第555話 むかしのおや



 歴史小説を読んでいると「なんなの? これ」と思うことがあるカヨさん。


 たとえば、わが子に対する両親の偏愛の摩訶不思議。(*´з`)


 平安末期、保元の乱の因となった藤原頼長(「悪左府」の仇名)に対する父・忠実の過度な贔屓は温厚な兄・忠通をひどく悲しませましたし、時代がくだって戦国期、長男・織田信長をさしおき次男・信行ばかり可愛がった母・土田御前の偏愛こそが、粗暴とも残虐とも言われる信長の性格を醸成しましたし、さらにくだって江戸時代、2代将軍・徳川秀忠とお江与ノ方夫妻は、生来の病弱で吃音のあった長男・家光より活発な次男・忠長を偏愛したため、愚かにも親自らがお家騒動を引き起こしました。


 何より罪深いと思うのは、親の愛に恵まれなかった子どもが、後年、寄ってしかるべく起こされた紛争の際、「ひょっとして自分という人間は人がわるいのでは?」と謂れのない罪悪感を抱くこと……まことにもって、愚かな親の罪は重いですよね~。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る