跳ねるウサギ(肉)のエトセトラ
第26話 跳ねるウサギのエトセトラ
単調な道程に、俺は欠伸をした。行けども行けども見えるのは平原で、家の影すら見えない。
代わりに耳を楽しませていた鳥人たちの声も、遥か高くに消えてしまった。
あるのはただ、真っ平らな緑色と昼の空だけである。
「おいヒコ、気抜くと“落ちる”ぞ」
「…分かってるけどさ……」
(無理もないよ、ワタシもいい加減飽きてきたところだ。彼はよく歩けるものだね)
彼、と言われ、俺は斜め前を悠然と歩く青年の黒い背中を見る。
ある程度馴らされた草葉を踏みつけ直すこの青年は、ギース=ダバグ──くだんの奴隷である。
彼の、彼にとっては最重要事項だった問いかけを聞いて、俺はまずピエブさんを見た。
頷きが返ってきたのを見て、俺はてらいなくイエスを返した。
その時の彼の、拍子の抜けたような顔はこの先そう見れないだろう。
つまりは俺は彼、ギース=ダバグを雇ったのだ。奴隷の名目ながら対等な存在として。用心棒兼、料理人として。
「…にしても、ヒコももの好きだなァ。俺に料理の腕を聞いたのはあんたが初めてだぜ」
「何を言う。大事だろ」
「まぁな。ま、期待してろよ。今からその美味いものが……っと! いたぞ」
伏せるよう言われ、俺は比較的背の高い草に身を隠す。
ススキのように黄色いが、形はチューリップ、の花のないバージョンだ。
「ギー、大丈夫なのか」
「ああよ。すぐ終わる」
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