第4話 何でも承諾するような男じゃない

 まさか、美人生徒会長である白川しらかわ ゆいに男性の友人が居ないとは……。


「なるほど。それで自分しか男子生徒の友達が居らず、仕方なく選んだ訳ですか?」


「その通りよ」


 そうはっきり言われると傷つくのですが。


「まぁ、確かに偽の恋人役を引き受けて毎日会長と話せるのは個人的にはかなり嬉しい事です」


「そうでしょ? こんな綺麗で可愛い私なのだから当然引き受けて……」


「ですが、それは会長がただ書記である自分の気持ちを考えずに利用するだけを考えているのでは?」


「それは……」


 まぁ、だいたいそうだろうと思っていたさ。

 下駄箱に手紙とか何十年前のやり取りに浮かれて春の訪れが来るなんて一人で舞い上がってその結果が偽の恋人役をしろだと?

 確かに、生徒会長は美人だ。

 だが、だからといって、俺は可愛くて美人の頼みを何でも承諾するような男じゃない。


「なら、はっきり言いましょう。俺は、会長と偽の恋人役を引き受ける気はない」


「た、確かに嘘の手紙まで出して呼び出したのは悪いと思っている」


「悪いと思っているのなら、最初からしなければいいだけじゃないですか?」


「そ、それは……」


「とにかく、俺はもう帰ります。これからは、友人ではなく、ただの生徒会長と書記の関係でいましょう」


 席から立ち上がり、扉の前まで進む。

 引き戸に手を掛けた瞬間、生徒会長が震える口で声をかけた。


「な、なら、もし正直に君に話していたら、引き受けてくれたの?」


「例え、正直に話していたとしても、断っていたでしょうね。まだ友人として、ですけど」


「書記く……」


 引き戸を開けて一直線に廊下から帰路へ走って行く。

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