第5話 副会長と書記

 最高になるはずだった1日は、最悪な1日となり、次の日の朝から憂鬱気味の書記である俺は放課後、一人生徒会室で報告書を作成していた。


「はぁ~……」


 さすがに昨日は言い過ぎたな。

 あの美人で可愛い生徒会長の嘘だとしても、恋人になれるチャンスがあったというのに、ついつい本音が出てしまう。

 いい加減本音が出てしまう癖を治さないと、生徒会長みたいに被害が出る。

 さて、どうしたものかなぁ……。


「あら、大きなため息ね?」


「うわぁっ!?」


 耳元まで近付いていた顔に驚き、そのまま椅子から転げ落ちる。


「ごめんなさいね。つい、何か悩んでいたから声を掛けちゃって」


 尻もちを付いたような体勢をしている俺に手を差し出してくれたのは、清楚で華奢な身体をした黒髪長髪の学校二番目に人気な副会長の青山あおやま 千夏ちなつさんだった。


「えっと、はい……」


 差し出された手を掴んで立ち上がり、倒れた椅子を起こし、座り込む。


「悩んでいるのなら、何でも相談して。だって、同じ生徒会の仲間でしょう?」


 ああ、副会長の笑顔が女神のように見える。


「すみません。では、お言葉に甘えさせて貰いますね。実は、最近大事な人と少しわだかまりがありまして……」


「それで、また元の状態に戻りたいと思っているのね?」


「はい。でも、自分はその人に酷く冷たい事を言ってしまったので、なかなか自分から言い出せずにいます」


「それは、確かに言い出しにくい状況ね。でも、少しでも謝りたい気持ちがあるのならその気持ちをきちんと素直に口に出すのも大事な事なの。それが例え、相手が悪かったとしても、ね?」


「副会長……そうですね。素直に気持ちを伝える事が大事ですよね」


「良かった。元気になったみたいね」


「はい。相談に乗ってくださり、ありがとうございます!」


「気にする必要はないの。だって、元気な君が一番だからね?」


 副会長の笑顔が眩しい……。


「はい! それでは、一旦自分は報告書を提出して来ますね」


 隣に居た副会長に頭を下げて、気持ちがすっきりした俺は、生徒会室を後にする。


「もしわたしが、その大事な人だったら、あんな風に悩んでくれるの……かな……」


 生徒会室に一人残った副会長は、誰にも届くはずのない本音を小さく口にしていた。

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