59.言い忘れていたことがある
ナドルシャーンの
マリエラの海と同じ
なぜか宮殿の窓辺という窓辺に
その場で、
友好の証としてマリネシアの星が、ナドルシャーンの手で、
国民の歓声が、宮殿の内も外も、マリネシア全島も埋め尽くして、南海の果てまで響き渡った。
「お兄様っ!」
「御立派でしたわ、お兄様! それでこそマリエラの君主、私の愛するお兄様です!」
そのまま押し倒しかねない勢いに、たまりかねてマリリが
「おい、共犯者」
「なんだ、婚約者」
「その
「だからなおさら手に負えん。どうしろと言うのだ」
「そうですわ! 婚約に
「こ、この、調子に乗って……大体、おまえ、あの
「
みもふたもなく笑い捨てる。
「たかが女一人捨て石にして、目標にしがみつくくらいの
「い、い、言うに
「ちゃんちゃら
「なんだと、この
「
「
「
どうやら
少なくともナドルシャーン一人にとって、前途は多難と言えた。
マリネシアの星に替わって、いわく最愛の妹を首にぶら下げながら、ナドルシャーンが
マリエラの海も空も
***************
もうすぐ帰るとなれば、白い砂浜にも
狩りをするように慎重に間合いを
給油と、リベルギントとメルデキントの格納は済ましているが、
ヤハクィーネと整備兵達、クジロイ達も思い思いにお祭り騒ぎに参加して、南海の
今や、マリネシア皇国に手を出そうという国家は、なくなった。
戦艦一隻、巡洋艦二隻、駆逐艦六隻をそろえたアルメキア海軍の戦闘艦隊が、老駆逐艦一隻のマリネシア海軍に、一片のかけらも残すことなく
どんなに非現実的であっても、外からは、そうとしか見えなかった。
幸運にも生き残った上陸部隊の捕虜達は、いずれ正式な手続きで返還されるだろう。
チェスターだけは騒動の
「そう言えば、バララエフ中尉達も見かけませんね」
「表立って騒げる立場でもないだろう。少し前に、民間の貨物輸送船に乗り込んだのを確認している」
「仕方ありませんね。次に会う時は、あなたと一緒に剣を
「同意しよう」
軍服も水着も適切ではなかったので、
胸元と肩が大きく開き、つややかな肌がのぞいている。
「
「人の力だ。より良い未来を
「
ジゼルが大きく伸びをした。
南の島の宝探しは、多くの人間に希望を示す結末となって終結した。
「それにしても、まさかマリリに先を越されてしまうとは……積極的な結婚願望があったわけでもないのですが、妙な敗北感を覚えます」
「ユッティも同じようなことを言っていた。ヒューゲルデンにエトヴァルトの名前を出されて、難解な顔をしていた」
「まあ、そうでしょうね。私もこうなったからには、相手の姿や状態、
「文脈が理解できないが」
「冗談です」
ジゼルが、衣装の
「言い忘れていたことがある」
「なんでしょう」
「その衣装も良く似合っている。美しい」
ジゼルの目が、少し驚いたようだった。口元に手を当てて、ほくそ笑む。
「なんですか。そんなことも、言えるようになったのですか」
「日々努力している」
「では、私達も結婚しますか」
「文脈が理解できないが……」
一呼吸、置く。文脈の
「やぶさかではない」
リントがジゼルの手に乗って、するりと肩に登り、ジゼルの
さすがに、偶然の行動だったろう。それでもジゼルが、花の咲くような笑顔を見せた。
〜 第三章 マリエラ晴嵐編 完 〜
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