第7話 『ステータス回覧』

「それじゃ次に私の職業を説明でも……」

「いやいや、要らない要らない! 興味が無いからさ~」

「え? そ、そんな~……」


 チズは明らかに残念そうな顔で呟くと俺が抱き抱える腕を叩いて下ろすように指示してくる。


「降りたかったなら口頭で言ってくれれば良いのにな?」


 言うとチズを地面に放り投げた。

 次の瞬間には華麗に両手を開いて地面に着地した、と同時に抱えていた板が地面に鈍い音を響かせた。


「良いのか落として?」

「あ、しまった……」


 言うとチズは大事そうに板を拾い上げると軽く叩いて砂を落とすと俺に渡してくる。


「これ見てみなよ。私のステータスだから」

「ん? だから興味ないって言わなかっt…」

「それを参考にしてステータスの説明を行うのさ、良いから一通り読んでみてくれ」

「ああ、そうゆう事なら良いか……」


 呟くと貰った板に視線を移す。


『個体名 シュバルツ・キルミューレ (任意開示ネーム 神辺 千鶴)

 性別 女

 年齢 2歳

 職業 土魔術師

 職業レベル 3

 スキル 土人形

 スキル詳細 砂と呼ばれる粉末状の物質全てに干渉し形状を与えるスキル


 身体能力:D

 魔力数値:A

 精神耐性:S

 幸運度数:B 』


「読めたかな?」

「ん? ああ、丁度読み終わった所だ」

「そっかそっか、で? 何か驚いた所とか無い?」

「……は? いや、別に無いぞ?」

「えぇ~ 私が女って聞いたら驚かないかな普通は?」

「いた、別段何も無いけど?」

「はぁ、まあ良いや……」


 チズは諦めたように言うと切り替えたらしく「じゃあ始めよっか」と言ってステータスの説明を始めた。


「まずは簡単なところでステータスの英語表記かな」

「うん、まあ大体の予想はつくけど一応聞くさ」

「一言いや、全部余計だね! はぁ、それで説明だけど表記は上からSSS SS S A B C D E F Gの10種類構成だよ。 これは数値化された能力に統計だから同じ表記でも下が居れば上も居るね」


 へえ、十種類構成って思ってたよりも少なかったな。

 その区切り方じゃ確かに同じ表記でもピンキリってのは理解できる。

 なんせ10種類だから、流石にそれだけじゃ詳細な数値など分からないだろうし。


「うん、ちゃんと理解したって顔だね。 それじゃステータスの説明終わって次はスキルの説明かな。 って言ってもスキルに関しては殆ど分かってるだろうから1つだけだけど、スキルの発動方法はステータスから消費されるんだよ。 例えば魔法職なら魔力数値だし精神干渉系なら精神耐性、みたいな感じかな。 私の場合は魔力数値だよ。そして例外が勇者印剥奪者の固有空間だ。 固有空間だけは、って厳密には他にもあるけどステータスの消費が不要なスキルもとある物を消費してるんだ。 なんだと思う?」

「ん? もしかして聞いてる?」

「ああ、当然じゃないか?」


 ええ、突然だな~

 何だろ?

 寿命とかかね?


「あ、寿命じゃないよ?」

「……思考読めるのか?」

「いや、私も話を初めて聞いたときは寿命だと思ったからだよ!」

「う~ん、分からねぇな、パスだ」

「あれ? 思ってたより早いね? ふふん、正解はね……」


 チズは何故か自慢気に、と言うよりも反応を楽しむような顔で俺を見据えると人差し指を俺に向けて……


「正解は■◆●▼だよ!」

「……は? 何て言ったんだ?」

「ん? いや、だから■◆●▼だよ!」


 う~ん、言葉として俺の脳が処理していないような違和感の残る感覚だ……

 口の動きから言葉を構築しようとしてもノイズのような良く分からない音にしか変換されない。

 うん、俺の脳が後作動を起こすとか事故以来は初めてだぞ?

 もしかして寿命か?


「ああ、やっぱ聞き取れてないのかな? そりゃあそうだよね、私もレベルが10越えるまでは認識できなかったし」

「あれ? そうなのか?」

「ああ、今のレベルが足りていないんだと思うよ。深粋原語(しんいきげんご)はレベルが10を越えないと認識することが許されないから」


 ええ~

 なにその中二臭いようで臭くないネーミング?

 いや、そんな事よりも詳細の分からない物を消費するのは怖すぎるな。

 当分は使わない方が良さそうd……

 いや待てよ?


「まあ聞こえないんなら其で良いさ。 それより俺のステータスは表示できないのか?」

「え? う~ん、この板って所持者のステータスしか映せないんだよね~ 所持者が死んだら次に触った人間のステータスを計測するんだけど……」

「う~ん、そんな物が都合良く有るわけもないk…… いや、有るぞ!」

「え、何処に?」


 チズが聞いてきたから鞄を地面に下ろして拾ってきてた数枚の板を取り出して見せた。

 するとチズは「え、何でN持ってるの???」みたいな顔で俺を見てくる。

 いや、まあ此れが死者の物とは限らないんだけどさ……?


「いや、チズが居た馬車に有ったんだよ」

「ああ、もしかすると護衛さんの数人が馬車に置いてたのかも知れないね?」

「まあ使えるか分からないけど見方教えてくれよ」

「ああ、まあ心の中で念じるんだよ。ステータス!って感じで」


 チズは言いながら握り拳を上に付き出した。

 ステータス!っの力強さを身振りで表したいんだろうな。


「ふ~ん、分かった……」


 俺は言うと板を一枚持って「ステータス!!」っと強めに念じた。

 すると居たの表面で発行現象が起こり……

 次の瞬間には俺のステータスが表面に描かれていた。


「おお、出来たぞ!」

「一発で成功するとは思ってなかったな~ それじゃあ読んでみて?」

「おう! 当然だろ!」


 俺は少しだけワクワクしながら板に目を走らせる……


『個体名 西城 晴輝

 性別 男

 年齢 19歳

 職業 勇者印剥奪者

 職業レベル 6

 スキル 固有空間

 スキル詳細 自分だけの空間を産み出し中と外で物質を出し入れできる


 身体能力:SSS

 魔力数値:SS

 精神耐性:SSS

 幸運度数:SSS 』


「うわ、最悪だ……」

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