第40話 英雄と神話。氷魔法師の国へ再来


「【神話】はどこにいるんでしょうかね」


「たとえ姿を見せたとしても、どんな能力を使うかが全く読めません。安易に詮索するのも良くないとは思いますが」


「僕が思いのままにジェーンを殺してしまったからには、もう手がかりが【神話】にしかありません。もう父を追いかける手立てはないんです」


「これ以上新しい情報がないか、これまで巡った場所をまた訪れるというのはどう? 新しい発見があるんじゃない」


「いいですね。フライスさん」


「いったん、立ち止まってみよう。探してもなかったら、探すのをやめる。やけになって血眼になって探すと、逆に遠ざかる気がするんだよね」


「たしかにそうかもしれません」


「じゃあ、氷魔法師の国、いってみますか」


「灯台下暗し、ともいいますからね」


「離島とかに引きこもってるかもよ? まさかだとは思うけど」


「そんなわけないか」


リーナは馬車の手配はすぐに始める。


「氷魔法師の国は、どこでしたか。教えていただけると幸いです」


「ブランシュです」


「了解です」


そこからどうにか食材や荷物の手配をして、馬車に乗り込みブランシュへと向かった。


***


「やあ、久しぶりだね」


ブランシュの国王、セルカと顔を合わせる。【氷炎ひえん】の消滅により、氷が溶け続けることがなくなり、逆により洞窟は氷出していた。


ざらざらの地面が剥き出しになっていたのが、今では完全に凍結している。


現在、ヴィリス・フライス・ミランダ・リーナの四人。リーナはうまく地面を燃やしつつ、炎魔法で足場を作っている。


ミランダ以外は、土魔法師ラインランド戦のときの足場作り術を生かし、魔法で立っていられた。


かくいうミランダは、自身の体幹を生かし、魔法なしで立っていられた。


「ご無沙汰しています」


「仲間の方も相当増えたものですね」


「いってなかったんですが…… 実は僕って【七選魔法師】のひとりなんですよね」


「え?」


「僕らって、【七選魔法師】なんです」


セルカの表情が固まる。それに遅れて、取り巻きの氷魔法師たちの空気が止まる。


「「「え????」」」


過剰なほどの反応に、ヴィリスは少し引いてしまう。


「じゃあ、あなたが英雄の息子ということですか??」


「そういうことになります」


セルカは、全てを察した。ヴィリスと会ったときの対応を振り返ると、その失礼さに恥ずかしくなっていまい、顔に手を当てて後ろを向いてしまった。


「で、それがなんだっていうんですか。はっきりいってどうでもいいじゃないですか」


「グラスさん、相変わらずですね」


「別にヴィリスさんがヴィリスさんであることは変わりないでしょう?」


「僕はそうですけど」


「あの…… そういうことって非常に相手に不快感を抱かされるのでやめた方がいいですよ」


喧嘩腰のグラスに対抗してきたのは、曲がったことが許せないリーナ。


「別にいいでしょ、というかあなた誰」


「【七選魔法師】、炎魔法師リーナです」


「ふーん、あなたも【七選魔法師】なんだ。で?」


「そういう態度、とってると孤立しますよ」


「は?」


グラスとリーナが対立しあって、バチバチが止まらない。

怒りから瞳孔がカッと開かれ、嫌悪の視線を向け続ける。


「ちょっと、ふたりとも……」


「うちのグラスがすみません」


「いいんです。こっちのリーナが便乗してしまっただけなので」


どうにか冷静になったセルカが、いった。


「いえいえ」


「そういえば、今日はどういった案件でぼくらの国に来たんだい?」


「ルートニと、父の話です」

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