13. 接ぎ木、高鳴り
彼女を見つけたのは誰もいなくなった劇場だった。
まさかと思って覗くにとどめるつもりだった場所。午後の公演はとっくに終わっていて、入り口警備の魔杖士すらうたたねをしている始末。
そんな寒々しいステージにシャラと、その傍らに
「あっ」
入ってきたエレベアを認めるとシャラはさっとその人影に身を隠す。
「こないでくださいっ!」
さらに目視されたとみるや言葉の壁をとばしてきた。ぎしり、と関節が固まりエレベアの足が止まる。
「シャラ……ええと、ちがうのよあれは」
「違いませんっ!」
人影はスジ張った長身に黒紫のドレス。その陰に
「わたしは、エレベアさんがおばあ様からもらった大切なものを傷つけてしまいました。そう仕向けられたのにも気付かずに」
影へ
「わたしに武芸のことはわかりません。ですがわたしと居るほどエレベアさんの技はおばあ様のそれから遠ざかります。それは良くないことです」
「……構わな――」
「よくありません!」
苛立ちがつのる。人がせっかく苦心してフォローを絞り出したというのに。というか何だその、他人行儀なわりに出鼻を挫いてくる押しの強さは。
「わたしも母から受け継いだ踊りを大切に思っています。……いえ、いました。エレベアさんにとってもおばあ様の技は何にも代えられないもの、でしょう?」
「……えぇ、そうね」
間違いない。だからこそそれが知らぬ間に別の何かへと置き換わっていたという今の状況は許しがたいものがあった。でも。
「これ以上の迷惑はかけられません」
「よく言うわ、アタシから逃げたいだけのクセに」
いい子ぶった言い回しにいい加減頭にきて言い放つ。
「結局、負い目をもって誰かのそばにいるのがイヤなんでしょう。いつもチヤホヤされていたくって、ちょっとでも評価が下がれば次の場所。お尻が軽くて結構ね」
「なぁ――っ」
眉をつりあげてこちらをのぞいた顔と目が合う。ただそれだけのことが嬉しかった。
シャラがしまったという顔をする。こういうやり合いならエレベアに利があった。
「そうでしょう。違うっていうならちゃんと謝ったら? そんな所から見下ろさずにこっちへ来てね」
「や、やっぱり怒ってるんじゃないですかっ嘘つき!」
「誰も怒ってないなんて言ってないでしょ!」
許せないのは自分の迂闊さと、シャラへそうするよう仕向けた人間。それにまるで自分も共犯でしたとばかりに遁走を決め込んだシャラに対してもわずかばかり。
「知らなかったんです、わたしだって!」
「最初からそう言えばいいのよ、で?」
言いわけは大歓迎だ。その上でどういう了見でそこにいるのかと目で問う。
「だ、だから、話をきかないとと思って……そしたらここに入っていく主様をみかけて」
「主様」
シャラがさっきから
老いた男だった。いや、らしいといった方が適切だろうか。筋骨隆々で姿勢のいい肉体を華やかなドレスと濃い化粧で飾っている。隠しきれないのは顔の皺と広い肩幅。
紅く
後宮とは、という疑問がかすめたもののひとまず置いた。
「それで……」
シャラは口ごもった。
全身が緊張する。エレベアにはこの状況の危うさが分かりつつあった。
「アタシを見逃すように頼んだってわけ?」
「っ」
シャラが肩を震わせる。最悪だ。今の状態で返り討ちなど望むべくもない。
「ハイサムを差し向けたのもアンタね。名乗りなさい、イーリスに
