第21話 お菓子な世界 - 2
そして。そして、である。
(セ界の食べ物は美味しい、ということ)
そう。そうです。神様に聞くところによると天上で食べたトウモロコシは下界のものだった。
つまりあれレベルの美味い飯がゴロゴロと…ではないが存在しているのだ。
現に摘んでいるお菓子がすこぶる旨い。
ギモーブというお菓子を知っているだろうか。フランスの伝統的な砂糖菓子で、ふにふにとした食感が特徴の。
あちらでは確か、マシュマロと同義であったはずだが、こちらはマシュマロと違って卵白を使用せずゼラチンを使用している。
スッとした淡い口溶けとフルーティな香りを楽しみながら、セ界にもゼラチンのような便利なものはあるのだろうか、あるんだろうなと思う。
「おや、おやおや…フルヴがお気に召しましたかな」
「もぐっ……ンン、そうですね、とても。これは高級なやつだったりします?」
「いえ。家庭で作れるものですよ。家内の手製ですが、そう言っていただけると嬉しいですね」
いい奥さんがいるようだ。なんとも魅力的なこの菓子のようなひとなのだろう。
つまんだ瞬間に解けるような繊細な口触りとシンプルな色合いをひと通り楽しんだ後、俺はピエブさんに向かい姿勢をただし、深々と礼をした。
彼は境界が曖昧な首を傾げる。
「ヒコ様?」
「本当に、ありがとうございます。そういう人間が一定数いるとはいえ、身寄りのない俺に親切に接してくれて」
二時間にも及ぶ会話は、仕事を中断しての時間としては長かったに違いない。
加えて旨い食事まで提供してくれた。
「わたくしはしたいことをしただけですよ」
「それでも。感謝しています。ピエブさんがいなかったら分からないことだらけでした」
例を尽くされたなら、同じ質量かそれ以上で返す。当たり前のことだ。
けれど今の俺には渡せるものが何も無い。
何かないだろうか、何か………
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