第25話 檻の中のロースタ - 2

隣ではピエブさんがそのプロフィールを読み上げていた。

鈍器になりそうな分厚さの本だが、そんなに奴隷がいるのか、あるいは奴隷の状態をそれほどしっかり書いているのか。


「ギース=ダバグ。孤児上がりの傭兵です。腕は立ちますがご覧の通り柄は悪い。信仰する神は無し、価格は……これはヒコ様には関係はありませんが、」

「“様”ァ? 珍しいなそんな呼び方をするのは。よっぽど高位の出か?」


割り込んできた青年は最初の無関心とは対照的に、興味深そうに俺を見た。


「価格は関係ないってんなら貴族じゃないな、平民にも見えない。ツケで払ってる相手…もない。なら流浪の民か。どんな恩を売ったんだよ御主人」


揶揄するような言いようは変わらないが言葉の色が違う。バカにしたような感じはないし、単純な興味のようだった。

だから俺は彼に事の経緯を話すことにした。もちろん神様のことは伏せて。

俺はすっかり、この青年を面白く思っていたのだ。




五分ほどに濃縮した話を聞いて、彼から帰ってきたのは意外にも爆笑などではなく、静かな眼差しだった。


「差別をしないって?」

「セ界の…神様を基準にしたものは、だ。別にまるっきりしない聖人じゃない」


(うまかったから、とは言わないのだね)


この奴隷らしくもない青年が、そういう言葉を求めているのではないのは俺にもわかる。

会話のキャッチボールができる相手ならば、いいボールを投げないといけない。


青年は眼差しはそのまま、口端を上げて俺に問うた。


「俺が傭兵じゃなく料理人だ、と言っても?」

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