「ライハーン・バダ・アブドゥラ・サッダーム」
古木のごとき体躯からしゃがれた声が押し出される。
「ハイサムを倒したようだの。さすがはイステラーハの娘というべきか」
まるで友の子にでもあたるように老翁は
「いやはや、あれも我が孫にしては才気のないことよ。もっとも才の無い者同士、イーリスの長男坊とは気が合うじゃろうて。ときに……」
乾いた血の色で糊塗された唇が醜悪に歯をむきだして
「
節ぶくれた指がシャラの髪を玩弄する。
怒りで身の毛が逆立つ感覚があった。こいつが自分をこんな不完全な物に変えた。彼女を使い、本流と偽って傍流たる己の技を植え付けた。
「全部アンタの仕業ってわけね。ハイサムを養子に送り込んだのも、お義兄さまをそそのかしておばあ様を閉じ込めたのも。アタシの技を滅茶苦茶にしたのも!」
「それは誤解ぞ、イステラーハの娘。かの女を幽閉したは妾の意にあらず。むしろようよう忌々しい後宮から解放されてみれば、怨敵は囚われの身と知って世を呪ったほどでな。だがそれもお前という存在を知って希望に変わった」
「黙りなさいッ」
杖を抜いた。もはや事情を知りたいとも思わなかった。必殺、それだけを心の
「クカカ、その
同じく半身に構えようとしたライハーンの腰に、頼りない細腕がしがみついていた。
「やめて、逃げてくださいエレベアさん!」
「イヤよ、アンタこそそいつから離れなさい」
意図はどうあれ老翁をかばうようなシャラに別方向の怒りが再燃する。熱した油を注がれたようにはぜる
「主様はあなたを殺すつもりです!」
「知ってるわ、分かりきったことを
「なぁ――っわたしはちょっとしか悪くないと思いますけど!?」
ほらみろ。本音がでたなと睨みつけるとシャラがひゃっと顔をひっこめる。
「アンタが逃げなきゃこんなところに来てないってのよ」
「そ、そもそもなんで追ってくるんですか! もういいじゃないですか、わたし役に立たないでしょう!?」
「それは……」
今度はこちらが言葉に窮する番だった。口にするのが
「シャラや、お前は優しい子だ。辛い役目を負わせたと思っているよ」
「主様……お願いします」
黙れ。お前がどんな善人の皮をかぶっていたかは知らないが、その本質は彼女とは交わるべくもない邪悪だ。
「これ以上もう見せたくはない」
シャラを一瞥した老翁がその手のひらを彼女の顔へとかざす。一条の暗黒が迸った。
『――
ぴくっと撫で肩が強張ったあと、そのままの姿勢でシャラは床へ倒れ込んだ。その有様が手折られた花のように見えて。
「シャ、ラああぁ――ッ!」
「クカカカッ! いい慟哭だ、けっこう!」
長躯が半身構えをとる。その踏み込みでステージの床が爆ぜた。
『――
破片を吹き飛ばして飛びたったのは
大きすぎる深紅の複眼から垂れ下がった
『
杖を沿えたのは胴。全身の産毛か逆立ち密度を増し、鋭い爪が壁に三つ穴を穿ちながらライハーンへと向かう。エレベアの瞳孔が蝕のごとく瞳の金を呑みこみ小刻みな獲物の軌道をとらえた。
「ィイニィアヴッ!」
獣の叫びをあげて先読みした軌道を客席ごと破砕する。行く手を塞がれたライハーンは寸前、変身を解いていた。
『――
即座に背を向け立ち上がったシルエットが隆々とした筋肉をみせつけるように頭上で手を合わせる。その円の内を短魔杖が踊っていた。
(ッコイツ、おばあ様と同じ――!)
