第2話


「それで、どうするんだ?後一日も無いぜ」

「半日はあるさ。いろいろと準備をしなければね」

 ツェントラールの中央通りを、黒一色のロールスが走る。型落ちのシルバー・ゴーストだが、『アルパイン・イーグル』の名を持つ高性能モデルだけあって、快速そのものだ。

「準備?」

「そう、準備。このご時世、徒手空拳の強盗なんて居る筈が無いだろう?」

「そりゃそうだが・・・」

「おまけに連中、警察にしっかりマークされてる上であの犯行声明だ。僕だって命は惜しいさ、諸々の事情があってもね。それに」

「何だ」

 少女は悲しそうな顔の後、ふと笑って言った。

「紙幣は少し位穴が空いても、使えるって言うじゃないか」


「ようチャーリー、久々だな」

「旦那、それに奥方も。何年振りですか」

 街中から、路地を一本入った先。ひっそりと佇む店があった。『カロンドン銃砲店』。二人が長く懇意にしている店である。

「最近は、中々大事が少なくてな。入り用が無かった」

「・・・ということは」

「ああ、派手になる。今度の相手はギャングだ」

「成程、そいつは入り用だ」

 店主は笑いながら言った。

「最近ウチもそればかりで。急に治安の悪さが増したもんだから、書き入れ時って奴なんですよ」

「俺たちゃ連中の同類だぜ」

「まさか。お二方は悪ぶってるだけですよ、良い意味でね。・・・本当のワルってのは、そんな良心の呵責なんてミリも感じないもんです」

「そうだといいがな・・・それでだ」

「入り用ですね。お任せを」

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ツェントラール'32 猫町大五 @zack0913

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