第7話 鍋を囲む天使

彼が目を見開いた。


「驚いた! 正解だよ。全く逆の結論に辿り着いた者はいたのだけれどね、当てられたのは初めてだ」

「先読みまでできるんですか」


答えをいう前に正解と言われる、なんて経験はなかなか出来るものではない。


「気になってしまってね。しっかりと理論立てられた推理だったよ。

そう、ワタシたちがホシに、回収以外で干渉することが出来ないのは『こちらの文明を漏らさないため』さ。数百年前、それをして位を落とされた天神がきっかけでね」


俺の考えていたことを1字1句間違えずに繰り返し、補足まで付け加えてくれる。


それから、御褒美に君からの質問を受けよう! と心底嬉しそうに言った。

心なしか暖かくなった周囲の温度にちょっと笑って、俺はその厚意に甘えることにする。

聞きたいことは有り余るほどあるのだ。もちろん、すべて聞こうとは思わないけれど。


「この…世界、の言語と俺の言語は違うんですよね」


気になっていたことだ。彼がワタシとかキミとか、セ界という単語を口にするたびに感じていた違和感。

発音がズレているのに、意味としては伝わっている、という。


「その通りさ。キミとのコミュニケーションにはセ界のうち最大の国の公用語を使っている。キミも一時的にだが理解できるようになっているのさ。」


理解できるように、ということは、俺の話しているのもそうらしい。

……もしかして、これはボーナスステージみたいなもので、「降りる」ときにはあちらの言語がわからないまま、とかなのか?

それは…怖いな。


「พระrds ofeu w xthe go ds เdes dicจ้าข he องvalo……古の詞というのだが、ワタシたちがよく使うのはこれだが、キミには聞き取れないだろう?」

「そうですね、意味のわからない単語の羅列に聞こえます。…ところでワタシたち、ということは、他にも神様がいらっしゃるんですね」


「そうとも。神には階位がある。セ界を生み出した産神、1番目の子でありセ界を司る天神、次に大神だ。主教会が崇める主神は天神に当たる。そういいものでもないのだがね。

それぞれの神は第何席と呼ばれているが──まぁそこはまだ必要ないかな?」


…天使か、もしくは悪魔の序列を思い出される仕組みである。

そもそも他の星に対する規約などがある時点で多神教だとは思っていたけれど(他に神が居ないのならばそのようなものは必要ない)、随分と組織立っている。


「じゃあ神様は大神ですか」

「よく分かったね」


ぽつりと口に出してしまってから、大それたことを言ったことに気が付いた。

ほんとうに寛容な神様である。そういう所も御遣いかと思った所以なのだが。


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