第5話 鍋がご機嫌に鳴いている

そこで、俺は、鍋をコンロに置いている彼の背中に質問を投げる。

ずっと気になっていたこと。

俺がここにいる理由だ。


「それで…仕事、というのは?」

「聞きたいかい」

「はい。知らないと、どう行動すればいいのかわかりませんから」


この質問はほぼ賭けだった。

彼が純粋に神なのだとすれば──いや、そうであるので、行き過ぎたことを聞けば唾棄される可能性は低くない。

それでも俺には彼の沸点がわからないのだから、質問をするしかないのだ。


水っぽい匂いがあたりに漂う。俺は緊張に指を握り込んだ。


「構わないさ。全くね。そうだな、茹だるまでに結構な時間がかかる。その間に話をしよう」


機嫌は損ねなかったと見える。

そう言って彼は鍋に、どこから取り出したのか多めに塩を入れて、グツグツ茹でている。

にわかにいい香りがしてきて口元が緩む。


「と言ってもそう長くもない話だよ。ワタシたちのセ界は君たちのギンガ群の中央に位置している。私のような神は君たちの…そうだな、魂と言えるべきものを回収してこの世界に植えているのさ。」


養殖業みたいな感じか。

神様がそんなものをしているのは意外だが、ここではそういうものらしい。


つまりここは他の世界…神様が言うには数ある銀河の中心、であって天国ではないということだ。


「ああ…じゃあ俺は死んでいるんですね」


ご都合主義的にあちらに身体だけ置いてきた、とかならいいんだが。

別に俺を心配するような家族なんかもいないのだけれど、行方不明っていうのは周囲に迷惑がかかりすぎる。


「そうだね。少なくともキミのホシではそういうことになっているはずだ、と言っておこう。というのもワタシたちはキミたちのホシでのことに干渉することが出来ない。キミたちを吸い上げることしか出来ないのだよ。残念なことにね」

「……何でですか?」


神様がにまり、と笑みを作り、こちらを振り向いた。


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