第25話 薫子と僕は勝負する!♪⑤

 競技が始まった。


 僕(勇気)たちが出たのは、まずは、玉入れ!

 三高の場合、10人が選手となり、その内、3人が玉入れの玉を敵に向かって投げて妨害しても良いというモノ。その投げる人数は3人までで、女子限定という制約がある。もちろん、カゴに入れた数で競う。


 最初の対戦相手は、青組だった。

 薫子の居る組だ。

 背の高く賢そうなイケメンが指示を出している。

 開始と同時に、女子3人が僕に玉を投げてきた。


 僕はそれを避けながら玉を放るが、著しく、精彩を欠いた。

 僕はピッチャーをやってるので、自信があったのだが、あまり戦力にならずに終わった。

 結果は、1点差の負け。

 それでも、僅差だった。


 しかし、女子に玉を投げられ続けられるのって、なんか、トラウマになりそうで、変な想い出になるに違いなかった。


 そんなことを思っていると、あの賢そうなイケメンが話しかけてきた。

「落合君、いい勝負だったね」

「いやーー、参りましたよ、

 このイケメンは、野球部の先輩であり、薫子の兄である。

「ルールの範囲内だったとはいえ、なんか、ごめんね」

 とっても悪く思ってない、満面の笑顔で、僕に謝ってきた。

「いえ、僕たちが弱かっただけですよ」


「でも、1点差だからね。こっちは運がよかっただけだよ」

「運も実力のうちですから」

「ところで、薫子とは仲が良いんだっけ?」

「えっ?ええ、いつも仲良くさせてもらってます(いつも下僕の様に仲良くさせてもらってるわ!)」

「そ、そうなのか!落合君、次の新チームのエース争いは、絶対負けないから、覚悟しといて」

(あれっ?なんか怒ってる?by勇気)

「いえいえ、僕も譲る気はありませんから!」

「はははは!まぁ、とにかく、薫子には近づくなよ!」

「えっ、何を言ってるんですか?先輩?」

 有栖川兄「ハハハハハ」

 僕「ハハハハハハ」

 有栖川兄「ハハハハハハハ」

(ここは、折れておこう・・。by勇気)

 僕「それでは、先輩」

 有栖川兄「ハハハ、勝った、じゃーな」


 ~~有栖川兄~~

 なんだとーー!!

 薫子も趣味が悪い!!

 あの落合と仲良くだとーー!!

 ふざけるなよ!

 コイツ(勇気)は、綾川と一緒になって、しめてやらんとな!

 明日から、練習メニューを増やすぞ!

 それにしても薫子、お前にはこのイケメンお兄ちゃんがいるというのに・・・。

 薫子には、もっと、コイツ(勇気)の噂だけでなく、ないことないことを言ってきかせんとダメだな。

 そして、お兄ちゃんの凄さも・・・・そしたら・・・うへへへ、うん、そうしよう!


 ===З===З===З


 この時は、まだ、僕は何も知らなかった。

 この時の会話が、有栖川兄の心に深く刻まれ、今後の僕の未来に影を落とすことになるとは・・・。



 さて、次に僕たちが出場するのは、学年別の徒競走。

 男子が100メートル、女子が50メートル、全員参加だ。


 1位2位3位の数の多さが順位に反映される。

 クラスごとに1組(僕ら)から6組まで横に並んで走る。

 まずは、男子100メートル。

 僕は、一位を取った。


 そして、次には女子の50メートル。

 そして、事件は起こった。


 薫子が一位でゴールを駆け抜けようとする直前に、倒れたのだった。

 僕は、その時、ゴール付近に体育座りをしており、彼女は僕の目の前で倒れたのだった。

 彼女はなかなか起き上がれず、次々と後続のランナーに抜かされていった。

 最後のランナーが抜き去ってから、僕は思わず、彼女の元へ駆け寄り、立ち上がれるかどうかを訊いたが、首を横に振り泣きそうな顔になった。

 僕は、意を決し、有無を言わさず、お姫様抱っこをし、保健室に駆け込んだ。

 彼女の温もりと、とても柔らかい身体の感触にドキドキしたが、もうやってしまった(お姫様抱っこを)後なので、彼女からなにか叱られるのを覚悟した。


 しかし、彼女は、俯いて、耳を真っ赤にさせて、小さな声で「ありがとう」と言ってくれた。

 やっぱり、痛いのと悔しいのとで、気が動転してるのだろうと思った。


 僕が所定の位置に戻ってくると、女子たちの視線がチラチラと僕に向けられた。

 チョット目立ったかな・・と、そんな気持ちだった。目立つのが好きなので。


 楓は、エライ!と褒めてくれた。

 綾川さんは、「すごかったです!お姫さん抱っこなんて、私もされてみたいです!」

 って言ったので、「いつでもしてあげるけど?」って言うと、顔を真っ赤にしてた。

 ちょっと、こういうイケメンの言う冗談って、面白いかもと、イケメンでない僕は思った。


 この事件(お姫様抱っこ)で、僕と薫子の恋人説が、学校内で噂となるのだった。


 ※筆者:ちょっと、予定と違い筆が滑りすぎたところがあるが、この噂(勇気と薫子が恋人)で、有栖川兄の怒りが頂点に達してしまう。運命の悪戯としか言いようがない、哀れなり、勇気よ。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る