第24話 檻の中のロースタ - 1
夜も更けつつあるので檻の周りにはぼんやりと明かりが灯っている。
普通の街灯なのが逆に不思議だ。
檻の中の生き物は多種多様で、見ていて飽きない。それは彼ら奴隷が気ままに過ごしているのもあるだろう。窮屈そうな様子はない。
こちらに唸ってみせたキメラじみた動物の鎖は、檻を一周しても足りないくらい長かった。
サーカスのキャラバンのような檻を見て回る中で、俺は一人のヒト種を見つけた。
魚人やら大蛇やらがいる中で、意外とヒト種は少ない。動物相手でもコミュニケーションはとれるが、ヒトならばなお楽なのは自明だ。
俺はピエブさんに言って、その檻を“持ってきて”貰う。音もなく到着した硬質な檻には、俺より5歳ほど歳上の青年がいる。
「コイツは力は強いんですが経歴が酷くてね。雇用主の性格が気に入らないとかで何度も帰ってきているんです。ガタイがいいので人気が途切れないのが救いですね」
「……あんたが次のゴシュジンサマか? ヒョロいな」
「…おまけに口も悪いものですから」
呆れたように、ピエブさんが檻を揺らす。驚いた事に床が揺れているのに彼は転がりもしない。
頑強なのは見た目ばかりでは無い、ということか。
(フム。フム。フム! いいね、魔力などは無いが、いい物件ではないかと思うよ)
神様の声が弾む。今まで黙って見ていたので、この青年の番が来るのを待っていたのかもしれない。
人に対する把握能力が高い神様のお墨付きならば決まったも同然だ、が、俺もきちんと見極めることは大事である。
俺は赤銅色のつり目─といっても、整った形の─を眇めてこちらを見る青年を観察する。
垢抜けた茶髪だ。真っ黒なインナーはすらりとした八分袖のタートルネックで、パンツも足首までしっかりと覆っている。
肌はほぼ俺と同じか、少し焼けているくらい。
奴隷だと言うにはやけに着込んでいるが、そのあたりに事情があるのだろうか。
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