「ショートショート」目の笑わないおばあちゃん
ゆきじ
第1話
私は、ずっと東にある町外れの魔女。病院を営んでいるんだ。見た目は26歳、でも本当は150歳だけど(笑)
昔はコメディー番組を見て笑ったり、くだらない話をして友達とゲラゲラ笑ったりしてたの。今は友達も疎遠になったわ。コメディーやバライティー番組を150年も見ていると飽きちゃうのよね。そしてだんだん笑えなくなってきたの。130年もの間、この病院をずっと欠かさず営んできたわけだけど、私の影響でナースたちは無愛想になり、今では無愛想な病院として有名になったわ。毎日、病院と家の往復で平凡な日々を過ごしていたの。
私は診療所の対応と訪問外来もやっている。そんな時ある噂を耳にした。
『もしかしたら、町に大きな病院ができるかもしれない。』
私はその噂を聞いて平然としていたが、内心はとても焦っていた。
そんな時ある人を思い出した。私にはコレットという妹がいたじゃない。コレットは140歳で10歳も歳下だけどナース歴20年で、たしか魔法を使って薬の調合をする資格を持っていていた気がする。因みに今は病院の経営コンサルタント40年しているって前言ってたけ。妹に相談してみよーっと。
妹の相談してみるとあっさり承諾してくれた。妹の部屋が決まるまで、私の家で食事つき風呂・洗濯付きで暮らしてもらうことになったわ。
家に1人増えただけなんだけど、久々に喧嘩もできた。凄く疲れたけど楽しかったわ。
初日
妹に薬の調合とナースの仕事を行ってもらった。緊張していて、すごくヘトヘトだったみたいだが、1人で2人分の仕事をしてくれたので大助かりだったの。
一週間後
コレットから、
「様子を見ていたけど、なんでこんなに無愛想なの。お姉ちゃんが一番変よ。昔は一番笑っていたじゃない。この病院は手厚くて良い所もたくさんあるけど、埃っぽかったり内装も地味だったり、もう少し料金を安くしたり、改善点もたくさんあるけど、まずはお姉ちゃん、笑顔からよ。」
「そんなたくさんあるのね、びっくりしたわ、でも笑顔はできない。私は130年間、人の死に寄り添ってきた。仕事上、人が死ぬことに対して常に覚悟をしてきたわ。もちろん、病院にきて元気になった人も沢山いる。でもそうして治ったところで、いつかは亡くなるわ。そのことに耐えられなくなってきたの。」
「そんなこと言っていたら、自分が苦しいだけじゃない。何でもっと早く私に相談してくれなかったのよ。相談してくれなくて悲しいし、私なら絶対に力になれたのに・・・事実は変えられないけど、悲しみは2人で分け合いましょう。それにしても今働いてくれる皆や患者さんたちによく怪しまれなかったわね。本当は150歳なのに。」
「ありがとね、コレットの気持ちはすごく嬉しいわ、何で皆にバレなかったかというと、まず皆と同じように老いていったのよ。見た目だけね(笑)。そして定年を迎えるときに、次の経営者を選ぶわけだけど、その時にもう一人の自分を選ぶの。15年も前に新人として入社させておいた私よ。つまりある一定期間、見かけの全く違う別の私が同時にいたの。一人二役してきたわけね。こうしてまた病院経営に携わってきたのよ。でもコレットにはそんなことさせないわ。ここが気にいればもちろん働いてほしいけど、人間と同じように年をとり定年退職してから、有給消化後に様子を見て戻ってもらおうと思っているの。」
「お姉ちゃん何やっているのよ。1人2役をずっと続けていたら、その期間が多い程、寿命が1年ずつ減るのは知っているでしょ。お姉ちゃんはもう少し自分を大事にして。私は、お姉ちゃんが一人二役しないでいいよう、後継者選びのタイミングになったら、協力するわ。だからこれからは、無理だけはしないで。」
「ありがとう。コレットが来てくれたから、本当に心強いわ。とりあえず、笑顔の練習頑張る。」
「そうしたら、朝、昼と訪問する前に笑顔のお特訓をするわよ。」
「わかった。」
次の日から毎日本当に笑顔の練習をした。コレットが訪問外来の時一緒に来てくれるので、美人の妹と話題になった。皆が妹に癒されていた。
そうして4年後・・・・
ようやく目以外は笑顔になれたわ。目が笑わないおばあちゃん。
因みに町に大きな病院はできたけど、うちの病院の訪問外来と薬の調合がその大きな病院で評判となり、業務提携することになったわ。結果、業績が倍になった。
今日も忙しい毎日、だけど姉妹たちとナースたちは病院を切り盛りしている。コレットが来てくれたおかげで、病院の雰囲気もよくなったのよ。
「ショートショート」目の笑わないおばあちゃん ゆきじ @yukiji-takaji
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