第十五話 高校三年、順子、現在

 田中美久と兵藤兄妹が『ゴックン』などと呑気に騒いでいる頃。

 

 北千住の駅から1キロほどの大川町氷川神社の道路向こうの荒川の土手に、ヤンキー座りの高校生の三人組がいた。


 その内のボスの女の子が「おい、敏子はまだ酒を持ってこないのかよ?」と恭子に聞いた。

「順子ネエ、敏子、どこ行っちまったんでしょう?わたしが買いに行けばよかったかな?」と恭子が言う。

「何いってんだ、おまえ。恭子が店に行ったら、売ってくれるわけねえよ。チビなんだから。170センチの敏子より25センチは低いだろ?」と横目で恭子を眺めて言う。

「順子ネエ、わたしだって、身長は152センチありますよ。チビだ、チビだって言って、まったく」とふくれる。順子ネエと呼ばれる女の子は高校三年生で他の子たちは二年生だ。


「敏子が戻ってきたら、わたしのマンションにでも行くか?女四人だけどよ。女四人じゃなんにもできねえや」と言うと、恭子が「女同士でも楽しめますよ?順子ネエ」

「いやだね。レズのおまえとわたしは違うんだ。おまえのおもちゃであそこをかき混ぜられたくねえよ」

「そうっすか?男よりもずっといいのに。この前、敏子とやったら、敏子よがって、八回くらいいっちゃいましたよ」

「おまえ、敏子とやったのか?」

「ハイ、敏子、背が高くていかつい顔をしてますが、マゾだからね。あいつがネコちゃんでわたしがタチですもん。ヒィヒィ言うんで虐めてやりましたよ」

「おまえ、変態だよ。なんだ、敏子は両刀遣いになっちまったのか?」

「わたしが仕込んでやったんですよ。他の女の子と同じくね。グミの二、三個食べてキメセクすると最高なんすよ」

「恭子、商売物だぞ。それにあまり食うなよ。ヤク中にするこっちがヤク中になったら笑えないよ」


「まあな、おまえのカワイコちゃん面(ヅラ)とレズ癖がなけりゃあ、女の子を引っ掛けるのも大変だからな。まさか、おまえ、この恵美子も食っちまったんじゃないだろうな?」と順子はもう一人の女の子を指差した。

「恵美子はダメだ。なあ、恵美子ちゃん。こいつは男一筋だから。男ならだれでもいいってこってすがね。康夫さんの手下の浩二は嫌らしいけどね」と恵美子に言う。

 恵美子は「当たり前だよ。恭子に私のあそこをベロベロ舐められたくないよ。浩二?あの鈍牛?あんなのとやったら壊れちゃうよ。浩二なんて何時間でも何人とでもやるやつなんだから」と言う。


「なんだ、恵美子、ベロベロ舐めるなんて見てきたようなことを言って」

「だって、順子ネエ、恭子が敏子とやってるのを見せられたんだから。たまったもんじゃないよ。ちょっと感じたけどさ。チビがノッポをヒィヒィ言わしているんだよ」

「わたしの三人組は美久の三人と違って変態ぞろいか?まったく」

「順子ネエは、康夫さんとオジサマとしかやらないからね」と恭子。

「バァカ、今はな、普通に見える女の子が梅毒や淋病を持っているんだ。そういう女がパパ活して円光して、うつされるんだ。間接的にうつされてたまるかよ。わたしは決まった男としかやらないんだ。恭子、おまえだって、病気持ちの女のあそこをベロベロ舐めてたらうつるぞ」

「舐めるだけで?」

「バァカ、粘膜接触じゃねえか?」


 敏子が戻ってきた。重そうなプラスチック袋を抱えている。

「順子ネエ、遅くなりました。だんだん、酒を売ってくれなくなっちゃって」

「おまえの私服姿でもか?おまえ、十分成人にみえるじゃん?」

「身分証見せろと言われるんですよ。うるさいのなんの」

「まあ、ご苦労さん。おい、敏子、恭子から聞いたぞ。おまえ、恭子にヒィヒィ虐められたんだって?」

「あ!恭子、このバカ!内緒だって言っただろ?」

「話の流れでつい・・・」と恭子は舌を出した。

「さて、わたしのマンションにでも行こう」と順子が言う。

 

 順子は母親と住んでいるマンションの他に内緒で別のマンションを借りていた。恭子の言うオジサマが保証人になっている。そこで、オジサマやオジサマの友人と称する男に高校生を斡旋するのだ。

 

