第16話 パックたこ焼き - 2
当たり前のことだ、というふうに神様が声をかけてきた。
(同種以外ならば食べても構わないとも。そうでなければ我々は何も食べられなくなってしまうだろう?)
たしかに。俺たちは豚も牛も、鯨も蜂の子さえも食べる。それらは須らく同じ立場、食って食われる関係なのである。勿論、俺たちヒトも。
それはとても、日本人の…というより俺の気風に合った。
じゃあなんでと思えば、帰ってきたのはにこやかな笑み──おそらくにこやかな笑みであろう表情。
ピエブさんの表情は主に目が物を言う。
「素晴らしい担力、そして平等性ですな。大抵の民はわたくしの容姿を厭うものです」
「それは…なんでまた?」
ヨーロッパ圏の国でもあるまいし。
「わたくしの見た目は…技巧神様の怨敵に酷似しているのです。わたくしの他の同属が十数人しかいないのが災いしまして…」
「…迫害されてる、と」
「……迫害、とまではいきませんよ。そこまでしては、彼女への侮辱になりますから…ただ距離を取られるだけです」
(ほう……tosité ekukỹ xảonikvirt。天神だね。たしかあれは『彼』だったはずだが…まぁ些細なことか)
ピエブさんの二本目と四本目の触腕が、アメリカ系の人たちがやるようなお手上げポーズになる。
迫害ではないと彼は言っているが、これはカンペキに宗教的迫害だろう。
いかんせん人格があってしまうものだからそういうかたちになるのだ。言葉を介さない海産物を避けようとは思わない。
「ま、でも俺はそうじゃないと思いますよ。ウチの神様は…」
(フム。特に思い入れはないね)
「タコを嫌いではないそうなんで」
というか普通に召し上がっている。
「うちの、とは……一神教なのですか?」
「いや、バリバリの多神教ですけど…一番信用してる神様がいる、というか」
「……もしや、教会の方ですか! いや、それにしては…」
まーた聞きなれない言葉が出てきた。言語が同じなだけ…というか翻訳してもらえてなかったら死んでた。
文化が違いすぎる感がする。
ピエブさんが黙ってしまったので、俺は神様の講義を傾聴することにした。
(ワタシはキミと契約をして共にあるが、まれに神のほうが対象を気に入って上から言葉をかけることがあるのさ。
それが数回続けば教会に入れられる。力の無いコク民ならば強制的にね)
マジですか。
体のいい拉致監禁じゃないか…あ、でも入れられるってだけで、外には出られたり?
(あまりそういう例はないね。一生を協会で祈って過ごすのさ)
つまり全部俺、ならぬ全部教会な訳だ。
まさかそのような組織で自由に飯が食べられるというわけでもあるまい。
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