第8話 生徒会長と副会長
書記くんと仲直りをする一日前。
なるべく生徒会室付近に立ち寄らないよう注意して書記くんから離れて過ごしていた。
「はぁ~……」
昼休みの図書室で憂鬱気味の私の両目に誰かの手で遮られる。
「だーれだ?」
この女性の優しい声色は、私の知る限り一人しかいない。
「千夏ちゃんでしょ?」
「当たりです。うふふ」
相変わらず千夏ちゃんの笑顔が可愛い。
「千夏ちゃんが図書室に来るなんて珍しいね?」
「そうね。でも、わたしの一番の目的は唯ちゃんよ」
「私?」
「そう。最近生徒会室に来てないみたいだから、少し気になってね」
「そんな気にする事じゃないよ。ただ……」
「ただ?」
「ちょっと困っているだけ……」
「どうしたの? わたしで良ければ相談に乗るよ」
「うん。じゃあ、お言葉に甘えさせて貰おうね。実は、この間大切な人と口喧嘩みたいな事になってね。どうやって声を掛けたらいいか分からない状態なの……」
「なるほど。唯ちゃんは、その人と仲直りしたいって事でいいの?」
「うん。でも、なかなか言い出しづらくて……」
「そうね。それなら、唯ちゃんはいつも通りに過ごすのがわたしは良いと思う」
「いつも通り?」
「そう。だって、唯ちゃんはいつも楽しそうにいろんな人と話しているから、唯ちゃんが暗いと周りも釣られちゃうよ」
「そうだよね。分かった! 出来るだけいつも通りに過ごしてみるよ」
「うん。その意気だよ」
「相談に乗ってくれてありがとう千夏ちゃん! よーし、これで何とかして書記くんと話すぞ!」
「えっ! 唯ちゃんと口喧嘩してた人って……」
「うん。書記くんなんだ……」
「そうなんだ。なら、今はあまり話し掛けない方がいいよ」
「どうして?」
「だって、演技しているように思われたら大変だよ。だから、何日かしてからの方が良いかもしれない」
「確かにそうだね。よし、とりあえず明日から頑張ってみる! それじゃあ、私はもう行くね」
「うん。バイバイ唯ちゃん」
片手を振って元気に図書室を出て行く生徒会長の唯を見送った。
「書記くんが好きなのは、わたしじゃ……ない」
誰もいない静な図書室で、ただただ胸の苦しみのせいで頬から涙が伝う。
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