第55話 2月15日【丸く収まらないスクエア・エラー】
それは二限が終わった際、智奈美の席で交わされた会話だった。
「……それで? 二人でチョコ食べて帰ったの?」
智奈美から聞かされたバレンタインの
彼女は親友の行動に頭を抱えながら「どうしてそうなったの……」と呟いた。
すると――、
「本当、なんでこうなったんだか……」
――と、茉莉に呼応して、
だが、彼女の言い方はまるで独り言をこぼすみたいだった。
だからだろう。
明後日の方向を見つめながら一人感傷に浸る逢沢へ、茉莉は不機嫌な顔で質問する。
「ていうか、なんであんたがいるの……?」
「別にいいでしょ? クラスメイトなんだし。昨日の今日で仲良い子達から気遣われまくってて気まずいのよ」
「そりゃ……気持ちはわからないでもないけどさぁ」
茉莉は逢沢が所属する『仲良しグループ』へと、そっと視線を投げた。
ちらちらと自分達へ視線を向けてくる女子の集まりが、彼女にはライオンの
「……ねぇ、あれあんたがあたし達に喧嘩売りに行ってると思ってない?」
「ああー……思ってるかもね?」
淡々と頷く逢沢に、茉莉は信じられないと言うも同然の眼差しを注いだ。
その後、茉莉がそっと智奈美の陰へ隠れると――縮こまる姿を見た逢沢は悪役みたいに微笑んだ。
「そんなビビらなくても平気だって。あの子らが喧嘩吹っ掛けてきそうになったらちゃんと説明してあげるから」
だが、
「は?」
逢沢の言い方がカチンと来たらしく茉莉はすっと立ち上がるなり――、
「ちょっと、楠! こっち来い! 今から大富豪するから、人数合わせっ!」
――大声で逢沢を振った張本人を召喚しようとした。
「バッ、バカッ――何考えてんのっ!?」
「別に? ただちょっとトランプがしたくって。三人じゃアレでしょ?」
「三人でいいじゃない! ていうか、トランプなんてないでしょ!」
「……トランプならあるけど?」
智奈美が鞄からトランプを取り出した瞬間、逢沢の顔から血の気が引く。
「向坂さん、なんでそんなの持ってるのよ!」
そうこうしている内に、
「……一応、来たけどさ」
楠が彼女たちの傍までやってくる。
逢沢と楠が目線を逸らし合いながら、意識だけは互いへと向く中――、
「じゃあ、始めよっか!」
――茉莉は智奈美からひったくったトランプを笑顔でシャッフルし始めた。
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