第3話 『生命論』

 鹿は高さ3メートル程度の巨体で横幅は0.5メートル程と大きすぎる。

 俺は草の影を匍匐で歩きつつ手を伸ばせば鹿の足を触れる程度の距離まで接近し、同時に地面を強く蹴って距離を詰めると足を掴み力業で上へ自分を飛ばした。

 直ぐに胴体の真上へ到達した俺は脳のリミッターを0.0005%から0.002%に上げて拳を握る。

 俺の存在に気付いたらしく暴れようとする頃には背中に着地して拳を引き絞っている。


「プゥゥゥゥゥゥゥ!!」

「巨体に利点は多くないって知ってるか?」


 暴れる鹿の毛を掴みつつ体の体制を調整して、拳を鹿の背中へ放った。

 放たれた拳は鹿の背中から腹に続く大きな窪みを生み、同時に鹿は命尽きた。


「うん、能力は寧ろ上がってそうな印象だ」


 鹿の背中を飛び降りた俺は右手をグーパーして呟くと鹿の頭と首を挟んで胴体に続く付け根部分を押さえて強く其々に外側へに力を加えた。

 すると首の中間部分で綺麗に切断されてくれた。

 すると首の部分断片の両方から大量の血が流れる。


「これで有ってるのかな血抜きって?」


 不十分な知識だから俺も自信がないけど……

 まあ仕方ないよな。

 血が出なくなるまで待機ってのは有ってると思うし。

 まあその間は暇だし俺の脳に関してでも語ろうじゃん?

 まあ誰に向けてかは知らないけど。

 もしも例の幼女が思考とか読んでたら恐怖でも感じてくれそうだし。

 え~と、たぶん分かってると思うし前にも言ったけど俺の脳は普通と比較してどの程度違うのかって言うと平均的な脳は日常生活で20%前後は使ってるんじゃないかな出力?

 でも俺が他に会わせた力を出すなら0.0002%だ。

 ホントに異常だと分かるだろうか?

 つまり常人の100%は俺の0.001%な訳だから。

 其を踏まえた上で認識上の時間を1/5にするとき使う出力、何%だと思うだろうか?

 たぶん殆どは0.001%前後で答えると思う。

 単純な計算で0.0002%×5=0.001だからな。

 でも違う。

 必要とする脳の活動領域は1,25%だ。

 何故なら身体中のリミッターが勝手に連結するし連結させない理由もないからな。

 って言うか実際に他のリミッターを維持した状態で目だけの感覚を強化しちゃうと認識との齟齬(そご)で余計な負担が他の部位に掛かってしまう。

 つまり部分的な強化時は肉体が追い付けなくて色々な部位に異常が起こる。

 っと言うか実際に心臓の一部が破裂して移植した経験もある。

 その時強化したのは身体能力だ。

 まあ、そんな感じかな俺の説明は。

 あ、因みに俺の心臓は姉が提供した物だ。

 姉は元々が体の弱い人だったし、当時は余命が一年未満だったからな。

 だったら未来有る俺が使えって姉自信が言ってくれた。

 そんな物だから部分強化とか絶対にしないかな俺は。


「だから、まあ死ぬことだけは避けなきゃだよな」


 俺は自分の価値を認識することが下手だ。

 昔から一定以上の有効性を持つ人間は常に俺の中で全ての優先順位が高かった。

 今も同じだから過去形じゃないけど。

 まあそんな訳で俺が未来を歩く理由に一人称視点は介在しない。

 俺が生きるのは姉、西城(さいじょう) 濂(れん)の心臓が活動を停止しない為だ。

 決して俺、晴輝(はるき)が理由じゃない。

 実際俺の中で心臓以外に人体を構築する物には何の興味もないし。

 「自分の為に生きてね」とゆうのは姉の遺言だ。

 其を義務的に全うするのが今の俺だし何の異論もない。

 何故なら俺の中で姉が優先順位1位なのだから。

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