも、僕に向ってゴッ殿が発した言葉にハッとなる。


「なあ、お前がイジメられた時は俺が守ってやんよ、もう直ぐ卒園式なんだな……寂しくなるな」


 僕は、ゴッ殿の横顔を見ながら、胸が苦しくなった。


「僕もゴッ殿を守るから、だからずっと友達だよ」


 ゴッ殿が振り返る。顔近いけど、そんなの気にならない。こんなにも眩しい存在は僕の中でこの子が初めてだろう。まるで太陽の様な存在。そっと手を伸ばしてみる。


「なんだ?握手?」


 不思議そうな顔をするゴッ殿。僕は思い切って、手を伸ばす。届けてみせる。


「僕達友達!握手で友達!」


 僕は腕をブンブン振り回した。僕なりの精一杯の告白だった。


「変なヤツ、腕痛いって」


 僕の初恋だった。


ーーーー



「絶対に僕が助けるんだから、僕が守るんだ」


 僕は湯船に浸かりながら、次の手を考える。直球は難しいそうだ。せめて話を聞いて貰えるならなー。


「ケータイあるじゃん?」


 慌ててお風呂から上がり。友達をあたってゴッ殿の番号ゲットして、掛けてみる事にする。コール音が数回鳴ってゴッ殿が出た。


「もしもし?ってか誰?」


「僕だよ、今日の話でさ?」


「あ、話す事ないよ……じゃーね」


 撃沈した。何回か掛けたけど終いには電源を切られる始末。ダメだこりゃ。


「なんで聞いて貰えないんだろ?」


†††


ーゴッ殿サイドー


「あいつしつこいな、学校でどんな顔して会えってんだよ……」


 寝室で横になって考える。10年前のあの日あの場所でアイツの事を。


††


ー10年前ミッション保育園卒園式ー


 まるで協会そのものの面立ちの卒園式会場。卒園生代表挨拶で、壇上にアイツが立っていて、ずっと俺の方を見ながら、最後に「ずっと友達だよ」って挨拶してたのを覚えてる。


 アイツの泣いてる顔を見ると、胸が締め付けられる。俺は卒園式の終わりに、アイツに握手して、確かこう言ったけな。


「離れていてもずっと友達だかんな?」


俺はずっと手を握り締めてたけど、アイツは痛いって言って話したんだっけ?


「ごめんね、行かないと」


ーーーー


「振り解かれたんだよね、まあ女同士ってのもオカシイけど、初恋だったな」


 んで、その初恋相手だったヤツが今の俺の前に、敵だと宣戦布告してきた訳だ。


「どーなん?」


 はあ。面倒臭い事この上無いぜ。


「あーアイツが卒園生代表ってのも今考えるとオカシイけど、まあ純水の自由の代表ってのがマジなら、合点がいくかな?」


 グダグダ過ぎるだろ?ってかさ?あー初恋って適当過ぎてて、今まで忘れてたわ。うー寒いから寝よ。


「あーてか明日土曜日か」



ー土曜日ー


 どう転んでも良い様に取り敢えず鎧だな。俺は鎧の買い出しに行く。ああ俺ん家ショッピングモールだから徒歩5分で鎧屋。


 っておい!なんでアイツが居るのさ?ってこっちに気付いた。どうする俺?


「ゴッ殿!!」


「っておい!ハグすんな!周りの目を考えろ!」


 周囲の目線が痛い。明らかに誤解されてる。いやさ?コイツの事は昔なら満更でも無かったんだけど、今は色々状況が違い過ぎる。コイツは敵だっての!何でだよ?昔は俺の手振り解いた癖に、今更感バリバリだっての!ってか迷惑だから!


「ゴッ殿!!話聴いてよ!お願いだよ!」


「解ったから離れろっての!」



これって、どーなん?続けるのか?


ー続くー

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