第18話 『不気味で不吉な男』

 魔族の胸に差し込まれた手のひらに固有空間を生み内部から高速で飛来する三つの小石が放出され、魔族の内部を悉く破壊して背中から破裂音と共に出てくる。

 これは事前に入れていた石を内部で高速回転と遠心力を加えながら加速を続けて固有空間から出すとゆうチズに教えられた技だ。物によっては強度の問題で放出までは元の形が保たれるらしく大丈夫だが出した瞬間に瓦解するから耐久の高い石を探すのは少し面倒だったな。


「よしっ! 一丁上がりだな!」

「そうだね~ ちょっと助かっちゃったよ」

「・・・パチパチパチ、素晴らしい実力ですね~」


 俺がチズと軽いはいタッチを交わそうとした瞬間、薄気味の悪い視線が突如として俺に冷たい汗を滴らせた。

 その異様な重圧を持つ声に無意識ながら顔を向けた場所にいたのは、あまりにも細くあまりにも大きい男だ。なんの感情も感じられない瞳を除かせら不気味な薄い笑みを浮かべて俺とチズに歩み寄る。

 チズもその異質に気付いているんだろう、過去の経験か何かまでは分からないが怯えたように俺の影で震えながら服の裾を弱々しく掴みすがり付くような声で「・・・ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」と延々に同じことばかりを呟いている。


「俺らに何か用ですかねぇ? 違うんだったら何処かに行ってもらえます?」


 俺は、その見慣れた視線に告げるとチズを抱き上げて男から離れるように真逆の方向で殺気を垂れ流していたスバルの方へ足早に走った。


「酷いなぁ、全くもぅ」


 そんな君の悪い冷たい声に震える口角を正して一度も振り向かずその場を離れた。


















「じゃあ僕も行こうかな、久し振りに面白いのが見れたし」


 男は呟くと暗い路地裏に歩を進める。

 影に差し掛かると同時、薄気味の悪い姿だった大きな男は寸秒を経ると大柄だが細くも太くもないアイドルのような姿に戻っていた。


「なあエルザどう思うかね彼等は?」

「普通じゃない組み合わせですよね、本来は脆弱であるはずがかなり強力な勇者紋剥奪者とアナタの元荷物持ちに最悪の女王ですから、相当に不気味な連中ですよ」

「ああ違う違う、1つ訂正だけど勇者紋剥奪者の方は僕の知り合いだよ? なにせ僕が育てた殺人機械だからね、あの表情一つ一つが全部嘘だよ彼は」

「アナタの知り合いなのですか!?」

「そうそう、勇者として召喚される前にいた場所で唯一催眠にかからなかくて家族の解放とか理由つくって人を殺し続けら優秀な鴉だよ」

「アナタに認められるとは、流石ハルさんと言うべきでしょうか?」

「ハルさん? その呼び方はなんだ?」

「ああ、そう呼ぶように言われましたので」


 その言葉に男は不適な笑みを浮かべ「埋め合わせを作る気か晴輝くん・・・」と呟いてエルザと呼ばれた男に何処から出したのか封筒を渡して先を急ぐとでも言うように早足で裏路地の奥へ奥へと進んでいった。

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