第3話 会長が偽の恋人役を頼んできた

 肩で息をするぐらい全力疾走した彼女が、扉の前に立ちはだかった。


「会長……?」


 目に止まらぬ早さで来たせいで、扉に手をついて呼吸を整えている。


「書記くん……君ね、いくらなんでも本当に帰ろうとするなんて、あり得ないでしょ?」


「いえ、会長が嘘を付くのでつい帰りたくなってしまいました」


「……はぁ、分かったわ。本当の事を言うから、いつもの席に座って」


 生徒会長が言ういつもの席は、正面の生徒会長が座る場所から左右に席が4つある内の右側だ。


「言われた通り、座りましたよ」


「鞄まで置いたのなら帰る心配は無さそうね」


「今は帰る必要が無いので。それより、話は何ですか?」


「そうね。まずは、どうして告白をしたのかしら」


 やっと嘘の告白までした会長の口から真実が聞けそうだ。


「はい。なぜ、告白を?」


「それは……ほら、私って綺麗で可愛いじゃない?」


 それを自分で言うか普通……。


「ええ、まぁ確かに綺麗で可愛いですね」


 とりあえず生徒会長の機嫌を損ねないよう、明らかに分かりやすい棒読みと笑顔を見せる。


「そうなのよ。でもね、そのせいで学校の男子生徒から毎日のように告白されるのよ」


「それは、大変ですね」


「そう、そこで私は考えたのよ! 偽の恋人役が出来れば、毎日告白されるような事が無くなるって」


 告白されるのは、良い事なのでは?

 でも、俺はそんな余計な事は言わないけどね。


「それが、告白してきた理由ですか?」


「そう。そうなのよ!」


 満面の笑みで言われてもな……。


「確かに事情はだいたい分かりました。では、もう1つだけ聞いていいですか?」


「ええ。大丈夫よ」


「どうして、自分が偽の恋人役なんですか?」


「それは……そのぉ……」


 これは、もしかして偽の恋人役を頼んだと見せかけて会長は、まさか俺の事を……。


「君しか男子生徒の友達が居ないからだ!」


「……へ?」

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