開ききった瞳孔をあふれる白光が灼く。
変身を解いた体が回帰するより早く、側面で床を踏む甲高い音がした。
「そっ、こぉ!」
パシンと乾いた音と衝撃が右腋を襲う。落としたヒジで防いだ裏拳を、今度はこちらが支点にしてスピンする。
『『――
二つ巴のごとく、突風の
「さすがよなぁ、イステラーハの娘」
「チッ」
互いの
「妾の継いだ枝は充分に癒合したとみえる」
「うる、さいッ」
ビリビリと殺気を感じる。しかしそれ以上に嫌悪感をもよおすネバついた響きがその声にはあった。
「使いやすかろう妾の技は? イステラーハのものより?」
「黙れ!」
弾けるように両者は離れた。引き足と同時、杖をトスする。二人の身体が大きく沈み込み、伏した虎のように互いの挙動を睨んだ。
「っむ」
「そこっ!」
ギリギリまで見極め後の先をとる。体躯の小ささと柔軟性でより低みまで堪えられるエレベアが勝った。老翁が打ち上げたクラブを回り込むように、自身の杖と足を運ぶ。
「――
なぜか先回りしてある老翁の足。フェイントだ、誘導された。丸太のような蹴りを腹にうけ吹き飛ぶ。
「クカカ惜しいぞ! 陰杖流、
手を叩いて喜ぶ老翁。
破砕した客席から背中をひきはがした。ベリベリと嫌な音と痛みがある。
認めがたいことだが。シャラの踊りから見取った歩法はエレベアの戦い方を劇的に変えていた。
「おれぬよ、おれるものか。闘争にあって優れた技法をどうして使わずに。ならばお主の技はすでにイステラーハのそれではない。我が
「ッふざけないで!」
目の前の老人が鍛えたという恐るべき
「悦楽よ。これで妾が復讐の一方は成ったも同然」
老翁は心底やすらいだ表情をみせる。エレベアは自分がそのひと支えであろうことを嫌悪した。
にわかにホールの入り口が騒がしくなる。騒ぎを聞きつけた魔杖士と衛兵が
「
「アンタを殺してやる――!」
「もう会うこともあるまい、イステラーハの娘。だが覚えておけ。あの女が築いたもの育てたもの、すべて
言い終わるより早く老翁は黒風へと変じていた。それがホールの入り口へ殺到し、いくつもの怒号と魔光を生み出す。
ギッと奥歯をかみしめてそれを目で追った。まばたきひとつ後、背後で倒れたままのシャラへ駆け寄る。
「シャラ、大丈夫!? 起きて、シャラ!」
ぐったりした体をあちこち叩く。まだ温かい。ゆすると良くない気がしたが、だからといってそれ以上のことは分からない。
「ふざけないで、これで逃げたら本当に怒るわよ。ねえったら!」
混乱が山積していいかげん限界だった。自分の身の上だけでも手一杯なのにこのうえ他人の過去の因縁やら命の危機やらを背負うしかない現状にもう一段深く膝を着きたくなる。
「馬鹿! アタシをおいていかないで……!」
かわりにおでこを彼女のそれと重ねた。うなだれて目を閉じると夢の中にいるような気分になれた。
「ごめんなさい……なんて引き留めたらいいかわからなくてあんなこと。離れてほしくないの。馬鹿なのはアタシだわ、友達にこんな……最低……!」
吐いた端から言葉がありったけの気概や自尊心を奪っていくようだった。下がっていく心の温度に抗うようにまぶただけが熱っぽく震える。
「家族になってほしいと思ったの……アナタのために死ねたらいいって、ほんとうよ、おねがい……」
ふぅっと生温い息が耳の先をかすめた。
「シャラ、シャラ……ぁ?」
そっと頬に温かい手が触れる。うっすらと開いた目が見上げていた。
「……エレベア……さん、ひょっとして打たれ弱いって言われません?」
「――っ!」
かあっと相対的に触れた手の温度が下がった。その背中に腕を押し込んで、なるだけ雑にならないよう持ち上げる。
「このバカ、捕まって衛兵に引き渡されたくなかったら立ちなさい!」
「ぇ、ええっ立ちます立ちま、すにぁっ」
おぼつかなさげに持ち上がった腰を抱いてかませると強引に風へと変じる。入り口はすでに大騒ぎだったので取るものも取り合えずステージ方向へ突っ込んで通風孔へ逃れた。
