忍び寄る危機①王都周辺の異常

 日本から持ってきた教材をいろいろと利用して教えた事でみんなも魔力の増量と魔力操作にも慣れてきたようで、今では個別に魔法について教えるようになっていた。ナタリー先生も一緒だが傍から見ればどうみても教師が俺に見えてしまう事だろう。それでもクラスメイトはなんら違和感なく授業を聞いているところを見ると、貴族出身のクラスメイトも平民から教わるプライドなんかより、新しい魔法を覚えるワクワク感の方が断然上のようだ。


「トラーオ先生! 火と水のバランスのとり方がわかりません!」


「誰が先生だよ! 火と水は特に相反する物なのでバランスはそう簡単に取れないよ。とにかく水を炎で温めるイメージを作り、お風呂のお湯が上手く張れるようになるとそこからはすぐに上達するよ。だから風呂当番率先してやったら?」


 お調子者のティモが先生扱いしてからかってくるが、ティモの魔法も火と水それぞれ単独では結構な威力を出せるようになった。ただ複合魔法はやはり難しいようで風呂もまだぬるま湯程度しか出せないようで

 最後に火魔法で追い焚きをしているそうだ。


 付与魔法の使えるハイーネやローンには小さな魔石に魔法陣を書く練習をさせているが、器用な二人はかなり複雑な物まで書けるようになった。トビアスは魔法陣は苦手のようだが剣や防具に直接付与を掛けることができるようになり順調に力をつけているようだ。


 空間魔法を持つジュリアに空間魔法を教えるのが一番苦労をした。3次元までの空間を教える教材はあっても4次元とか時空とかを教える教材は販売してなかったのでアニメや映画のシーンを見てもらってなんとか自分のものにできたようだった。この世界ではアイテムボックスなんて大きくてもボストンバッグ3つ分くらいの大きさしかなく時間も普通に進むものが殆どで、ごく稀にダンジョンなんかでアイテムバッグが見つかるくらいしかないようだ。ジュリアのアイテムボックスでも時間を止めることはやはり出来なかったようだが大きさは大きな倉庫くらいの大きさを作ることが出来たようだ。時間が止まるという概念をどうやって理解させるかが課題だな。


 相変わらず先生はナタリー先生しかこないし、ナタリー先生以外の授業はすべて自習だったのでそれらの授業はナタリー先生と手分けをしてみんなに教科書を読ませ難しいところを解説したり、日本からの教材を使ったりしてしっかり体験させてさっさと終わらせてしまった。もちろんステファン先生との約束でもある全員が火、水、風の魔法を2ランクはクリアして、人によっては6ランクまで使えるようになっていた。

 通常は生活魔法として属性が無くても訓練すれば他属性も使えるようなるが、それは小さなろうそくのような炎を灯したりコップ1杯の水を出す程度である。2ランクになると鍋を温める程度の炎やバケツに注げるほどの水を出せるが2ランクで3ランク以上は通常属性を持っていないと出すことができない攻撃魔法になる。ランクは通常は10ランクまであるが宮廷魔道士の優秀な者で8ランク通常は5ランクあれば宮廷魔道士になれる実力となる。


 みんなの習熟度も上がってきたので全体で行う授業の時間は減らし個人的に訓練する時間が取れるようになった。そのため、訓練を兼ねてFクラスの食費を稼ぐためにクラスを分担して午後はアルバイトをすることにした。攻撃魔法の得意な人は森へ狩りに行き、苦手な人は魔道具を作って販売したりして食費を稼ぎつつ魔法の修練を行っていった。狩った動物や魔物は冒険者ギルドではなくヴァンサン商会に直接買い取ってもらうようにしている。5月の対抗戦までは情報を秘匿しておく必要があるので他のクラスも顔を出す冒険者ギルドでの買取は禁止している。もちろん冒険者ランクが上がらないデメリットもあるが、短時間で十分強くなった自覚がみんなあるので、冒険者ランクは対抗戦終わってから上げたほうが邪魔されない分良いと納得してくれた。






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