 手口は巧妙である。ちょっと見にはただの可愛子ちゃんに見える恭子が、グループがリストアップしたLJK(ラスト女子高生、高3のこと)をお菓子で釣るのだ。リストにはLJKの誕生日が調べられている。それで、その女の子が18才の誕生日を迎える頃、恭子が接触する。つまり、その子は、18歳の誕生日を迎え、高校生でありながら条例に抵触せず合法的にセックスのできる女子高生、『合法JK』となる。

 

 恭子は、生真面目で進学希望で勉強ばかりしている大人しい子を選ぶ。特に処女だと都合がいい。たいがい、そういう子は夜遅くまで勉強しているので、いつも睡眠不足だ。恭子はそっとその子に近づき、お菓子をあげる。ソフトグミとかだ。「智子、これ食べない?不二家の贅沢グミだよ」などと言ってお菓子を勧める。


 お菓子には、S(スピード、覚醒剤)が仕込んである。ポンプ(注射器)で仕込む。恭子にお菓子をもらった女の子は、眠気が覚めるのだ。彼女らは恭子にもっとちょうだい、あのお菓子食べると調子がいいの。買ったやつはダメみたい、恭子のがいいのと言ってくる。


 数日経って、恭子がソフトパックの栄養ドリンクを彼女らにあげる。「眠気覚ましにはこっちの方がいいかも」と言って。これにはお菓子の倍量以上のSが注入してある。わざわざ、コンビニなんかでは買えないドリンクパックを選ぶ。栄養剤を飲み続けた女の子たちは、徐々に中毒症状が進む。注射器を使わないから針のあとも残らない。


「恭子ちゃん、栄養剤、いいよねえ。眠くならないんだもの。それに体重減ったみたい」恭子だから安心するのだ。ロリ顔で純真無垢のような顔をした悪魔。これが順子や敏子、恵美子だったらこの手には引っかからないだろう。警戒される。それにレズ癖のせいか、女の子へのソフトタッチが性的経験のない子には心地よいのだ。

「私もね、勉強で眠くなると(ウソつけ!)あれを飲むのよ」

「宿題がはかどって。集中できるのよ。これで志望校も受かっちゃうんじゃないかしら」


 その内、恭子は栄養ドリンクを渡さなくなる。「え?恭子ちゃん、ないの?あれ?」と恭子に訊く。「あれ、高いんだよね。今、切れてる」などと恭子は言う。「手に入らない?」「そうだなあ、わたしの知り合いのマンションにあるかもしれない。一緒に行こうか?」と言って順子の借りているマンションに行く。

 

「ねえ、恭子ちゃん、ここ誰のマンションなの?」

「う?知り合いの人の。勝手に入っていいって言われているんだよ」

「ふ~ん・・・」何かおかしい。でも、栄養剤、欲しいしなあ。


 二人はマンションに入る。恭子は冷蔵庫を勝手に開ける。ときたま順子たちが自炊するので普通に食材が入っている。冷蔵庫のドア側に栄養剤がツーパック。わざわざ準備しておいたものだ。


「智子、あった、あった」

「恭子ちゃん、勝手に持ち出したら・・・」

「いいって。私がお金をあとで払っておくから」

 

 普通の意識を持っていれば「あれ?なにか変だぞ?」と思うに違いない。しかし、既に薬は智子の体内を巡っている。

 

「・・・恭子ちゃん、栄養剤って高いの?」


 もう既に栄養剤にストローを刺していチューチュー吸っている恭子は「う~ん、四千円くらい?」という。


「え~、私、お金ないよ」

「いいって、私が建て替えておくわよ。飲みなよ、智子」と言ってS入り栄養剤を智子にわたす。

 

 恭子は処女の場合にはおもちゃは使わない。処女は順子のオジサマや友人に高く売れるからだ。非処女ならおもちゃを存分に使う。恭子は薬で酩酊し感じやすくなっている女の子とキメセクをする。趣味と実益というわけだ。


「恭子ちゃん、今日の効くわね?」智子はちょっと寒気がするかのように腕を交差させて自分の体を抱く。智子、Sの量を増やしてるんだから、そりゃ、効くよと恭子。

「そう?」

「敏感になってる」

「え?智子ちゃん、敏感になっちゃってるの?」と智子の腕に触れる。

「あ!いやん」と触られた箇所から電流が走ったみたいに智子は感じる。

「(第二段階突入よ、智子)ちょっと寝室をのぞいてみようか?」と智子を寝室に連れ込む恭子。


「大きなベッドねえ?」

「クイーンサイズって言うんだろうね。ほら智子もお座りよ」と自分が座った横をバンバン叩いて智子を誘う恭子。

「わー、ふかふかね」と仰向けに寝てしまう智子。

「ね~、智子ちゃん、私、ちょっとレズはいってるの。チューしていい?」と恭子。

「きょ、恭子ちゃん、私、ぜんっぜん経験ないから・・・」からどうした?やっていいのか?経験なし。やっぱり。処女だな。おもちゃ使えないじゃんか?ま、いっか。と恭子は思いながら、

