第20話 恋人だけは勘弁だ
自動販売機から買った暖かいコーンスープを啜って飲んでいるのは、緑原 咲耶である。
なんでも、冷たいものを取りすぎた結果、腹痛を起こし、暖かい飲み物で和らげようと考えたのだった。
「さすが、ウチの恋人ですね。見捨てずに暖かい飲み物まで買ってくるなんて評価上がりましたよ」
「少しは、反省してください」
「あうっ!」
緑原さんの額にデコピンを食らわし、しょんぼりとベンチに縮まっている。
「それよりも、とりあえず温かくしてくださいよ」
着ているパーカー脱いで、緑原さんに手渡す。
「ありがとう」
「どういたしまして。それで、調子はどうですか?」
「前よりか大分痛くなくなりました。歩くぐらいなら大丈夫です。たぶん……」
「それなら良かった。夜はまだ少し冷え込みますからね。歩けるなら、早い内に帰るのが一番だと思います」
「分かりました。残念ですが、今日は恋人とは何かを教えられませんでしたけど、今度また教えてあげますね」
「またその機会があれば、ですけどね」
「ありますよ! それより、早く手を出して下さい!」
「どうしてですか?」
「……っ!! 鈍感野郎ですね! 手を繋ぐんですよ。恋人同士が手を繋ぐなんて当たり前なんですからね?」
「分かりました。後、駅まで見送るのでそのつもりでいてください」
「それは……どうも、です…」
手を繋いで立ち上がる彼女は、俺から視線を逸らしていた。
それは、なぜなのかと聞く事はどうしてか野生の勘が働いて出来なかったのである。
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