厄災のお手伝い
第20話 『宿泊場所』
不気味な男が去るのを横目で確認するとチズをスバルに渡して固有空間から薬液の入った小瓶を取り出した。
「それは?」
「鎮静薬だ、これで動機も収まるだろ」
俺は言いながらチズを渡し空いた手で瓶の蓋を開けるとチズの口に液を数ml流して固有空間にしまう。
色々と家族救うために試行錯誤した仮定で薬学とか解剖学も学んだからな、これくらいの薬品なら片手間で作れる。
うん、それはそうと少し前まで男に当てられたか嫌な思い出でも蘇ったか荒い呼吸でボソボソと呟きながら脂汗を流していたチズはスヤスヤと眠っている。
速効性の薬品でまだ三歳の体だからな、効能も相当に高くなってるんだろう。
「チズ寝かせたいし飯の前に宿探すか」
「そうじゃの、とは言ってもエルザがトイレに行くとかで走り去ってしもうたで道が分からんのじゃがの」
「口調、酷くなってないか?」
「ぬ? 済まないの、言動は直した方が良いか?」
「いや、まあチズは寝てるんだし無礼講で良いだろ」
「そうか! そうじゃな!」
「それよか今は宿だ、どうする? エルザを待つか先に行って探すかの2卓だけど?」
「ふ~む、チズが心配じゃし先に探すとせんか?」
「お、気が合うな」
俺はスバルの答えに相槌と肯定を返すと「んじゃ早く行こうぜ~」と言って明るい道を進み始めた。
探し始めて20分と少し、息巻いて探したにしてはサッパリ見付からない中で発見したエルザが予約したと言ってた『複雑な片想い』とかゆう嫌に生々しい宿泊施設に到着した。
受付でエルザの名を出すと急に恐縮した様子で近くのエレベーターに乗せられ別に高くもない三階建ての三階、その一番高いらしい部屋に通された。
既に金は支払われてるとかで部屋に有るものは好きに使っていいと言われ鍵を二本渡された。
片方をスバルに渡しもう一方を固有空間に閉まったらスバルの鍵を借りて開けチズと交換に鍵を手渡した。
んで中に入ったんだけど、なんかもう感動だよな!
一年も穴の中で生活してた身としては大理石なのか知らんけどツルツルした床だけでも大分違う。
「スゴいのうハルよ! 穴とは雲泥の差じゃ!」
「そうだな! って玄関で感動してる暇は無いんだった!」
「そうじゃったの! ベットは何処じゃろう?」
「俺が探すからスバルは茶室でも行っててくれ!」
「茶室? なんじゃソレは?」
「休憩する部屋だよ」
「きゅ、休憩じゃな!」
スバルは頭に?を浮かべたまま玄関から続くドアの一つに入っていった。
俺も探さなきゃだしぼーっとしていないで部屋を・・・
『バンッ!』
「うおっ! どうした!?」
「のうハルよ! ベットの部屋とゆうのは此処じゃないかの!?」
「は? いやいや、玄関から直ぐに寝る部屋は無いだr・・・ 確かにな?」
「そうじゃろっ!」
俺の前には真っ白の清潔感溢れるベットが四つ並べられた部屋、俺ら三人で寝るからキリのいい四つベットなのかね?
その辺は分からないけど取り合えずはチズをベットに寝かせ薄いけど暖かそうな布団をかけて、俺とスバルは静かに部屋を出た。
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