第6話 スフィンクスってブッシュドノエルに似ている

神様がにまにまとしたその表情のまま、鍋を放ったらかしてちゃぶ台に戻ってくる。

火はと言えば、勝手にとろ火になっていた。


「興味心旺盛なのはいいことだ。特に問題は無いし言ってもいいんだが…当ててみるかい?」


スフィンクスに見られるように、神的存在には謎かけが好きな者が多い。

それは彼らが永すぎる時間を生きてきた事の証左であり、弊害だ。

この人の良い神様になら、付き合ってみてもいいだろう、と思う。

この雰囲気だと間違えても殺されたりすることは無い…はずだ。


「殺したりしないさ。そもそもキミはもう死んでいるだろう?」


確かに、今のはブラックジョークにすぎた。

まだ死んだという感覚が薄いからか?

痛みがないからかも。


そんなことを考えながら謎キッチンの方を見る。情報はこの空間と、目の前の美男が言ったことのみ。

少ないな、とは思うが、想像くらいはできるだろう。


まず、ここが神域と呼べるような場所だと仮定する。

天国では無いが、天上の世界であることには違いない。

証拠に尻の下に感じる雲の感触はデパートで飾られていた豪華なベッドよりずっと質のいいものだ。


そんな場所にある、あの異質な機械。ここが神様のためのものだというなら、あれだってもっと適した形であってもいいはずだ。

ならばあのキッチンは、この人の言うセ界から持ってきたものではなかろうか。


そうだとすると、この世界はこの世界で独自の文化が成り立っていて、しかも俺の元の世界よりずっと高水準だと推察できる。


何せ、コンロに置いている筈の鍋が浮いていて、火をつけるためのスイッチすら見当たらないのだ。

全自動、は機械の最終的な理想だということは周知の事実だ。


これから鑑みるに、おそらくこの問の答えは──


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