第9話 悩み相談からの自爆

「だそうです、って何なんだ……」


 教室に着いた俺は自分の席で呟く。何故かと言うと、未だに朝の出来事で頭の中は混乱中だからだ。

 年頃の男女が二人きりになるのは、親が止めるか辞めさせるものだと思ってた。もしくは隠れて……とか。

 なのになんで莉子ん家はあんなにオープンなんだ? ……いや、信用されてると思えばいいのか。いやでも、莉子のお母さんとはまだ二回しか会ってないんだけどなぁ。たとえ家で亜子の話のついでに俺の事を聞いていたとしてもさすがに……。


 ダメだ。考えてもわからない。いや、そもそもそこまで深く考える必要もないんだよな。俺と莉子はそんな関係じゃないんだし。犬の名前を決めるだけだもんな。よし、すこし頭がスッキリした。とりあえずは明日だ。明日になればわかる事だ。ただの冗談かもしれないし。……一応箱菓子くらいは持っていこう。うん。


 ◇◇◇


 今日の昼は亜子から何も連絡を貰わなかったから、いつも通りに教室で食べる。

 いつからかは覚えてないけど、俺と千紗の席が前後で近い為、そこに大輝が椅子を持って来て三人で食べる事になった。

 以前、千紗には「男二人の所に女一人だけで来て大丈夫なのか? なんか言われないのか?」って聞いたことがあるが、帰ってきた返事は「だいじょぶ。何も言われないしみんな仲良くしてくれてるもん。むしろ凄い笑顔で見送られてるもん。何でかはわかんないけど」との事。さすがマスコットキャラ。


 そして俺と千紗が机をくっつけて、その上に弁当をおいて大輝を待つが一向に来ない。目の前に座る千紗はすでに蓋を開け、ミートボールに向かってやけに可愛らしいフォークを伸ばしていた。


「千紗、大輝は?」

「大輝かい? そう言えばなんか生徒会の集まりがあるとか言ってたね。それじゃないかな?」

「ほーん。忙しいんだな。さすが副会長。俺には無理だや」


 大輝は新年度最初の生徒会役員選挙で見事に当選し、いまではこの高校の副会長だ。ノリで「俺出るわー!」って言って、まさかホントに当選するとは思わなかったな。俺は大輝みたいにアグレッシブに動けないからな。凄いよホント。


「別にいいじゃない。 大輝は大輝。和臣は和臣で」

「まぁな。てかむしろ、生徒会役員なんて頼まれてもやりたくない」

「それよりも和臣、朝から結構ため息ついてたけど、何か悩み事でもあるのかな? 私で良かったら話聞くけど?」


 ミートボールの次は、海苔で子供に人気なアニメの顔を模したおにぎりを食べながら、千紗がそんな事を言ってくる。

 ……千紗に聞いてみるか。


「なぁ、もし俺が千紗の家に両親とかがいない時に行くって言ったらどう思う? もちろん家にはその間二人きりな」

「……ふえっ!? 来たいの!? え、待って! 部屋掃除してからじゃないとだめぇぇ! あ、あの写真とかも隠さないと……。布団を埋めてる人形とかも隠さないと……」

「写真って?」

「それはもちろん和……って教えないよ〜だ! べ〜!」

「布団をぬいぐるみに占領されてるのか?」

「せ、占領されてないしっ! 千紗の寝る分のスペースは余裕であるしぃ〜!」

「そもそもこれは例え話なんだけど?」

「…………早く言ってよ!!」


 最初から言ってるってば。

 そっちが勝手に自爆してきたんだよな?

 それにしても写真ねぇ……。好きな人の写真でも置いてるのかな?

 そういえば、千紗からそんな話は聞いたことないな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る