「じゃあ、私でチューの練習すればいいじゃない?」と言う。

「え?やん」といいながら目をつぶって待っているような智子。


 ベッドの上に四つん這いになって、顔を智子の顔に近づける。智子は小柄だが恭子よりは大きい。背が高い。二人共中学生と言っても違和感はない。かっわいいじゃん、智子、高く売れるよ、と恭子は思う。


 恭子は智子の体にさわらず、小鳥が口先でついばむように、チュッと。チュンチュン。もうちょっと長く。チュー。そっと肩に手を触れる。お!いいじゃん、智子も私の肩に触った。舌をちょっと出してっと。唇をペロッと。口開けよ?お嬢ちゃん!お!開いた、開いた。怖がらせないように舌をちょっと入れて。絡ませて。うん、いいぞ。肩を抱いてきた。もうちょっと口を開かせて。いい調子だよ、智子。


 ハァハァいってきたね。よし、舌で智子の歯をなぞって・・・智子も私の舌を吸ってきた。じゃあ、お言葉に甘えまして!ベロっと。もう智子に体重を預けてもいいかな?よしよし、もっと抱きしめてきた。つばを飲ませますかね?お!飲んだ飲んだ!私にも智子のつば、ちょうだい!うんうん・・・おっと、私もS入ったからビンビンになっちゃったな。やばいな。私のは量を減らしておいたのに。


 恭子は「智子ちゃん、脱いじゃおうか?」と言って智子の高校の制服を脱がす。さすが、真面目な子だよね。スカートだって膝たけじゃん?と手早く下から脱がした。パンツは取っておく。「智子ちゃん、わたしも脱ぐね」と言って、恭子は全部脱いでしまう。「恭子ちゃん、恥ずかしい・・・」と言いながら、でも、智子は恭子を止めない。


「智子ちゃん、ほら、わたしを見て。どう?」と恭子は智子に自分の裸を見せる。先にわたしが脱がないとね。警戒させないように。わたしの体は、幼児体型だから、胸はあるけど、あそこは薄い毛がおおっているだけ。わたしってなんでこんな体をしてるんだ?悔しいな。悔しい。


「智子ちゃん、わたしにもあなたを見せてね」と言いながら、パンツ以外脱がしてしまう。「智子ちゃん、キレイだね」と言いながら、上半身から愛撫を始める。初めての智子にとってはたまらない。Sで敏感になってもいる。すぐ、逝ってしまう。

 

 よしよし、智子の体に叩き込んどかないとね。と恭子は思いながら、パンツも脱がせる。あ!こいつ、パイパンじゃん!と恭子はツルツルの智子の股間を触る。思わず智子は股を閉じるが、恭子はそっと開かせる。太ももからねちっこく。舐めあげて、でも、あそこは外して、円を描くように徐々にあそこに向かうんだ。ビクビクと智子は体を震わせる。いいぞいいぞ、この子、気に入っちゃったな。可愛いな。ゾクゾクするぜ。

 

 恭子は、智子のあそこを舐めあげる。智子は脚を閉じて恭子の頭を挟み付ける。その脚を開かせて、恭子はあそこを開き、智子の突起を吸う。痙攣する智子。ちょっと指一本くらいは入るかな?と中指を智子のあそこの中にクニクニと入れてみる。スルスル入るじゃん!もうちょっと中へ?まだ大丈夫ですね。どうだろ?ここで指を曲げて・・・お!ザワザワしてるじゃん?これ以上は処女膜を破るからダメだよね?この子、いいね?こういうのオジサマ、好きだろうね?

