第15話 仮の思考と新メンバー

今日は仮登録した部活の活動初日だ。

初めての部活に胸を躍らせながらみんな部活の指定場所へと移動する

俺もその一人だ。


教室を使い回して部室にした心理部には、俺を含めて五人の新入部員がいた。


「本当は後二人いるはずなんだけど…今日は来れないのかな。」


そう言って智恵先輩は部室の外を確認する。



だから空いた席が二つあるんだとようやく理解した。


今日ここにきているのは右から竜、俺、黄泉菜、そして顔のよく似ているおそらく双子の女子が二人いる。


「まぁ今日みんなの顔が見れないのは悲しいけど、そんなこと言ってたら始まらないもんね!さぁ心理部、部活を始めましょう!」


ドアの外を見ていた智恵先輩が中央に戻ってきて大きな声で喋る


「智恵もう少しボリュームおとして。」


自分のスペースで相変わらずキーボードを打っている花音先輩が振り向く事なく話す。


「ちがうよ!ほら花音ちゃんもこっち来るの〜!」


智恵先輩に引っ張られて自分のスペースから無理やりこちらの中央机までやってくる


「うぁー、まだ途中だったのに…」



「なんでこんな自己中しかいないんだろう…部長かなしいよ…」


その一連のやりとりを見て海先輩が真剣な顔をして話す


「こんな変人どもの集まりだが…それを承知の上で入部してるよな?」


海先輩も流石に新入部員を心配している。


「全然大丈夫っす!むしろわちゃわちゃしてた方が俺的には好きっす!」


「そうか…ありがとうな。」


海先輩はこれから入る部員に優しい笑みを浮かべた。


「よし!実は今日中に心理部みんなで決めなきゃいけないなと思ってる事があるからまず初めに自己紹介からしよう!」


智恵先輩が立ち上がり、代表として黒板の前まで行って話始める



「私はみんな知ってると思うけど心理部部長の亜矢乃 智恵です!心理部部長として日々精進中です!」


智恵先輩は相変わらずの元気っぷりを披露した自己紹介をする


(部活見学した時から変わらないな。)


