第8話 『能力値は平均がベスト

 俺は昔から平凡な人間に憧れてきた。

 生まれて二ヶ月時点、既に俺は日本語の言語形態を把握し会話を理解できる程度までには言葉の種類も理解していた。

 そんな俺の幼少期は正に地獄だ、知能の低いその他モブ共と知能レベルを合わせなければ差別化されるのだから。

 そんな理由から人に会わせ続けた中学一年の夏休みだ、交通事故で既に異常だった俺の脳がさらに性能を上げてしまった。

 その結果は明確で今までの苦難など生温いことを否が応でも知ることになった。

 過酷なリハビリを経て中学三年の秋には普通の人間が送る普通の基準にまで身体能力の活性化を押さえることが出来た。

 それ以降俺は普通の人間とゆう者の全てが羨ましくて仕方なかった。

 気を付けねば周辺地理が変わるような爆弾も無ければ合わせなくても回りの普通に乗っかれるような、そんな努力の少ない存在にこれ以上は無いって程に憧れ羨望さえ覚えた。

 そんな最中でたどり着き、掴み取ったのが異世界転移とゆうチャンス。

 この世界では俺の能力が普通なんじゃないかと淡い期待を抱いた、が・・・

 数値とゆう明確な物で非常に現実は突き付けられた。

 そう、絶望以外の感情など感じる余地もないだろう。


「最悪、って? 最高水準じゃん?」


 チズは何も知らないからこそ疑問符を浮かべる。

 最高水準じゃダメなんだよ。


「いや、別になんでもないよ。 其よりも次の説明はなんだ?」

「そう? 何もないなら良いけどさ。 それで次の話は、まあ忠告に似てるかな?」

「忠告って、俺にか?」

「そうそう、私はもう警戒の必要がないからね」

「ふ~ん、それで?」


 俺が聞くとチズは明ら様に苦い顔をすると両手を握り締めた。


「私が犯した失敗なんだけどレベルが低い内は人間含め他種族も、知的生命体に関わらない方が良いんだよ」

「へ~ 何でだ?」

「うん、ヤッパリ疑問だよね。 まあ言ったとは思うけど固有空間は狙われるんだよ、軍事利用か何かは別にしてもね。 だから対処できると確信が持てるまでは不干渉を決め込まないと一生涯を食い潰されてしまうんだ、私のようにね・・・」


 ああ、実体験だったのか。

 嫌に説得力を持ってると思ったら・・・


「分かった、その忠告は受け入れるよ」

「うん、その方が最善だと思うよ」

「ああ、だが問題もあるんだ」

「問題って? ・・・ああ、居住区画の事だね」

「ああ、俺も確かに関わりたくはないんだが生憎に住む場所がないんだ」

「それなら心配ないよ。 僕のスキルで作るから」


 スキルで作る・・・?

 確かチズのスキルって土人形とかってゆうヤツだよな?

 人形を作って資材を集めさせたりするのか?


「まあ百聞は一見に如かずって言うし早く移動しようよ? 目立たなそうな場所を見つけたら家を作って見せるからさ?」

「ふむ、良いよ? だが宛は有るのか?」

「ああ、取って置きのスポットがね。 ソコなら先ず人は来ないだろうしレベリングも同時進行できるんだ」

「レベリングって言うとレベル上げの事だよな? って事は魔獣の出現率でも高いのか?」

「うん、と言うよりも迷宮指定の核発生地なんだ」

「ん? 待て待て、分からない単語が乱立してるぞ」


 核発生地ってのも迷宮ってのも初耳、出はないし文字列から予想はできるけど地球上での話だからな。

 異世界に適用されると決めつけるのは危険だ。


「ああ、そりゃ分からないよね。 迷宮ってゆうのは魔獣の出現率が多くて警戒が必要と言われるような場所、先ずもって一般人の侵入は無いよ。 冒険者も低ランクだったら先ず避けるだろうね。 勿論高ランクなら狩り場として運用する人もいるけど此処ら辺は田舎だからね、高ランク冒険者なんてそうそう居ない。 だから安全性が高いって話ね。 核ってゆうのは大きくて半透明、色が濃いほどランクが高くなる物だよ。 此処から魔獣が産み出されるんだ。 核の設置場所はランダムだけど設置されてる場所によって産み出される魔獣は変わるよ。 例えば地面に埋まってたら地中にもぐる系統の魔獣だし地面に刺さってて核が剥き出しだったら地上で生きる魔獣、海に沈んでれば海の生物を模した魔獣だし空中に浮いてれば飛行できる魔獣みたいな感じでね。 分かってると思うけど色が濃い核からはより高ランクな魔獣が産み出されるし薄ければ低ランクの雑魚が出る。 今から向かうのは中堅上位位の迷宮だよ」

「ああ、だから高ランクの冒険者って奴等も来ないのか」

「こうゆう事!」


 高ランクって言うくらいだから相当に強いんだろう。

 そんな奴等が態々中堅上位の迷宮に来るとは思えない。

 それこそ高い危険性の場所に行く方が実りも多いだろうし。

 かと言って下位の冒険者って奴等に中堅上位ってのは危険が余りに大きすぎる、だから人は来ないって事だ・・・


「分かった、それじゃ案内してくれ」

「うん、当然でしょ!」


 言うとチズは確信を持って道を反れると草村を掻き分けて進み始めた。

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