 

 智子はもう自分を制御できない。腰を突き上げている。もともと敏感だったんだね、智子。恭子は智子から溢れてくるものをすすって、飲み干す。さあ、わたしの番だよ、智子。


 恭子は体を180度回して、自分のあそこを智子の口に近づける。「智子、わたしのも。わたしのもやって。わたしがやったように・・・」と智子に言う。クスリで朦朧となって、気持ちよさが極限にまで高まった智子は、無我夢中で恭子のあそこに吸い付いた。智子のやったように、恭子のあそこを開かせて、舐め上げ、すすった。

 

 おっと。わたしが逝かされちゃうよ。こいつ、ガリ勉だから学習能力あるじゃん!あ!わたしのお尻までひらいちゃって。おいおい、困っちゃうよね。ま、順子ネエが言っていたように、勉強もさせて、家族と周囲に気付かせないように、クスリとセックスで堕とす・・・あ!こいつ、うまい。ほんとに初めてか?クソっ。おもちゃ使えれば一発なのに。こいつ舌、長ぇじゃねえか。とどいちゃうよ、奥まで。負けるものか・・・


 その後、「智子ちゃん、もう栄養剤ないや。でも、一本四千円なら注文する」と持ちかける。「恭子ちゃん、わたし、そんなお金ないよ」と言うと、「安心して。私の知り合いの安心できるオジサマがいて、私みたいに智子を気持ちよくしてくれてお金をくれるから。紹介するわ」と言う。おかしいとはわかっているが、栄養剤も欲しい。恭子としたように気持ちがいいならいいのかな?「恭子ちゃん、私やる。オジサマを紹介して」ということになる。

 

 オジサマたちも薬で感覚がするどくなっている高校生には大金を払う。おまけに順子のグループが合法JKというチェックもしている。もしもバレても東京都の淫行条例には抵触しない。経験があまりないので性病もないので安心だ。

 

 フリーでパパ活や円光をしている女の子は、出会いアプリ、マッチングアプリで相手を見つける。「ピッピ募集!❤穂別苺」というわけだ。「ピッピ」は「パパ」の隠語だ。そういう取引の場合、相場は本番で、穂別(ホテル代別)で苺程度。苺は1万5千円のことだ。


 しかし、順子のグループの保証付きの女の子なら、オジサマとオジサマの友人は諭吉を四枚も五枚も支払う。処女だと諭吉は八枚から十枚にもなる。順子のオジサマは一部上場企業の役員であり、友人は会社経営者や政治家、警察の上層部なんて客もいる。


 しかし、友人の身元はオジサマしか知らない。オジサマの身元すら順子たちは知らない。順子や恭子にとって金払いのいい安全な客というだけ。オジサマたちも女の子の身元は聞かないのが約束だ。お互い知らないのだから、身バレもない。持ちつ持たれつ。


 ホテルがまずいならば、オジサマたちは順子のマンションを使う。支払いは直接女の子に渡す。女の子は栄養ドリンクの代金として、恭子に現金を支払う。恭子は売りの代金を直接扱わない、ということだ。金は全部巻き上げない。フリーで苺で売るよりも多少多く残す。その方が女の子が金が足りない、という文句も言ってこないという狡猾さだ。

 

 女の子たちが、恭子にオジサマの紹介を求める頻度は高くなってくる。しかし、家族や学校にバレるほどには栄養剤は与えない。そして、恭子は自分の通っている高校を皮切りにして、薬漬けの女の子たちの紹介などで、北千住周辺の別の高校や大学にまで手を広げる。女の子は使い捨てだ。問題が起こりそうな女の子とは事前に手を切る。手を切ったところで、そういう女の子は、別の売人を見つけて自滅するだけだ。フリーのパパ活、円光では苺がせいぜいだ。

 

 それに、恭子や順子は隠しカメラを使って、順子のマンションでの恭子とのレズ行為とかオジサマたちとの性行為を動画に撮影してある。女の子がもしもタレコミなどしようとするなら、その動画をばらまく、と脅迫する。


 あまりオジサマに人気のない女の子や使い捨て候補の女の子は、康夫や浩二などのヤンキーグループに与える。Sの仕入先は康夫だから、Sの代金の一部としてそういう女の子を使う。もちろん、ヤンキーたちとやった子の動画も脅迫用に撮影しておく。女の子はラリっているので、撮影されたことすら気づかない。

 

 これが、順子たちの実体。高校生や大学生も含め、大人も含め、すべてがおぞまし過ぎる。だが、誰もこの蟻地獄から抜け出せないし、抜け出す努力もしない。

 

 順子、後藤順子は、かつては田中美久の最愛の妹分だった。しかし、後藤順子と恭子、敏子、恵美子が何かやっているということは、詳細は知らないが、うすうす田中美久も、節子も紗栄子も佳子も気づいていた。田中美久の時代だったら、盗みも薬も売りも厳禁だった。徐々に、自然にこの二つのグループの距離は開いたのだ。


 二つの世界が天国と地獄ほど変わってしまったのだ。

 当たり前のこと。

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