第49話 京へ

 貞観殿の一室で、姫君がこう切り出した。

「京に高名な陰陽師がいるわ。その人なら雲雀をもとに戻すことが出来るかもしれない。その御方に先日手紙を送ったから、会ってくれるはずよ」


姫君は俺をもとに戻すために、手を尽くしてくれていたのか。

「ありがとうございます!すぐにでも行って参ります!」

「待って、雲雀」

俺が立ち上がると、姫君は焦ったような顔をした。


「わたしも行く。」

「しかし」

「行くったら行くの」

「斎我殿と椿様がお許しになられるでしょうか。」

「だから、内緒で行くのよ」

「だけど、それは」

「雲雀は私がいると嫌なのっ?」

「そんなことありません!」

「なら、一緒に行きましょう?」

「お二人に怒られますよ。」

「でもこのまま何もしなければ、たぶん二人とも私の結婚を認めてくれないわ。雲雀が元に戻っても、適当な名誉か財産を渡して終わりよ。」


姫君は真剣だ。だが、やはり、彼女は一国の姫君だ。京へ行く道すがら、危険な目に遭うかも知れない。

「旅の途中、俺が攫って行ってしまうかも知れませんよ。」


旅路の危険を、少し冗談めかしながらも伝えると、

「それもいいかもね」姫君は俺をからかうように悪戯っぽく笑った。




早朝、人気の無い門の方から姫君と出て行くと、馬車が二台ほど止めてある。一つは旅の荷物用、もう一つは中ノ國の特産物や宝物など。

 これをどうするのか聞いてみると、姫君は微笑むだけで教えてくれそうにない。

「じゃあ、京へ行きましょうか。」

侍臣たちが後ろの馬車に乗り込むのを見届けると、そう馭者に声を掛けた。

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