第12話 さんぽ
知り合いの老婦人が地面すれすれに腰をかがめて歩いている。
すぐかたわらを、侍従をしたがえる主のように悠然と進む猫。
――なにをなさっているの?
――ジジを散歩させてるの。
ババが、ジジを散歩、ねえ。
噴き出すのはカヨさんだけで、ご本人&ご本猫はいたって澄ましたもの。
どこかへ行ってしまわないようお腹の皮を摘んで散歩させているらしい。
――犬のようにリードを付けたら?
余計なお節介が口をついて出かかったが、危ういところで呑み込んだ。
人も猫も余生の域に達しているんだからどうとでも好きにしたらいい。
ずっとそんな不自然な姿勢で大丈夫かと訊ねると、
――大丈夫。あたしね、むかしから腰は丈夫なの。
奇妙な散歩の一対は、ゆっくりと角を曲って行った。
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