10回目 綾鷹(仮題)
選ばれたのは、トナカイでした。
馬頭星雲第798番惑星での新たなテラ・フォーミングに送り出される生物の選考会が行われていた。その惑星の環境は地球で言う高緯度地帯の環境に近く、1年中雪原が広がり、歩くには困難する惑星だった。
過酷な環境では人だけではテラフォーミングはもたない。多様なアプローチがテラフォーミングに必要だというのは既に判明していた事実であり、作業用強化人間に十分な設備、装備を備えさせるのはもちろんこと、家畜を用意するのも定番であった。
そこで選ばれたのがトナカイでした。
トナカイは地球人類のうち北方民族と呼ばれる者たちの間では古くから親しまれている生き物であり、雪上をソリやあるいは騎乗によって移動する手段、労働力としての手段、そして食料としての手段という多面的な側面を持つ友だった。
家畜を同伴させる際に、かの創世記におけるノアの箱舟のように貨物に積んで目標の惑星に送り届けるのは古いやり方だった。バイオテックの発達した現在、生物の導入にはその惑星上の物質を使うのが定番だった。言うなれば家畜の「栽培」である。
遺伝子に組み込まれた設計図を紐解き、ある種の液体をその惑星の地表に垂らす。そうすると、その惑星の地中にある成分を使い、目的の生命を作り出すのである。この方法で用意される番を雄の個体をアダム、雌の個体をイブと呼称するのが通例だった。
今度もまた派遣される強化人間の友として、トナカイ・アダムとトナカイ・イブが作られる……培養装置を起動し、地中にまるで注射器のように打ち込まれた装置から、新たな生命が生まれる……これが現代のバイオテック、現代のテラフォーミングだった。
そして新たな議論が始まる。今度はしし座L77星のテラフォーミングについて……
お題「バイオテックトナカイ」で1時間
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