そして。
――――――。
「わ~た~し~の一張羅ぁ~」
「うるっさい、あの状況じゃ仕方ないでしょーが!」
いつもの衣装室へもぐりこんだ二人は失った衣服のかわりを
「これなんかどう?」
掛け並べられた中から一着をひろげてシャラに合わせる。
「スケスケじゃないですか! こんなので歩いてたら捕まりますよ!」
「誰もハダカの上から着ろなんて言ってないわ」
「え、ぁ、わ、分かってますけどっ」
騒動のためかドア向こうの廊下がバタついたときは二人して息をひそめたが、今はそれも静かなもの。ひとまず街で歩いていても不自然でない衣装をそれぞれチョイスする。
「これ」
「わ、キレイな刺繍。でも入りますかね」
シャラは西方風のタイトで
「それ、お花がいっぱいですごく可愛いですよ!」
「大きい動きにくそう、パス」
「あぁん」
エレベアはサイズと足回りの自由度で迷ったあげく、初日に選んだ子役用のフリルドレスをかぶった。スカートを膨らませる骨具を入れればまあ何とか動けるだろう。砂漠向こうの服装ならささいな
羽つき帽子をかぶると広いつばで視界が狭まり、それだけでどっと眠気が押し寄せてきた。
「っはぁあー何なのよもうまったく」
ふたつの衣装掛けの間にうずまるようにして壁際に座り込む。
のぞきこむ遠慮がちな気配を感じて片目分だけ帽子をめくった。
「ぇ、えっと」
「座ったら? 人がいなくなってから出るんだから休憩よ休憩」
「し、失礼しますっ」
おずおずと隣に腰かけたシャラに内心で胸をなでおろす。横座りしたその膝を枕にした。このポジションは最近のお気に入りだ。
ぐい、と二つの手が拒否するように頭頂部を押す。
「……なに」
「いえそのぅ、こういうのもう良くないかなって……わたしもう、お役に立てませんし」
しょんぼりと、でも大して本気でそう思っていないことをエレベアは知っている。
「そういうの、いちいち言わないといけないわけ?」
「だ、大事なことですよ! わたしの踊りは、その……エレベアさんにとって」
「メンドくさい」
「ぇ」
けだるい身体を起こすとシャラを睨む。
「勝手に距離おいてるのはシャラの方でしょ。第一もう覚えちゃったものはどうしようもないじゃない」
「それは……」
そうですケド、と唇をとがらせるのをみてこの女はもう、と。
羽つき帽子をその顔面に押し付けると着たばかりのドレスを脱ぎ去る。
「わぷ、あ、あの、エレベアさん?」
衣擦れの音に釣られたようにのぞいた目がひ、と息を呑みつつ帽子で
「な、何を?」
「欲に訴えたほうが早いと思って」
「そそそんな、欲だなんてわ、ぁ……!」
「触りたいでしょ? アタシがこうするたびに物欲しげに見てたの知ってるわ」
「え、エレベアさんっ!」
いちおうのポーズ程度のためらいのあと伸びてきた手をひらりとかわした。
「あぁっ、そんなぁ」
「まずは他人行儀な呼び方から戻しましょうか。そしたらお手してあげる」
「ぇ、エレベア」
あまりにもチョロい、と若干あきれつつ四つ足で近寄るともったいぶって前足を差し出した。壊れ物にさわるようにそれがまさぐられる。
「ん……」
「ふぁあ、ふさふさ、フニフニです!」
されるに任せながらエレベアは自分の体のあちこちを舐めた。
「エレベア、怪我を……!」
「んぇ、たいしたことないわ。この姿だと治りも早いのよ」
肉体が求めるままに
シャラは触っていた肉球をそっと床へおろした。
「……あの、わたしやっぱり。――ひゃあっ?」
うつむいて何か言いかけたその上半身へ飛び掛かって押し倒す。金糸で大輪の華が
「いつまでもウジウジしないの。何がこようと平気だし、アナタの素性が知れないのは最初からだわ」
敵の弱味を握れるなら、と思い切って連れ出した。けれど今やそれも
「さっき、アタシの言いたいことは全部言った。それでも一人になりたいなら好きになさい」
その記憶は正直いますぐ消し去りたいほど勢いと
「……」
翠瞳がひるんだように揺れた。さまよいやがて決心したようにエレベアを見上げる。
