第3話 混ざり合う ②
その瞬間 酷い頭痛に苛まれた僕は、また意識を失ってしまったらしい。
らしい、と言うのは、僕が今その説明を受けているところだからだ。
なんでも 気を失って3日は経っているそうで、その間ずっと高熱が出ていたみたい。
高熱が出ていたかどうかは自分ではよく分かっていないのだが、その高熱が出ていたであろう間に、今までの『ボク』と『私』の記憶を夢で見せられていた。
父さんと母さんの元に生まれてから、凡そ12年と6ヶ月の記憶、そして30年と1日の記憶だ。
その記憶とは…
「おい、ソルト。ボーっとしてどうしたんだ。
…まだ熱が下がりきってないんだろうか…。大丈夫か?」
そう、僕の名前はソルトと言うんだそうだ。
前世の名字が塩崎だったせいか?!なるほど、だからソルトね。
…って誰が“塩”だよ!!名前が塩って!!!
ちょっとこの名前にしたヤツ連れてこい!!
この名前を付けたのはこの世界の爺さんだと聞いた。
なんでも、人には絶対に必要不可欠なモノの中から決めたんだそうだ。
残りの候補とかあったんかなあ。
もしやエアーとか言う?まさか!ウォーターか!?
…まだソルトの方がマシかもしれない。
だが、確実に命名のセンスは皆無だ!
『ボク』の記憶だと、そもそも、名前というのは家長が付けるもので……。
父さんも母さんも納得したのだろうか…。
「まだ病み上がりだもんな。
ソルト、また明日にでもゆっくり話してやるから、もう今日は休め。」
考えに更けっていて、先生の事をすっかり忘れてしまっていた。
「先生!すいません。」
先生も優しい顔で気にするなと答えてくれた。いい人だ。
この白髪混じりの人は、東第一区にある診療所の医者、ハワード先生だ。
東第五区にある『ボク』の家から一番近く、小さな頃から家族全員お世話になっていた。
「じゃあな、ソルト。ゆっくり休めよ。
また後でうちのかみさんが飯を持ってくるからな。」
先生が僕の頭を撫でながら言う。
気持ちの良い優しい感触に、自然と笑顔になった。
「はい、先生。ありがとうございます。」
僕が言うと、先生もうんうんと頷いて、頬を緩めながらドアから出て行った。
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