何が何でも作品を「無料」で公開させようとする企業様
作品は無料で読めて当然。書き手は、無料で読ませて当然。だってあなたはプロじゃなくて素人だから―
こんな風潮を作ったのは誰なのか、その陰で密かに大儲けして笑ってるのは誰なのか、…まあ、それは明らかでしょうから敢えてこの場で指摘しないとして。
じつのところ、何らかの形で書き手にも報酬を払おうというシステムを、少なくとも見かけ上は取り入れている投稿サイトも存在します。
ただ、本当に気になるのが、「まずは無料公開して当然」「有名になった人には金を払います」みたいなその姿勢。
軒並み営利企業がやってるのでまあ仕方ないのですが、例えば同人活動というものに対する理解がまるでない。
普通の人は、儲けを出すためにやってるわけじゃないんですね。
ただそれでも、買ってもらえると嬉しいわけです。
だから、額としてはワーキングプア世帯の収入にも桁違いで満たない額やお年玉みたいな額でも、嬉しいわけですよ。
買う側は、当然ですが金を出さないならものは自分の所有にはできません。短い時間の立ち読みとかサンプルの閲覧はできても、「丸ごとじっくり読んでおもしろかったら金払うよ」などという事はできません。飲食店で飲み食いして、「美味かったら金払うよ」などと言う事はできませんね。基本は同じです。
確かに、商品を買ったあとに「金返せ」と思った経験は、私にもあります。
でも、それでも、やはり「自分のものにして気に入った時だけ金を払う」なんていうシステムは原則にしてはいけないのです。
まず無料で試食してもらって、買ってもらうという手法は確かにあります。
でもそれは、販売者が自分の責任で選んでもいい手法の1つに過ぎないわけで、それを「原則」にしてはならないのは明らかですね。そういう方法が向いている商品やサービスと、そうでないものがあります。
一見すると書き手にも報酬を与えるみたいな気前のいい事を言っているサイトほど、pvや評価を集めにくいという傾向があるように思います。要は、厳しい姿勢で臨んでいるという事かと思います。そこの運営も、もしかしたらユーザーも。
これは結局のところ、「人気作品だけ書籍化の話を持ちかけて残りはタダで当然」という、従来の…というか当たり前であるかのようにユーザーに刷り込まれた姿勢と本質的に同じと言えます。
あるいは、見かけ上有料販売ができても、特定のユーザーだけは無料で見れるというシステムを考えたりと、とにかく一部の人以外には絶対に利益は与えないという、確固たる、断固たるダイヤモンドのように強固な姿勢が見えて、ある意味感服もします。
「そうは言っても、つまらん作品には金払えないやろ」というのは確かにそうですが、そう思うのだったら手にとる資格も無い、自分のものにはならないというのは金のやり取りで当然の事かと思います。
例外中の例外は、図書館だと思います。ただその代わり、書店等と比較して欲しいものが揃えられているとは限らないし、貸し出しの期間が限られているなどの制限はありますね。基本的には一定期間過去の商業作品で、作者には一定の利益は既に入っているものがほとんどであるという事も、見逃してはならないと思います。
まずは図書館デビューが原則で人気が出たものだけ商業化されるなどというふざけた事は当然ですがありません。
もちろん、趣味で気軽に書いたものを互いに鑑賞して楽しもうという姿勢なら、無料で見せ合う小さな図書館的な存在は悪くないと思います。
同人誌とて、本来は印刷代等の費用の回収のために「頒布」しているというのが一応原則です。(特に二次創作。)
ただ、ごちゃごちゃと数字をつけられたり商品レビューみたいなものをつけられたりだとか、これはもう「気軽に交流しましょう」なんていう穏やかな性格のものではないですね。明らかに、競争させている。
そもそも交流したかったら面白いものを作れとか、個人的には暴論だと思います。
特定の人だけに限定して公開できるといった機能があれば、「別に競争煽ってるわけじゃなくて交流目的のサービスです」という言い訳もできるでしょうが、基本、どこを見てもそういう機能は見当たりません。(あったら使いたいです。落選物の全文あるいは一部分の真剣な批評をし合うといった建設的な目的に使える可能性もあるので。)
まずは無料公開させて晒させるのは当然というその姿勢は、私は結局企業側の利益も損ねていると思います。
というのも、やらせてみてダメだったものは、企業側も「できれば削除してもらいたい」と思っているはずなのです。でもだったら、最初から載せなきゃいいですよね。
審査制にして、水準以上と認めたものだけ掲載すればよい。もちろん、そうするならその審査を通った作り手をゴミユーザー扱いしてはならないと思いますが。小説だろうとイラストだろうと漫画だろうと、投稿サイトの問題点は作品やユーザーの数が無駄に多すぎるという事かと思います。企業側としては、無駄な作り手のユーザーよりも、鑑賞する側のユーザーが増えてほしいと思っている事でしょう。
こういう中で、一般の新人賞であるとかそういうものは、創作活動のモチベーションを維持するのに非常に役立つように思います。この場合、動機となっているのは「良い作品を作ろう」という創作活動を行う本来の動機に近いのではないでしょうか。
確かに、賞の開催側の最終目的とて結局「金」ですが、金なら金で、ある意味徹底しているわけです。それが創作活動に結果的に力を与えているというのは皮肉だと思いますが。
金儲けが必ずしも悪い事ではありません。ただ、それならそれで徹底しないと駄目なのでしょう。
私は、もしも賞に応募した作品だけでコンテンツでも作れば、落選物であっても、相当に良いコンテンツになると予想します。自分で書いていても思いますが、趣味でだらだら書くものとは違ってくるはずなんで。作品数も絞られますし。
しかし、そういったものを「利用してやろう」「搾取し尽くしてやろう」といった考え方は、到底受け入れ難くて当然です。こういう搾取をしてやろうというその構造は、そろそろやめたほうがいいのではないかと私は思います。
同じ企業でも、きちんと同人サークルに利益にもなるようにサービスを提供して、見返りに代金を受け取ってまっとうな経営をしているところもあります。そういう会社が例外なのではなくて、基本とならなければいけませんね。
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