第29話 ゲテモノ喰い - 2
食人花をつまみ上げたギースは、それにポットの湯をぶっ掛けて洗う。
職人技というやつだろう、動きに迷いはない。
俺はこの、飯を作る人間の見せる動きがいっとう好きだった。
流れるような手捌きと、どんどん切り込まれていく食材の華やかさ、同時に生まれる音たちの饗宴ともいえる。
(そうだね、これは、美しいと評すしかない。)
自分の前で誰かが料理をすることは無かったのだろうか。
それは残念なことだ、ぜひマグロの解体ショーなど見せて差し上げたいところである。
(……しかし、驚いたな…………)
何がだろう。神様が驚くようなことはこれといってなかったと思うのだけれども。
(その料理人のことさ。彼は、すぐ直前までブレンシアの調理を渋っていただろう? だのに、ゲテモノと言いながらもいまはそれだ! これはいったいどういうことだい?)
…きちんとした美食ばかり口にしてきたのか、あるいは聞きたかったけれど聞く相手がいなかったのか。
俺は、味が染み込みやすくするためか新鮮なウサギの肉全体を針で刺しているギースをちらりと見る。
食人花だったはずの物体に、今やその面影はない。
かれら料理人の料理への想いというものは、凄まじい熱意を持っているのだと思う。つまりはプライド、意地であった。
(プライド…意地か。それを刺激されて、彼はキミに手玉に取られたというわけか!)
未知の“食べ物”に興味を引かれたというのも十分あるだろうけど、大体は。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます