第7話 仲直りと相変わらずな生徒会長

 中庭へ出る廊下を走ってはいけないのだが、ここは緊急事態のため、無視して走り、生徒会長を囲む野次馬をかき分けてようやく目の前に生徒会長が見えた。


「どうして君が?」


 どこか驚いた様子の彼女に、事前に何も考えていない状況で、とっさに生徒会としての仕事が脳内を占領する。


「会長。今度あるイベントの催し物なんですけど、生徒会のみんなが困っていまして……」


 何を言っているんだ俺は!?


「そう、分かったわ。皆、ごめんなさい。生徒会の仕事があるので、私はこれで」


「でも、生徒会長。せっかく男子が勇気を持って告白しに来たのに、いいの?」


「本当にごめんなさい。今は、生徒会長として頑張りたいの」


 告白が出来ないと決まり、囲っていた野次馬達が一斉に散り散りになる。

 その一方で、告白の玉砕や告白しきれなかった者達は、今にも泣きそうな顔であった。


「それじゃあ、一旦生徒会室に行きましょう」


「ええ。お願いするわ」


 特に何かを言うわけでもなく、無言のまま生徒会室にまで来てしまった。

 この無言の時間が俺の胃を苦しめる。

 放課後ゆっくり考える時間が欲しくて一応生徒会室には、誰も来ないように副会長から生徒会長以外の皆に伝えて貰っていた。


「……あの、生徒会長。すみませんが、いつもの席に座って貰えますか?」


「……ええ。分かったわ」


 久しぶりに生徒会長が生徒会室の椅子に座り、なんだか懐かしく感じていた。

 気持ちがホッとするのは、ちゃんと自分の謝りたい気持ちを伝えてからだ。


「……それで、生徒会長……実は、今日生徒会室に来て貰ったのには、理由があります」


「……」


「えっと……その……」


 心臓がやけにうるさい。

 でも、副会長に教えて貰ったじゃないか。


「……」


 勇気を持って、話せ!


「会長! この間は、本当にすみませんでした!」


「……へ?」


「……えっ?」


「……ごほん、何でも無いわ。続きを聞きたいのだけどいい?」


 どうしたんだ?

 やけに顔が赤いけど。


「は、はい。この間、自分が強く当たりすぎてしまって」


「そうね。あの時は、悲しかったわ。でも、私も悪いと思っていたの。だから、今回はお互い様って事にしましょう?」


「は、はい!」


「それじゃあ、改めて、私と偽の恋人役になって貰えない?」


「いえ、それは無理です」

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