第5話 『赤子』

 はい、訂正したら捨てられました。

 それでも優しい おじさん らしく古い服を態々家経由で渡してくれたから割りと今は助かっている。

 兎に角服が無いんじゃ現地民との接触方法も自然と限定されてしまうわけだし。

 まあ俺の体格より二周りは大きいから端から見なくても一人称視点でブカブカなのが分かる。

 丁寧にパンツとシャツもくれたし凄く満足してる。

 まあ不思議なのはそんな優しいおじさんが無職って聞くや否や明らかに蔑んだような目で俺を見たことかな。

 それでも服は助かってるし恨みとかはないけど捨て台詞と言うか服だけ渡されて追い出された時の「ゴキブリ野郎が早く消えろや! 空気が汚染されたら責任取れんのか!? あぁ!?」だったけど……

 うん、流石に響いたよね。

 俺何もしてないよ?

 まあ日本でも無職は煙たがられるよ?

 それを踏まえても理不尽だと思ってしまうのは俺が可笑しいのかな?

 世間一般的に無職は服着れるだけ有り難いと思えって事なのか?

 いや、でも言い訳させてもらうと俺って大学生だぜ?

 そもそも就職してない訳だよ?

 そして更に言うと来てから殆ど経ってないんだぞ?

 例え夢でも酷くないかよ!?


「って、それより問題は村出禁だよな~ え、無職だと村出禁になるの!?って驚愕だったよ……」


 おじさんに言われたから本当か分からないけど無職の人間は村に入ること事態が懲罰受ける位の罪に問われるらしい。

 いや、厳しすぎない?

 流石に無職の扱いヤバすぎない?

 なんだ出入りしたら懲罰って、横暴にも程があるだろ!

 これホームレスとかになったら処刑されるんじゃないか!?

 なんか無いとは信じきれないんだよな~


「ってか村がダメでも服有るんだし大きめの町とか行けないかな? まあ関所とかで金払えとか言われたら詰む訳だけど……」


 どうしようかな?

 ……ん?

 アレは、なんだ?

 路頭に迷いつつ草原を歩いていると少し遠くの草を食べる不思議な生物が視認できた。

 その生物は緑色の半透明でジェル状、体の中には黒い結晶球みたいな物体の見える奴だ。

 ……うん、見当が俺だってついてるさ。


「スライムじゃね?」


 そこで、やっと俺はファンタジーを感じた。

 あの巨大な鹿を見ても感じなかったんだけどさ、流石にスライスみちゃうと考えるさ。


「そうなってくると職業の意味も違いそうだぞ!? それだったらあれだけ差別された理由も分かるし」


 つまりは生まれながらに何の才能も持ってなかった、と思われたんだろう。

 世間的な評価もな……


「よし、そうと分かったらアレだよな! ステータス回覧!」


 少し興奮しつつ叫んだ、けど……

 結果は出てくれなかった。

 うん、他のも実験が必要だよな。


「ステータス閲覧! ステータス表示! ステータス色覚! ステータス……他に思い浮かばねぇ」


 え、コレだけ挙げてもステータス出てこないって何?

 夢なら臨機応変に対応しろよ!

 ……最初からそんな設定は無かったとかかな?

 言ってみれば実物を見た事もないのに表示されてる状況を想像したってリアリティーが無いから結果的に出てこない、みたいな?

 なんか有りそうだよな~


「ってなると、職業ってのは本当に就職先の話だったのかな?」


 いや~

 違うと思うな~

 ……あ、もしかすると何か道具が必要なんじゃないじゃ?

 石板でも小振りなカードでも良いけど何か必要なんじゃないか?

 そうなると俺が出せないのも当然な訳だし。


「そうなってくるとホントに村への出禁は痛手だな、今知ってる人の領土はアソコだけなんだからさ……」


 うん、どうした物かn…


「きゃあぁぁぁぁ!!?」


 なんだ?

 結構な長距離先から叫び声が耳に響いてきたぞ?

 多分だが640mは先だと思う。

 何で聞き取れたんだ?

 ……あ、脳の活動下げ忘れたのか!

 常時強化状態とか、下手したら周辺更地になってたな……


「下げとかなきゃダメだよな……」


 呟いて脳の活動を元の物まで下げる。

 いや、それよりも悲鳴が重要だ。

 女の悲鳴だったけど同じ場所から金属が擦れる音とか何か重いもので地面を殴ったような音が聞こえていたからな。

 音の方向を見るとその場所に続いてると思われる道が少し遠くに見えた。

 道の方向から言って声の主は道沿いに居ると思う。


「行ってみる必要が有るよな、上手く行けば色々と情報も聞けそうだし」


 そんな訳で音の方向に行くことを決めた俺は先ず道に向かってから整備されて歩きやすい道を進んだ。

 数十秒の徒歩を終えると目の前には……


「明らかに間に合ってないな、まあ生き残りが居れば情報提供頼むだけだよな」


 目の前には粉砕された、アレは馬車かな?

 まあ粉々では無いけど見た目瓦礫みたいな木の塊だな。

 それと近くに明らかに死んでるっぽい奴等が沢山居る。

 そいつらは潰されてたり斬られてたり、その2卓で殺されているな。

 武装してたようで潰れた鎧とか決断された鎧が潰れた死体に着せられている。

 総数は34人くらいかな?

 他にも三体くらいの豚が伸びてる。

 これはオークって奴だよな?

 コイツの仲間に殺されたのか。


「それにしても凄まじいな、凄い力だったらしい……」


 呟くと俺は馬車?に近付き瓦礫を退かして生存者を探す。

 それなりに大きいから時間がかかる、と思ってたけど数分で終わった。

 得たものはボロい日記と貨幣と思われる長方形の紙が数種類、合計で250枚だ。

 それと、赤子も見付けてる。

 頭は座ってるし見た目的にも少し成長してるし二歳位かな?

 その赤子は息があって変な板を抱えて寝てる。

 木製の板なんだが読めない文字で何か書かれている。

 残りは大きな鞄と箱に詰められた空色の液体が入ったフラスコみたいな細い瓶。

 あと子供のと同じ板が三枚落ちてる。


「取り敢えず全部鞄に入れとくか。赤子は、見殺しも寝覚めが悪いし連れていくしか無いよな……」


 言うと俺は日記と紙、大量の瓶が入った箱を鞄に詰めて赤子を抱き抱え歩き出した。

 現場の違和感にも気付かずに……

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