第20話 一番の、冴えたやり方
「例えばの話ですが、マティアスがホリー様かラーン様、ニーテ様を伴侶に選んだとします。……そのことを、ダルタニアン王家はどう思うでしょうか?」
「……面白くは感じないだろうね」
眉間に皺を刻みつつ、マティアスは想像する。
(アーノルド公爵家もアンシャリア侯爵家も、ミラード辺境伯家も、本来はダルタニアン王家の臣下だ。……臣下の家が主君の家を差し置いて〝
流石に、表向き何かがあることは無いだろうが……
……アーノルド公爵家もアンシャリア侯爵家も、ミラード辺境伯家だってその辺りが解らぬはずは無いだろうが――それを踏まえてでも、〝
とはいえ……マティアス、そしてクアドラの立場からすれば、そんなことで
「要するに……そういった不穏な事態を最小限に抑えて、万事を納まるところへ納められるのが、レナ王女殿下やソルアートさんを〝
「理解してもらえて何よりです」
「……納得はしてないよ」
我が意を得たりという態度のクアドラを、マティアスは軽く睨む。
現在の
〝
そして、現状
「……クアドラがレナ王女殿下とソルアートさんを推す理由は解ったけど……じゃあさ、何で兎夜さんだけそこまで低評価なの? ここまでの話だと、レナ王女殿下とソルアートさん以外の候補者は皆どんぐりの背比べじゃない?」
「……兎夜嬢だけが完全な平民で、支援する人も組織も実質上皆無というのが一番の問題なのです」
クアドラは、マティアスの考えに頭を振って訂正を述べた。
「今、後援者が皆無ということは、逆を言えば兎夜嬢が〝
「……あぁー……」
マティアスも、やっとクアドラの懸念が理解出来た。
(王族や貴族、或いは聖女である他の〝
――が、兎夜が〝
「……もちろん、たとえそのような事態に陥っても、混乱を早期に収める為に各方面が全力を尽くすでしょう。わたくしだって奔走します。ですが……マティアスの、〝
「…………」
クアドラが兎夜を〝
「……休憩も存分に出来たことですし、茶器を片付け次第、ザ・ワンへと戻ります。
「……そうだね。よろしく、クアドラ」
クアドラが船室内の照明を落とし……マティアスはソファーに横になった。一応、この船には寝台も完備されているが……。
(ザ・ワンの港に着いたら、起きて屋敷まで帰ることになるし……今はここでいいや)
クアドラも同じ認識なのか、何も言わない。……やがて、震動から船がザ・ワンへの移動を開始したことをマティアスは悟る。
眠っているのか起きているのか、曖昧な精神でマティアスは囁いた。
(……クアドラは、僕にバレてないって思ってるのかもしれないけど……知ってるよ)
「
……それを、クアドラは丁重に辞退してしまったが……。
(……僕にだって解る……)
「……クアドラが
クアドラの能力も人格も、レナやソルアートに劣っているとはマティアスには思えないのだ。そこに両名と同等の後援者が加われば、まさしくクアドラこそが〝
「……そんなこと、クアドラだって解ってるはずなのに……」
マティアスの声は、ひたすらに切ない。……その声は、今は
(そういう理屈立てた根拠を理解してるはずなのに、クアドラが〝
「――感情的に僕を男として受け入れられないってこと……!?」
その事実に辿り着いた瞬間、マティアスの意識は一気に覚醒する。
(……あ、駄目だ。本気で泣きそう……)
夜の
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