第17話 1月8日(……寒い)
まだ元気な使い捨てカイロを握りしめ、だらりと机に寝そべる。
夏にひんやりと気持ちよかった机の……冬の裏切り様は酷かった。
むくりと上半身を起こした途端、溜息が出る。
(……時間、何して潰そう)
スマホの充電は満タン。
まるで『いつまでも付き合うよ』と言ってくれてるようだけど、寒さに身震いする教室でいつまでもなんて拷問でしかない。
似た理由で本を読むのも諦めた。
いっそ学校を出て喫茶店にでも入ってしまおうか?
いや、窓の外では寒風が口笛を吹いている。
まだ到底、外に出たいとは思えない。
それに寒いのは気温だけじゃないし。
つい、もらったお年玉を置いておけば……なんて考えてしまった。
本当は、彼の家で時間を潰せれば、それが一番楽なのに。
距離を置くと決めてまだ間もない。
やはり、ここで本でも読もうかと考えた時だった。
閉め切った窓を透かし、校庭から野球部の声が聞こえてくる。
『お願いします』と言ってノックが始まると、ひどく肩身を狭く感じて……帰り支度を始めた。
◇
家の近くまで
「昼間から……こんな所で何してるんですか」
そこで彼とばったり会ってしまった。
「何って、昼食の買い出し」
「そうですか。それじゃ」
「あっ、ちな!」
何も買わず、ただ彼から離れたくて店を出ようとした所を呼び止められる。
「今日は寄ってかないのか?」
「……彼女がいる人の家に?」
思わず棘のある声が出たけど、彼は『今更?』とでも言うように首を傾げた。
だから視線を合わせないまま、感情に任せて口走る。
「相手に悪いとかないんですか。普通、嫌ですよ。女子高生を部屋に入り浸らせてるとか」
「それ、人聞きが悪すぎるな」
「事実でしょ? どうせ私のこと、
しかし、
「……してるぞ」
「は?」
予想外の返答に、脳みそがひっくり返る。
「いつ……何て?」
「年末に。
一瞬、泊りにの間違いでしょ? と訂正しかけたが、自制する。
「話の流れでアルバム見せたんだ。俺達、一緒に映ってるのも多いだろ? だから――」
「つまり、少し前までの私の顔、名前も。もう、その
「ああ」
「
「全部な」
そして、思い出す。
初詣の後、彼女と会った時のことを。
「そう、ですか」
つまり、あの時にはもう――知った上で、知らないふりをしていたんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます