第13話 胃袋・燃費不良気味

ともあれ、何をするにも先立つ物がなければ。願い事を記憶に全振りした俺は完全に身一つだ。


ありがたいことにビジュアルはそのまま(平凡な黒髪黒目に学ラン、靴はスポーツシューズ)だが、金目のものは特にないと言って差し支えないだろう。


(キミは、何か武道の心得があったりするのかな?)


「いえ……後悔先に立たず、ですね」


(フム、まぁ今それを言っても仕方が無いな。いきなり斬りかかられたりすることはないと思うが…)


そんな折である。

俺は道端に生えた花が蜜の出るアレに似ていたので手を伸ばしたのだが、


「…あ、あぶねぇ……………………」


逆に食われそうになった。

パッ●ンフラワーもかくやというスピードで食いつかれそうになった。このセ界の花、怖い。


(話は最後まで聞きたまえ)


「すみません…つい食欲が」


些細な行動が命取りになるということを身を持って知った俺は、慎重に、道の真ん中を歩いた。今のところ人は見かけない。

静かな町だ。


(…いや? 少し行ったところで人だかりがある)


「えっ、わかるんですか。俺の体なのに」


(感覚と処理能力の高さは比例しない、ということだよ。行ってみるといい)


「そうですね。他にやることもないですし…」


なにより、お腹がすいてきた。降りてきたせいか、それとも元々大食いだからか、異常に腹の減りが早い。


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