「俺は霧原 海。この心理部唯一の男子だ。この一年男子がいなかったことに結構なショックを受けていてな。君たちが入ってくれて嬉しいよ。」


「海くんそれ本当!?」


知恵先輩が驚いているが、海先輩はあんまり気にしていない様子だ。


「半分本当半分嘘だな。どっちにしろ部員が増えることは嬉しいからな。」


海先輩、意外とチャーミングな考えをするんだな…


「次は花音ちゃん、自己紹介よろしく!」


「め、面倒くさい…」


花音先輩は大きな伸びをしたのちに自己紹介を気怠げそうに行う


「私は羽山 花音。面倒ごとは嫌い。あと人の名前すんごく覚えるの苦手だから私が覚えてなくても怒らないでね。」


花音先輩…なかなか部活見学の時にも姿を現さなかったが面倒くさがりだから結構休んでいたのか…


「もっといい自己紹介あったでしょ…まぁいいか。とりあえず先輩の紹介は終わったから、次は新入部員さん方よろしく!」


こうして先輩の自己紹介が終わり、次は俺らの自己紹介になった。


「俺は山神 竜です!心理とかはあまりよくわからないけど、海先輩みたいに人の心を読んでみたいっす!」


「ヒュー!海くん後輩に求められる姿になっちゃって、やっるぅ!」


智恵先輩がわかるように海先輩をイジる。


「竜くん、ありがとうな。この部活に入ったなら、こんなチンピラ部長なんか抜かして上手に活用できる読心力を身につけような。」


海先輩は部長を見ずに親指でクイッと指差して煽るように見下した。


「ちょっと!!チンピラ部長ってなによ!」


「はいはい、次の人自己紹介しようかー」


わかりやすくくらいついた知恵先輩を華麗にスルーして自己紹介を進める


「あ、俺は有馬 壮太です。本当の自分をもう少し曝け出せるようになって、自分の弱さを克服するためにこの心理部に入部しました。」


「何だかいい目標だね…」


智恵先輩が感心する。


「本当の自分…か、いいじゃん。私、そういうの好きだよ。心理部ならできるかも知れないから卒業する時にはちゃんと本当の自分を見つけるんだよ。」


花音先輩が急に真剣な目つきになって俺にアドバイスをくれた。


「あ、ありがとうございます。」


心理部はちょっと変な人が多いかも知れないけど、やっぱりそこを含めていい部活だ。

多分俺は、そんな心理部に魅力を感じたんだと思う。


「次は私ですね。私は石原 黄泉菜です。心理というものに興味があったので入部しました。」


読心能力は誰にも話さず隠しているので流石に『人の心が読める』ことまでは言わなかった。


「黄泉菜ちゃん可愛いし真面目だから心理部に来てくれてほんと嬉しい!」


知恵先輩がベタ褒めするのに反応して黄泉菜も「ありがとうございます」と返答する。



「さて、最後は二人一気に紹介しようか!」


知恵先輩の提案で双子のような二人が自己紹介をする


「私たちですね。私は稲川 奈々(いなかわ なな)です。」

「私は稲川 寧々(いなかわ ねね)です。」


すごい…名前まで似ている。


「確か、奈々ちゃんと寧々ちゃんは双子なんだよね?」



「「はい。」」



やっぱり双子だった。

とてもよく似ていて区別がつかなくなりそうだ。


わかりやすい見た目としては奈々の方がショートカットで前髪を左に流していて、寧々の方はショートボブの前髪右流しとなっている。



「…よし、一通り自己紹介が終わったな。今日したいことは自己紹介もあったが、心理部恒例の《アレ》をやってもらいたくてな。」


そう言って海先輩が明日から立ち上がり、黒板の方へ行って話し始める。


「花音、準備できてるか?」


「まぁ今日はそれやるって話だったからね。とりあえずやりますか。」


花音先輩は自分のスペースに戻ってキーボードを打つ。


すると、部室となった教室の白板の方にスクリーンが出されて、そこに花音先輩のパソコン画面が映し出される。


「今日はいつも俺らが土日の部活で行なっている『一週間スケジュール』というものを立ててもらおうと思う。」



「一週間スケジュール…ですか?」


「まぁいきなり言われてもわからないよな。とりあえず順を追って説明するよ。花音!先週のスケジュールを出してくれ。」


「はいよー」


スクリーンに映された画面は先週の一週間スケジュールに変わり、そのスクリーンの隣に海先輩が立つ。


「これがいつも土日に決めている『一週間スケジュール』だ。といってもやることは単純な事で、心理に関係する何かをしたいと提案するだけでいい。みんながそれに同意した場合、基本的には一週間それをみんなで楽しむってだけのことだ。」


(そ、そんなゆるーい感じで活動してるのか…)


まぁ自分のしたいことができるならそれもそれで楽しいのかなと思うのだが、もっとガッチリとした活動内容だと思ってた俺にとってこのスケジュールは意外だった。


「それでだ。今週はまだスケジュールを立てていない。立てるなら一年生を含めた意見の方がいいと思って、今日にしたんだ。」


さっきまで黒板の横にいた智恵先輩は俺らと混じって海先輩の話をしっかり聞いている。


…なんか部長なのにパッとした事をしないなぁ。


「それじゃあ誰でもいいから今週一週間で何かやりたい人は案を言ってくれ。この際花音が集計しているから早口で言っても採用してくれるぞ。」


花音先輩は俺たちの方を向いてグッドサインをした。


「じゃあ私から。ここはひとまず『トランプ』とかはどうでしょうか。」


黄泉菜の言葉に反応してすぐに花音先輩が打ち込む。


「トランプねぇ…まぁアリかも知れないが、もう一捻りくらいあるといいかもな。」


「じゃあ『ウルファーウェイ』はどうっすか?」


竜が提案した。


すぐに花音のパソコンに打ち込まれる。


「ウルファーウェイか…アレだよな?人狼みたいなスマホゲーム。いいかもな。アレなら数十人でもできる。ただちょっと課題として、みんなが知っているかとアプリだからみんなにダウンロードしてもらわないといけないのが問題だ。」


「あ!それ私しってるよ!いろんなyoutuberが紹介してるやつでしょ?私はインストールされてるよ」


どうやら智恵先輩は知ってるようだ。


「私もやってる。結構強いよ。」


「俺もウルファーウェイならやったことがあるな。」


続いて花音先輩、海先輩もやっていることがわかった。


「「私たちも知ってます。あのゲーム、結構奥が深いので楽しんでます。」」


稲川姉妹も知っているようだ。


「私は…」


黄泉菜はみんなが知っている反応に押されて何も言えない状態になっていた。

この感じだと知らなさそうだ。


「………私も知ってますよ。これでみんな知ってますね。」


(あ、ちょっと無理したな。)


いくら人の心を読むのが苦手な俺でも流石に今の黄泉菜は無理しただろうなとわかった。


「なら問題ない。今週一週間は『ウルファーウェイ』をみんなで行い、楽しく心を読み合いながら部員との仲を深める、ということで決定するが異論はないか?」


みんな納得らしい。



「よし、それなら決定だ。明日の部活からみんなで始めるから充電はしっかりしておくように。」


花音先輩は一週間スケジュールをまとめたのちに、スクリーンをしまう。


「今日の部活はこれで終わりだ。解散でいいよ。」


「「ありがとうございました。」」



こうして今日、初めて部活が終わった。







何をするんだろうかと、少し緊張していた自分もいたが、この部活ならたくさん楽しめそうだ。

初めての部活は、俺の中でいいスタートを切れた気がする

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