第15話 パックたこ焼き - 1

それで、とタコ──もといピエブさんは切り出した。粘着質な汗を、綿っぽいハンカチで拭っている。


俺はあれから、彼の3本目の触腕によって事務所だというテントに引っぱられていた。気分はまるで罪人である。


「それであなたは…お客様、でよろしいのですか?」


俺たちの座る4人がけのチェアセットは、見るからに来客用の綺麗なものだったが、丸い板の上にはそれに似つかわしくない物体が乗っている。


何ってたこ焼きだ。それもパックの。…これ、セ界からやってきたやつだったのか。


(もう一つしか残っていないがね)


「美味しかったです」

「はっ?」

「あ、間違えた」


ついつい口に出してしまう。

脳内会話も楽ではない。今度からはちゃんと心の中で会話をしなければ変人だと思われてしまう。


(キミは充分おかしなモノだと思うよ)


失礼な。神様もめちゃめちゃ喜んでいたくせに。


「……あー、たこ焼きについてはありがとうございました。これもしかして、ピエブさんの触腕ですか?」

「おや。…お気づきで」

「ええまぁ、火が通っても蛍光色なんて珍しいですし」

「気づかれているのに召し上がったのですか?」

「美味しかったんで…」


もしやダメだったのだろうか。

セ界のルールは分からないが「はいどうぞ」と出されたのでいいものかと。


俺は腹の底に溜まった特大の…手のひらサイズの爆弾たこ焼き三つを外側から撫でた。


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