第6話「幼馴染とテニス」

「それじゃぁ、冬子さんと試合するから、大地、あんたは審判ね」

「大地はお姉ちゃんと春咲さんのどっちを応援するのかな?」

「……どっちも」

『優柔不断』と二人から白い目で見られた。

どうしてこうなったんだろう?


「大地、部活でソフトテニスやってるんだってね?」

リビングでテレビを見ていた俺は冬姉から声をかけられた。

どうも彼女はそわそわしてるようだった。

「私もやってたのよ。ソフトテニス。中学の頃にね」

「俺のところは高校にもあるんだよ」

俺の通う高校では軟式テニスだった。

他校ではソフトテニスが多い。

「せっかくだから、テニスしようよ!お姉ちゃん負けないよ」

市民体育館のそばにテニスコートがある。

まだ、正月休みだったので、体育館は借りられない。

学校も休みだが、そっちでテニスコートを借りることにした。

ラケットとボールはある。冬姉もラケットを持っていたので、二人で学校に行った。

冬姉のラケットをチラッと見たが、ガットの張りが弛んでることもなく手入れされてることに気づいた。


「大地、その人誰?」

テニスコートには幼馴染の春咲葵はるさきあおいがいた。

一人でサーブやボレーやバックハンドの練習をしていた。

「葵、この人はうちの店で住み込みで働いてる、青空冬子さんだよ。

「初めまして、春咲葵と言います。大地とは保育園からの幼馴染です」

「春咲さんよろしくね」

「住み込みって大地の家で一緒に住んでるの?」

「そうだよ。クリスマスからお世話になってる」

「どおりで最近、自主練に来ないはずだね」

俺と葵の二人でいつも自主練を欠かさずしていた。

ソフトテニスは中学の時に葵に誘われて始めた。

俺たちが二人で自主練するものだから、中学の時は周りにからかわれた。

それでも、俺は葵のことを異性として気にすることなく必死で練習をした。

葵も俺のやる気があることがわかってか、カップルと言われても冷静な対応をしていた。

俺も葵も県大会出場レベルだ。

「年末は休んでいいだろう。今日は来たんだしさ」

「青空さんとテニスしに来たんでしょ?」「三人でやろうと思ったんだよ。ダメか?」

「青空さん」

「冬子でいいわよ」

「冬子さん、一緒に試合をやりませんか?」

葵の眼差しは真剣だった。

冬姉と対戦することに拘ってるようにみえた。

「えぇ、楽しそうね」

こうして俺は審判となった。

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