016 Everett Christmas

 ジングルベール、ジングルベール、Daybreak's Bellが鳴る……ふふっ、夜明けの鐘が鳴ってしまってはサンタさんの仕事がなくなってしまうな、安心しろ、そんなことはない、今はまだクリスマスで、きみたちはとても良い子供達だ。ちなみに私にとって良い子供とは、まだ性のなんたるかを知らないあどけない美しいショタかロリのことだ。それ以外は、震えて待て。


 やあ今晩和ボン ソワール。私はちょっとエッチなお姉さんサンタクロースだよ。君が望めば黒ギャルサンタにもなれるし、ロリ巨乳にもなれる。見る者にとって望む姿形へと自然に変化する――それがサンタだ。なにか文句があるか? サンタくらい徳がある存在だと、その存在を目に入れるだけでプレゼントという概念が成立してしまう。場所によっては料金が発生することを考えればなんと良心的なことか。


 紹介しよう、こちらは相棒のバイオテックトナカイ。なに? バイオテックトナカイをご存じない? いいだろう、私から君たちへ知識のプレゼントだ。バイオテックトナカイとは Methuselahメトセラ-Casキャス969と呼ばれる第五世代ゲノム編集ツールを用いて生み出された遺伝子操作生物だ。従来では先端生命科学の基盤研究などの限定的なDNAの編集にしか使用できなかったゲノム編集ツールであるが、この Methuselahメトセラ-Casキャス969はなんと生物そのものの遺伝子を組み換えることが出来てしまうのだ。なに? カルタヘナ法? だからなんだ、私はサンタだ、それだけで万難は排除される。よい子はわかるね?


 おっと、だらだらとお喋りをしている時間はない。何故なら私のクリスマスは一日一時間が限度だからな。それでは早速世界線を越えてプレゼントを配りに行こうではないか。

 まずは――そうだな、直近でよくない目に遭ってしまった可哀想な者へとサンタの施しを与えてやろうか。エヴェレット・クリスマスコード015の世界へと出発だ。




 ――――Everett Extra Code 015


 さて最初に私のプレゼントを受け取るハッピーボーイは君だ、真壁まかべ氏幹うじもとこと鬼真壁くん! あれ? 鬼真壁くんまだ死んでいるじゃあないか。そういえばチャン桃に切り捨てられてそのままだったな。これではプレゼントを受け取ることが出来ないではないか。仕方ない、来い! バイオテックトナカイ!


「Grrrrrrrrrrrrrahrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrr!!!!」


 よしよし今日も良い鳴き声だ。何度聞いてもとてもトナカイのそれとは思えない。

 それではバイオテックトナカイ、お前の真価を見せつけるのだ!

 キュピーン! とバイオテックトナカイの鼻が紅く煌めく!

 するとチャン桃に一刀両断にされて死んでしまった鬼真壁くんの遺体が再生し蘇ったではないか! これこそが聖夜に起きる奇跡! 反魂! 黄泉還!


「なんでそのトナカイ、ジョルノ・ジョバーナのスタンド能力みたいなこと出来るんですか?」

「起きて早速ツッコミいただけるとは重畳。バイオテックトナカイの奇跡の力は上々。気分はどうだい、鬼真壁くん? そうか最高かそれはよかった」

「ああ、話が通じない感じか、この人……」

「ところで私の体だが、何故だか金髪褐色の黒ギャルの様な格好になってしまっているな。鬼真壁くんはこんな感じのナオンがタイプということか、なるほどなぁ……というかこれ、黒ギャルというか2Pカラーのチャン桃じゃね?」

「ああ、俺を一撃で倒した少女、鬼だったんですね……いやあ、人の姿の時は全然ピンと来ないんだけど反転するとめっちゃ好みなんだよな。あと2Pカラーって言ってやるな」

「残念だが私のプレゼントはチャン桃のエッチな薄い本などではない。私のプレゼントは品行方正をモットーとしている。そういうのはDLsiteかDMMで買ってくれ」

「DMMは相当前にFANZAになっただろうがよ。周回遅れだよそのボケは」

「ということで君へのプレゼントはこれだ! 鬼滅の刃全23巻セット!」

「鬼にプレゼントするプレゼントじゃねえだろ。それはそれとして普通に嬉しい」

「鬼が鬼滅の刃をプレゼントされて嬉しがるな! お前が消えて喜ぶ者に生殺与奪の権を任せるな! 鬼なら泣いた赤鬼の絵本以外で嬉しがってはいけないものだろ!」

「理不尽すぎる。あんたこのまま遡って全部の世界線に首突っ込むつもりか?」

モチロンでそのつもりだ。メッチャいい感じに話が閉じたロリババア回にもこの調子で首突っ込んでやるからな。『幼女と性の六時間を愉しんでねえどんな気持ち?』っていう風に」

「最低すぎる」

「ははは、それは流石に冗談だ。幼女と性の六時間を愉しんだ偉人は枚挙に暇がない。今はともかく昔はおおらかだったからな。犬千代前田利家くんとか11歳に子供産ませているぞ」

「あれも当時からどうかしてるって言われてたじゃねえかよ!」

「む、そうこうしているうちにもう一時間が過ぎようとしている。このままではすべての世界線を回るどころではない。よかったな鬼真壁くん。君が最初で最後のプレゼントを受け取り手だ。喜べ」

「はい……とりあえず鬼滅全巻をメルカリに出して小遣いに変えようと思います」


 なんと不遜なことを宣う鬼だろう。折檻しなくてはならない――と思っていたところにキラキラシュイーンと何者かが降臨してくる。

 天から降りてきたのは一人の少女だった。


「――此処で何をしているのですか」

「おお、久しぶりだなぁ、姿スガタ三等官。ちょっと見ない間に成長したね」

と訊いているのです、内或にゃる――」

「おっとそれ以上はいけないぞ三等官殿、ここで私の本名を読んでしまうと。今の私はちょっとエッチなお姉さんサンタクロース、こっちのバイオテックトナカイはであろう筈がない。折角の聖夜を汚染案件にするつもりかね?」

「――――――……!」

「なに、そんな怖い顔をするな。サンタの時間は一時間。それは守るさ。私はしたいことをするだけなのだからな」


 それではまた会おう諸君! と言って私はバイオテックトナカイに飛び乗った。


 さて、名残惜しいがここまでだ。次に君たちの前に現れるのはいつのことになるだろうかな。それまで120。ところでクリスマスってクトゥルフとちょっと似てるよね。えー似てない? そんなー。


 メリークリスマス。

 すべての子供じんるいたちに祝福を。






文字数:2590(本文のみ)

時間:1h

2020/12/25 お題

【バイオテックトナカイ】をテーマにした小説を1時間で完成させる

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