「ひとつだけ約束して」
「いいわ、何?」
「わたしの為に死ぬ、なんて冗談でもいわないで。わたしはもう二度と置いていかれたくない」
祈るような声だった。どうだろう、と考える。まあ当分死ぬつもりはないが魔杖士は生き死にの世界だ。真剣勝負で技至らなければそういうこともある。
でもそれは口に出さなかった。
「約束する。まあ、いつかは死ぬでしょうけど」
ぐいと脇下を抱っこされ宙に浮かされる。ぷらんと支えを失った前足がどうにも寂しかった。
「むー」
「しょうがないでしょ人間なんだから。あと冗談じゃなくて本気の愛よ」
「あいっ……!? そういうことじゃ……!」
「シャラ」
ちくちくと胸を刺す、はぐらかした事への罪悪感こそ冗談のようだった。今度は自分がさっきのシャラのような声を出す番。
「アタシといっしょにいて」
どうにかそれだけ絞りだすと、大きな瞳がやがて耐えかねたようにそらされる。
「ズルいです」
「何が?」
「わたし、ネコの表情なんてわかりません。そんなふうに隠して言うのズルいじゃないですか」
「そっちぃ?」
妙なところに突っかかる。とはいえ確かにまあ、変身していてよかったと思ってしまった。
「――、」
「ぁ」
自分の
「……エレベア」
「なに」
「わたしいま、キュンってしました」
「黙ってよ」
安堵と高揚が呼吸とともに寄せ返す波のように意識をゆらす。
「むかし、母様が話してくれました」
何度か深い息を吐いたころ、ぽつりとシャラが言った。
「後宮の守り神の話です。昔、王宮にはある
ふくよかな乳房の奥向こうで反響するその声にエレベアは黙って耳を傾ける。
「争いが絶えてからも王は二匹の技と美しさを惜しんで手元に置き続けたそうです。いわく、男の鬼精には国の兵が戦うための技を。女の鬼精には宮女たちをより美しくする踊りを伝えるように、と」
ですが、と語りにわずかな陰が落ちる。
「女の鬼精がそれに異を唱えました。自分の方がより強いゆえに、武を
懐かしく感じる結びの決まり句でしめくくった話をなぜ今シャラがしたのか。
「その二匹の
「……母様は知っていたんだと思います。主様の過去を。なにかの機会にそれを訊ねたわたしに、直接言うのを避ける代わりにこの話をしてくれたんだと」
なるほど、ようやく全体像が見えてきた。
「負けて後宮に落とされた逆恨み、か。あの様子じゃまったく望んだことじゃなかったんでしょうね」
「わたしたちには本当に優しい主様だったんです。どうしてあんな……」
王命に従うフリをして復讐のための牙を研ぎ続けた。もし万が一、自分が無念の死を遂げたとしても秘奥だけは残るよう踊りに仕立て変えて。さらに何らかの手段で外と連絡をとり魔杖士としての後継をも育てた。
「おばあ様から奪うために」
それは気の遠くなるような執念と怨恨だった。今や自分もその一部となったことに思い至りぱっと身を起こす。
「わーっエレベアふ、服!」
(今や正道の
事態が急を要するのは最初からだがどうも風向きが変わってきた。イステラーハの身柄ひとつ確保できればよかったところを、杖流そのものが危うくなりつつある。イステラーハにとって己が磨き上げた樹生新杖流は半身も同じ。それが否定されるのは半生を喪うに等しいはず。
「ひとまず拠点を押さえないとマズいわね。シャラ」
「えっと下着下着……はい?」
次から次へとエレベアへ布切れをかぶせていたシャラがこっちを見る。その手をとって二本の短魔杖を握らせた。
「頼んでいいかしら。道場やぶりに興味ない? あるわよね? 協力して」
「はぁ。……はっ? ぇ、ええええ!? なになに何ですかこの杖!?」
「父親にひと泡吹かせたいって言ってたでしょう」
「
いいからいいから、と自分は事前に唱えた魔法で猫へ変じる。時間と、あとは体力勝負だ。いくらあっても足りはしない。
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